番外編@アイマイミイ
今日は森の奥の湖でマイとアイと案内人会議だ。
会議といってもただのおしゃべりなんだけど。
「最近キヨコの様子はどんな感じなの?」
アイが長くて細い尻尾をクネクネ動かしながら聞いてきた。
「最近は品評会に出す花瓶を作るとか言って忙しそうにしてるわよ。なんか恋人もできそうだしそろそろ私はお役御免かも。」
私が耳をパタンと倒して言うと、マイがフワフワの尻尾で私の鼻先をくすぐった。
「まあ、幸せになってもらう手助けをするのが私たちの役目だしね。この世界に馴染んでくれるのは嬉しいことと思わなきゃ。」
「そうだよねー。ちょっと寂しいけど。そう言えばホクトがマイに会いたがってたわよ。」
「え、ほんと?じゃあ今度遊びに行こっかな。
でもアイツなんだかんだで家族がいれば満足なのよ。この世界に来て一年もしないうちにユユラに夢中になって私の事なんてほったらかしだったもん。」
マイが後ろ足でケシケシ土を掘る。
「拗ねない拗ねない。子供達だってマイのこと大好きじゃない。」
「まあ、そうだけどね。」
マイは今度は得意げに後ろ足で耳の下をカシカシ掻いた。耳の後ろの毛に土がついちゃっだけど気にしてないようだ。
「次の渡り人は私が担当だもんね!どんな人が来るかなー。」
アイは背中を丸めて尻尾を伸ばし伸びをしながら目を細める。
アイの前の担当した人はちょっと可哀想な事になっちゃったんだよね。
私達はあんまり感情が豊かではないけれど、あの時のアイはものすごく落ち込んでたのを覚えてる。
「もう少し長くそばにいてあげればよかった」ってずっと言ってた。
でも前の人の奥さんが残念なことに猫が苦手だったみたいで、アイはわざと行かないようにしてたんだってことも私達はわかってる。
次の人は前の人の分まで幸せになってくれるといいなと思う。
私もマイもアイも白い毛皮と金色の目はみんな同じだが、私は犬、マイは狐、アイは猫の姿をしている。
マリの家の上の空を飛ぶ時はみんなただの平べったくて細長い毛玉スタイルだけど、人間界に行く時はそれぞれ姿を変えている。
便宜上ってやつかしら。
私達の役割は渡り人の案内人(人じゃないけど)として一緒に暮らしてこの世界のあれこれを教えることだ。
渡り人が1人でも元気に楽しく生きていけるようになったらまたマリの家に戻って次の渡り人が来るのを待つ。
一生一緒に居なくちゃならない人もたまにいるけど、大概は数年で自分の居場所を見つけて、私達とお別れすることになる。
お別れって言っても顔を見に行ったりする事もできるし、渡り人の子供の子守でまた数年滞在するような事だってあるのだ。
一生離れ離れになるわけじゃないからそんなに寂しくないはずなんだけどね、ほんとは。
「ところでさぁ、アオこれからどうするの?」
「もう少し大きくなったらうちらの仲間入りかな。」
「でも世の中を知らなすぎるからまだまだ案内人は出来ないよね?」
私達はそれぞれ向かい合って座りながら額を突き合わせる。
アオの教育も私たちの仕事だってこないだマリに言われたけど、アオは赤ん坊みたいなものだから結構手もかかるしめんどくさい。
いや、可愛いんだけどね。
精霊がここまで成長する事はまずないのだけれど、何がどうなってこうなったんだ。
「アオはさあ、キヨコに丸投げでいいんじゃない?」
マイが金色の目を瞬かせて言った。
「あそこまで育てたのもキヨコだしね。」
私も尻尾を振ってすかさず同意する。
「うちらは見守ってればいっか。」
アイは瞳孔を縦に細くして欠伸をした。
「キヨコがおばあちゃんになる頃にはアオの中身ももう少し大人になるでしょ。」
私達はうんうんと頷きながらゴロンと横になって日向ぼっこを満喫した。
今日も平和に1日は過ぎていく。




