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2日後、工場の出勤日は遅番だったが、早めに出勤して社長やみんなにお土産を渡しつつお礼を言うことにした。
工場へのお土産はみんなで食べる用には、病院にも買って行った大量のパイの詰め合わせ。
社長には素敵な瓶に入ったお酒を買ってきた。
お酒っていうよりは瓶がメインなんだけど、この瓶がなんて言うか、江戸切子みたいなデザインで、うちの工場のグラスでこういうデザインのものを作れないかと思い買ってきたのだ。
最近王都で出回り始めたデザインなのだそうで、切子のようにガラスを削って模様をつけているのだが、色は付いていない透明の瓶になっている。
めっちゃ高かったけど、工場の発展と父と慕う社長のために奮発したよ。
「社長、長い間お休みありがとうございました。おかげさまで色々勉強できたし、楽しい経験をすることができました。これ、お土産です。」
「わざわざありがとう。お土産なんてよかったのに。キヨコさんが楽しめたならそれが1番なんだよ。また工場で働いてくれるのも嬉しいよ!」
社長は優しく笑ってお土産を受け取ってくれた。
私は社長にお土産のお酒の瓶についてあれやこれや説明した。是非ともイーサンの染料を使ったガラスでこの江戸切子のような模様のグラスを作って欲しいと熱く語った。
社長は瓶を光にかざして、色々な角度から眺めた後目を閉じてしばらく考え込んだ。
「これは斬新なデザインだし素晴らしいものだとは思うけど、ガラスをカットする技術も必要だし、ガラス自体がかなりの厚みがなくちゃいけないから、ものすごく値段を高く設定しないといけなくなるよ。下絵を入れてもここの染料は色が濃いから、綺麗に切り出すのも難しいだろうし…
実用品っていうよりは美術品のような扱いになるから、うちのような工場では難しいんじゃないかな。」
私ががっくりと肩を落とすと、社長は慰めるように背中を軽くパンパンと叩いた。
「まあまあ、でも時間が空いたら練習してみるのも良いかもしれないな。色無しの瓶ならいくらでも使い放題だ!キヨコさんもやってみたらどうだい?」
「私はまだ花瓶も作れないんですから…
芸術的才能もないし不器用だし。」
「俺だって最初はそうだったよ。みんなそうなんだよ。いつかは出来るようになるから心配すんな。」
「とりあえずは、製品チェックで商品見る目を養います。」
私が口を尖らせると「健闘を祈る。」と言って社長は仕事に戻って行った。
パパラチアサファイア色の江戸切子、いつか見られる日が来ると良いな。
器用そうなナムルさんにも相談してみよう。
私はエプロンと帽子を付けて作業に入った。
そういえば、明日からミイちゃんとアオは王都に行くのだそうだ。最終日のパレードにアイマイミイとアオで出るんだって。
私も見たかった…なんで初日でやんないかな。
てか最終日にそんなイベントあるなら最初に言ってくれれば予定組んだのに。
ミイちゃんにぶーぶー文句を言ったけど「大した事じゃないし来年また行けば良いじゃない」と軽くいなされた。
アイマイに会ったことないから会ってみたかったな。
明日から3日間1人だから、居残りしてガラス吹きの練習させてもらおう。




