番外編@ミルヒとリンド
キヨコさんにネモフィラ亭を教えてもらってから、僕は残業がない時は毎日ネモファラ亭に通っている。
リンドさん目当ての部分もあるが、実際料理も美味しいし、ここに通うようになってから体調も良い気がする。
リンドさんもいつもいるわけではないが、顔を合わせた時は人懐っこい笑顔で挨拶してくれるし、僕の吃りは聞きづらいはずなのににこにこと話を聞いてくれる。
僕はもうすぐ40だし、リンドさんは20代でリンドさんからしたらこんなおじさんは眼中にないだろう。
僕もリンドさんと話ができるだけで満足で、癒しというか、元気の素というか、別にどうこうなろうという気は全くなかった。
ただ、一度でいいから2人で出かけた思い出が欲しいという気持ちが抑えられず、ダメ元でリンドさんを誘うことにした。
毎日通っているうちにリンドさんの休みの日はだいたい予想がつくようになっていたので、僕は勇気を出してリンドさんに声をかけた。
「り、りりり、リンドさん!あ、あ、明日はお、お、おひまですか!?」
「ミルヒさん、こんばんは!今日の魚定食は新メニューの鱧と舞茸の土瓶蒸しだったんですよ!召し上がりました?」
「は、は、はい!と、とても美味しかった、です!」
「鱧は骨が気にならないように包丁を入れるのが難しいんですけど、お父さんすごい練習して。」
「そ、そうなんですね。は、骨はま、全く気にな、ならなかったです。」
「よかった!それで、明日は何があるんですか?」
「…!!」
リンドさんに軽く躱されたと思った誘いが舞い戻ってきて僕は非常に焦った。
最近は吃りも改善してきているのだが、緊張したり焦ったりするとまたひどくなってしまう。
「き、き、きききき」
「うふふ。木?木を見に行くの?」
「き、キヨコさんにな、な、なにか、お、お送ろうと、お、思うので、い、いいいいいい一緒にえ、え選びに、い、行ってくれませんか!!!」
「もちろん!喜んで!ミルヒさんとデートですね!」
「!!!!!」
リンドさんの無邪気な言葉に僕は死にかけた。
で、でーと…
世の中にこんな破壊力の強い言葉があるだろうか、いや、ない。
それにしてもリンドさんのこの天真爛漫さは危険だ。
僕じゃなかったら勘違いしてしまうかもしれない。
で、てーと
僕はニヤつく口を一生懸命引き締めた。




