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翌日研究室に行った私はミルヒさんに昨日まとめたノートを見せながら考えを説明した。
私が王都にいる時間は限られているし、培養や耐久試験などを行うにはどう考えても間に合わないため、こちらの会社主体ででやって貰う事になる。
そのため、私の知識や考えはしっかり申し送りしておきたいのだ。
ミルヒさんは質問を交えながらも丁寧に聞いてくれて、製品化を出来るように研究を続けていくと約束してくれた。
もう一つ、これはまだ考えがまとまっていないのだが、日本ではステント留置という治療法があった。
狭くなった血管や破れそうになってる部分に金属のメッシュでできた筒状のものを入れて保護するというものだ。
もしも魔管が圧に弱いのであれば有効かと思ったが、魔力の量を確保しなくては詰まるかもしれないという仮説が成り立ったので、これは入れてもすぐに使い物にならなくなるかもしれない。
ただ、何かしらの機能を加えることにより魔管以外にも色々な物に活用できるのではないかと思い、ミルヒさんに伝えた。
この世界の役に少しでも立てたら嬉しいなと思う。
そこから2週間はひたすら各種魔力量を変えた培地の作成と細胞の培養を繰り返し行った。
今日で研究室に来るのも最後だ。
言葉にすると簡単だが、そこに至るまでは本当に苦労した。
実は最初は前回実験の時のように血球を魔力で包みそれを培地に使用するつもりでいたのだが、培地に使用するのは血球を取り除いた血漿成分であることが発覚したのだ。
発覚したっていうか、私の知識不足なだけだけど。
私は死に物狂いで検討を重ね、なんと液体に魔力を混ぜ込む技術を身につけることが出来るようになった。
まさかできるとは思わなかったけど、どうにかしなくちゃという気迫と想像力があれば魔法は結構柔軟に発現してくれることがわかった。
これにより、魔力を流す実験もより正確な値を出すことが出来るようになった。
後から実験用基材が足りないなんてことにならないように私は毎日体力の限界まだ魔力を絞って色々な素材を作りまくった。
一応ステント(これは似た感じの医療機材があったのですぐに用意することができた)に魔力を纏わせたものもたくさん作った。
細胞の培養自体は順調に進んでおり、あと一月ほどで血管の形をとることができるのではないかとのことだった。
その頃になったらまた王都に来て実験に参加させてもらうつもりだ。
私に出来ることは粗方し終えたし、成果は予想以上だったと思う。
なんか、未来に希望が持てるような楽しみなようなふわふわした気持ちがする。
できればユユラさんの出産前に完成してくれれば文句なしなのだが。
残りの日数は2日。
お祭りを全力で楽しもう。




