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夜は神田さんの家へ遊びに行く約束だったので、病院から直接向かった。
途中、ケーキ屋さんによって、お土産用の洋梨のタルトをワンホール受け取り、レストランでテイクアウト用の料理を何種類か受け取る。
ユユラさんは妊娠5ヶ月で少しお腹周りがふっくらしてきているが、悪阻などもなく元気で仕事もまだまだ続けると言っていた。
神田さんの家に着くと、ミイちゃんとアオが既にお邪魔していて、自分の家のように寛いでいる。
さっきまでミイちゃんとアオとルナちゃんとソラ君で、近くの川で水遊びをしていたのだそうだ。
「今はそんなに激しくは動き回れないし、ミイちゃんが良く面倒を見てくれるから安心なのよ〜」とユユラさんは微笑んでいる。
ミイちゃんグッジョブ。
買ってきた料理をほぼ食べ終えて、まったりしている時に、徐ろに神田さんが聞いてきた。
「田中さんはさぁ、ちゃんと休んでるの?」
今や私の苗字を呼んでくれるのは神田さんしかいないな。
ルナちゃんとソラ君はミイちゃんとアオと食卓の周りをキャーキャー言いながら走り回っている。
ユユラさんも私のコップにビールを注ぎながら眉を顰めた。
「本当に。工場のお休みの日は病院に行ってるんでしょう?働きすぎじゃない?」
「いやいや、大丈夫ですよ。病院に行ってるのは趣味みたいな物だし、2週に1日は完全フリーの日を作ってます。こっちの世界に来てから風邪とかも引かなくなったし、体力有り余ってるんで。」
「2週に1日しか休んでないとかおかしいでしょ。」
「そうよ。もっと色々楽しんだらいいのよ。ホクトなんて、最初の一年はあちこちふらふら旅行にばっかり行ってたらしいわよ。」
「うーん。私は先に生活基盤整えたい方なんで。
でもだいぶ落ち着いたから近いうちに王都とかに行ってみようかなと思ってますよ。」
「あら!いいわね。再来月は建国祭で王都では大きなお祭りになるから、それに合わせていくといいわよ。」
「うんうん。結構楽しめると思うな。うちも子供が産まれるまでは毎年行ってたよ。子供達がもう少し大きくなったら今度は家族で行きたいと思ってるんだ。」
「そうなんですね。じゃあ再来月目標に計画立てようかな。イーサンから出るの初めてだから緊張するなー。」
「大丈夫よ。この街から行く人も多いからなんとなく人の流れについていけばいいのよ。
宿と鉄道の予約は私が教えてあげる。」
「僕が初めて王都に行った時は予約なんてしなかったけどなんとかなったよ。最悪野宿でもいいやって思ってたし。田中さんは女の子だからそういうわけには行かないだろうけど。」
「この街は平和だけど、王都には悪い人もいるみたいだから…」
「あれ、前に神田さん、この世界の人は悪意がないって言ってませんでしたっけ?」
「僕の印象ではそうなんだけど、ここ数年、多くはないけど王都でだけ窃盗や暴力事件が起きたって聞くことがあるんだよね。」
「ほえー、それもまた進化なんですかねぇ。それとも何か原因があるんですかねぇ。」
「どうなんだろうねぇ。」
そんな話をしているうちにあっという間に時間が過ぎていく。
「お母さん、お母さんー。ソラが寝ちゃった。」
ルナちゃんがユユラさんのブラウスの裾を引っ張る。
見てみるとミイちゃんに寄りかかるようにしてソラ君はくぅくぅ寝息をたてている。
そういうルナちゃんも目を擦りながら欠伸をしていて今にも寝てしまいそうだ。
「あらあら、走り回って疲れたのね。もうベッドに行きましょうか。」
ユユラさんがソラ君をそっと抱きかかえたのを合図に私も食卓の後片付けを始めた。




