49
夕食の時間も近付いてくると、子供達も1人2人と帰って行く。
私達もネモフィラ亭に戻ることにした。
宿に着き、神田さんの部屋をノックすると、ボサボサの頭で無精髭を生やした神田さんが鼻の下を掻きながら出てきた。
「お疲れ様でした。休めましたか?」
「充分寝たよ〜。汚い格好でお目汚し失礼。コンピューター、入力できた?」
「はい。まだ途中ですけど、ちゃんと解析も出来てます!本当に助かりました。ありがとうございます。」
「何より何より。それよりお腹空いたな。晩御飯食べた?」
「神田さんとご一緒したいと思って迎えにきたんですよ!この宿のご飯も美味しいですけど、外のレストランでも良いし、何かご希望ありますか?今日は私がご馳走します!」
「まじでー?ありがとう!外に出るなら支度しなくちゃいけないから、宿の食堂で大丈夫。」
「ここ、お酒の種類も豊富なんですよ。じゃあ早速行きましょう!」
今日の食堂のメニューは魚が鱈のムニエルで肉がタンドリーチキンとのことだ。
今日は神田さんもいるのでお任せでアラカルトもお願いした。
定食はいつも通りすぐに出てきて、神田さんと私はビールを頼み乾杯する。
「この度は本当にありがとうございました!」
「こちらこそ!お疲れ様!」
鱈のムニエルは皮がパリパリで実はふっくらと焼けていてバター醤油のシンプルな味付けだが、少しキツめの胡椒で味が引き締まっている。
タンドリーチキンはしっとり柔らかく、味がよく染みていて、スパイシーな味付けがビールにピッタリだ。
やっぱり1人で飲むより2人で飲んだ方がお酒はすすむので、あっという間にビールは4本空になり次は白ワインを注文する。
冷えた辛口のワインはムニエルにもタンドリーチキンにもこれまたよく合い、こちらもすごい勢いで減っていく。
「飲み過ぎじゃないのー?」とミイちゃんに嗜められたが、久しぶりに神田さんとお話もできて楽しいのだから許してほしい。
ミイちゃんは口の周りを黄色くしながらチキンを頬張っていて、アオは鱈を一生懸命突いている。
アオは気に入った物を食べる時に無意識なのか「ピュッ!ピュッ!」と小さく囀る癖があって、それもまた可愛い。
白ワインも一本空きそうというところで、アラカルト料理も運ばれてきた。
イチゴとモッツァレラチーズと生ハムにバジルを散らしたカプレーゼ、牡蠣と岩のりのアヒージョ、ガーリックシュリンプとどれもとても美味しそうだ。
「これはもう一本白ワインかな。」
「泡もアリじゃないですか?」
「泡!いいねー!すみませーん、スパークリングワイン、ボトルでお願いします!!」
ミイちゃんは私達を横目で見ながらデザートのプリンを食べていた。
私も神田さんもほろ酔いで、私は王都に来てからの出来事を報告し、神田さんはユユラさんやルナちゃん、ソラくんの近況を教えてくれる。
最初に話した後は、お互いに今までなんとなく触れないでいた日本での話も結構した。
最初の頃は新しい環境に慣れるのに必死で、日本の話をすると心が折れてしまいそうな気がして怖かったのだが、ようやくこの世界に基盤ができてきて、大切な存在も増えたことで話すことができるようになったのだと思う。
神田さんは「俺は全然平気だったけど、触れてほしくなさそうな顔してたから。」と言っていた。
色んな人に気を遣ってもらって、優しさに包まれているのだなあと改めて実感した。




