番外編@品評会1
「うわぁぁ〜。」
品評会の会場を訪れた私は思わず感嘆の声を上げた。
品評会は、書類審査の後、予選と本選があり、予選も本選も王都で行われる。
最初の5日間で展示された物を一般の人に公開して投票を行うのが予選、各部門から上位10作品ずつ選ばれたものをその道の匠達が最終審査して順位付けするのが本選だ。
予選の作品は各部門100を超え、会場は部門ごとに異なる。
ナムルさんが出品したのはその中のガラス工芸部門になる。
もちろん書類審査は(想像だけど)余裕で通過して、ナムルさんは準備のために一昨日王都入りしている。
業者さんが並べた展示品をそれぞれの製作者がさらに細かく調整して会場を作るので時間が結構かかるそうなのだ。
私は予選初日の今日に間に合うようにイーサンを出発したが、社長や工場長はまた別の日に来る予定だと言っていた。
もちろん本選がメインイベントだし、ナムルさんなら予選も余裕で通過するに違いないけれど、観覧者の投票で決まると言われると投票しに来ないわけにいかない。
18時間もなんのその。昨日の列車は緊張してあまり眠れなかった。
10時の開場時間に合わせて行くと、すでに会場には行列ができており時間制限をしながら人々を入場させていた。
1時間ほど待って入場して最初に私の口から出たのが先ほどの「うわぁぁ〜」だ。
だって、もうこれはガラスじゃなくて宝石だよ。
そのくらい綺麗でそのくらい価値があると思う。
赤や黄色や青や黒、金や銀のものまであって、花瓶やグラス、ペーパーウェイトのような実用性のあるものから大きな虎の形をした置物やガラスを使ったアクセサリーまで種類も色々、大きさも様々だ。
ナムルさんの花瓶は会場出口の手前にある台に照明を浴びて鎮座していた。花瓶は当初の予定よりも小ぶりなものになってしまったけれど、その分切子模様が丁寧に細かく彫られている。
照明もいい角度で花瓶を照らしているので、私の大好きなピンクの中にオレンジが感じられるキラキラとしたパパラチアサファイアの色を余すところなく堪能する事ができる。
カットによって色がグラデーションを描き、鋭い彫り込みで白く模様を浮き上がらせている。
単色なのに何色もの染料を使っているように見える。
丁寧に彫り込まれたアオ(がモデルの鳥)は長い首を天に向けて羽を広げており、翼を中心に羽毛が花瓶を舞うように取り囲んでいる。
そもそもの染色が美しいので、素晴らしく良いバランスで空間も残してあり、それが上品さを演出していた。
やっぱりナムルさん天才なんじゃないの…?
もう絶対優勝間違いなしだよ。
私はそう思いながら投票用紙にナムルさんの花瓶の番号を書いて係の人に手渡した。
ちなみに投票はズルができないように投票用紙に仕掛けがあるそうだ。魔力を通さないと番号を書き込めない上に2度目以降は魔力が通せないんだって。
入場の時に投票用紙を渡されると同時に魔力を流す場所があったから、それを利用してるっぽい。
あと、予選の間は出展者は会場内には入る事ができないそうで、ナムルさんは昨日イーサンに帰ったそうだ。一緒にネモフィラ亭でご飯を食べたかったのに残念だ。
私も明日にはイーサンに帰る予定だし、今日は王都の街歩きでも楽しもう。夜はきっとミルヒさんとリンドさんに会えるはずだし。
そう思いながら会場を出たところで「キヨコさん」と声をかけられた。
振り返るとナムルさんがにっこり笑って立っている。
「な、ナムルさん!?昨日帰るって…!」
「キヨコさんと王都を見て回りたいなと思って帰るの明日にしたんだ。見つけられてよかった!もう誰かと約束しちゃってる?」
「いえいえ。私もナムルさん帰っちゃったの残念に思ってたので会えて嬉しいです。」
あの花瓶の作者だと思うと、私はナムルさんがちょっとだけいつもよりかっこよく見えた。




