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ミイちゃんの話を聞いてから、私は俄然やる気が出て、精力的に王都行きの準備を進めた。
まず、翌日の仕事終わりに工場の社長を呼び止め、面談室を借りて話をした。
下手したら2ヶ月以上も仕事を休むことになるので工場を辞めなくてはならないかもと考えていたが、社長はあっさり休暇の許可を出してくれた。
「キヨコさんは渡り人だからね。その辺の事は折込み済みだよ。むしろこの半年働いてばっかりで心配してたくらいだから。
頑張り過ぎだと思っていたけど、あまり踏み込むのも失礼かなと思って。
旅行に行こうって思える余裕が出てきたのなら一安心だ。
この国の色んなところを見てもらって、好きになってもらえたら嬉しいなぁ。」
「…!お父さん…っ!!」
「えっ?!?!」
優しく笑う社長に胸を射抜かれて、私は勝手に社長をこの世界のお父さん認定した。
社長は突然お父さんと呼ばれたせいでものすごく動揺して眉毛を引っ張ったり捻ったりと謎の動きをしていた。
そんなところもグッとくる。
「すみません。冗談です。社長の懐の深さに感動して、つい。」
「いや、うん?えっと…ありがとう?」
この魅力に今まだ気がつかなかったとはなんたる不覚、と拳を握りしめながら席を立つ。
「お時間取らせてしまってすみませんでした。ご配慮ありがとうございます。
私、この工場好きなので、戻ってきたらまた絶対働かせてください!」
ペコリとお辞儀をして私はお父さん…社長にとびきりの笑顔を見せてから工場を出た。
次に病院へ行きハッシ先生とお話をした。
病院に来ているのはただのお手伝いと勉強のためだけなので、しばらく来られなくなる事を報告するだけだ。
「キヨコさんが来てくれるの助かってたんだけどな〜。しばらく来れないのは残念だよ。
でも王都に行けば、こないだのアレのヒントも得られるかもしれないしね。
何か協力できることがあるならするからいつでも言って。そんでもって戻ってきたらまた手伝いに来て!絶対!!」
ハッシ先生の言う<こないだのアレ>と言うのは、私が興味を持っている魔管欠損の治療に関しての事で、私の魔法を利用して人工の魔管を作れないか、というものだ。
私の魔法は空気を纏うと言ってはいるが、実際にはこれは空気ではない。何かははっきりわからないけど、見えないラップのようなバリアのような薄い層で、漠然と何かに使えるんじゃないかと思うのだ。
それについての話をするために、ハッシ先生に王都にある医療品機器を製造している会社を紹介してもらった。そんなにすぐに何かしらの結果を出せるはずはないが、まずは取り掛かる方が大事なのだと思う。
宝くじは買わないと当たらないし、種を蒔かないと実を収穫することはできないのだ。
でもこれ、ユユラさんの子供が元気に産まれてきたら途端にやる気を無くすやつかもしれない、とふと思う。
今のモチベーションって、ユユラさんの子供に何かあっても大丈夫なようにしたいっていうのが8割。
残りの2割はソラ君の話を聞いて本人も家族も病気でそんな辛い思いしないでほしいって思ったから。
まあ、そうなったらそうなったでその時考えよう。
ハッシ先生はまた手伝いに来てくれ、と何度も念を押して仕事に戻って行った。




