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「き、キヨコさん、お、お久しぶりです!」
研究室に着くとミルヒさんが満面の笑みで迎えてくれた。研究室の皆さんにとイーサンのお土産のレモンピールのチョコレート掛けを渡し、早速研究の成果を見せてもらうことになった。
みんな忙しそうにデータを書き込んだり、ピペットで計測したり、血液の分離をしたりそれぞれの仕事に集中している。ほんのちょっと前まで、少しの間ではあるがここで一緒に研究をさせてもらっていたのだと思うと感慨深い。研究データをまとめた物を見せてもらいながら説明を受けると、精密な実験を何度も繰り返した苦労の後が垣間見えた。
新しい人工血管は培養にほんの少しの魔力を混ぜることによって耐久性や順応性が増したとのことだ。
今までは使っていなかった魔力の強い人から提供された血液を培地に使用することでこれからも継続的に生産可能な目処が立っているとのことだった。
ただ、人工魔管については、より強い魔力の混ざった培地が必要とのことで、これはまだ私が提供した物を使うしかない状況だ。
どうにかできないかと魔力を濃縮させた培地を作る方法の研究を始めたところだと言っていた。
魔力の数値を正確に測定できる機械があればいいのだが、この世界には今の段階では存在しないため、そちらの開発を別の機器メーカーと共同で行う予定もあるのだとか。
新しい人工血管も魔管も魔力を持たない動物での実験ができないため、研究室内でのデータから予測して行くしかないのが若干不安材料ではあるが、こればかりは仕方がない。
不完全だとしてもお守りがわりになるからとイーサンに戻る時に各種また帰らせてもらう約束を取り付けた。
研究室を後にしてネモフィラ亭に戻るというとミルヒさんも付いてきた。
リンドさんに会いたい気持ちがダダ漏れですよ。
ネモフィラ亭の受付カウンターには相変わらずリンドさんが座っていて看板娘の役割をしっかり果たしている。
ちなみにリンドさんの髪の毛は建国祭が終わったからと青から黒に変わっていた。
青髪も似合っていて可愛らしかったけど、黒髪のリンドさんは清楚な雰囲気が強くなった気がする。
ミイちゃんとアオは今日は1日受付でリンドさんに構ってもらっていたそうだ。
王都にいた時に仲良くしていた子供達が時々顔を出してくれたと言っていた。
「ミイちゃん、アオ、リンドさん、ただいま〜。」
「「「おかえりなさーい!」」」
「あれ、ミルヒさんも一緒なの?」
「せっかくだからみんなでご飯でもと思って。」
「き、今日も、ばん、ごはん、ご、ご馳走になります。」
「いつもありがとうございます!今日はミルヒさんの好きなビーフシチューがありますよ!」
「それ、は、た、楽しみです、」
ミルヒさんはゆっくり喋ることで確かに言葉の繰り返しが減っている気がする。すごいなぁ。愛の力なのかしら。まだ片思いっぽいけど。
リンドさんも誘って、また3人と2匹でテーブルを囲む。
「キヨコさんもミイちゃんもアオもこんなにすぐに会えると思わなかったから嬉しい!」
「一回研究の経過見に来るって言わなかったっけ?」
「聞いてないわよ〜。」
「ぼくは、知って、ましたよ。」
「そうなの?手紙の返事を行き違いで送っちゃったわよ。帰ったら着いてると思うけど、直接渡せたわねー。何を書こうか迷っちゃって遅くなってごめんなさい。」
「大丈夫。リンドさんのことはミルヒさんの手紙で教えてもらってたから。」
「え!なに?変なこと書いてないでしょうね、ミルヒさん!」
「あ、い、いえ。そ、そ、そんなことは!」
焦ると吃りが復活するらしい。
今回は弾丸ツアー、明日には帰らなくてはならないが、楽しそうなネモフィラ亭の雰囲気に疲れも癒される。
ちなみに今日の定食は肉が酢豚で魚が穴子のフリッターだった。もちろんどっちも食べたわよ。




