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「ハッシ先生、魔管が欠損して生まれてきた子供はどうして魔臓を取っても予後が悪いんでしょうか。」
病院でのお手伝いの日はお昼ご飯を食べながらが私の質問タイムになっている。
質問のほとんどは魔臓や尖脳などこちらにきて初めて知った器官やその病気についてだ。
「それが未だ解ってないんだよね。一応仮説がいくつかあって、1番有力なのは魔臓が魔力を作るようになるのは幼児期以降で、それ以前は体全体で魔力を精製して魔臓に貯めてから魔管を通って尖脳に送ってるんじゃないかって物なんだよ。
魔力自体は魔臓以外で作られてるから、魔臓を取っても体内に魔力が蓄積して身体に大きなダメージを与えるんじゃないかって。」
「そうだとしたら、体内の魔力の精製を抑えるか、魔臓を残して魔管を形成するかの方法になりますね。」
「そうなんだよ。でも幼児期の魔力がどこでどんな風に作られているかが判っていない上に、魔力の精製を抑える薬は今の所微妙なものしかない。
そして魔管は魔力を流す特殊な器官だから、血管なんかで代用しようとしてもすぐ壊死してしまうんだよね。
魔管が欠損ではなくて詰まっているだけとかなら切って繋げば良いだけなんだけど。
そもそも魔管欠損の子供なんてこの国全体でも数年に1人生まれるかどうかくらいの確率だから、研究もなかなか進まない。」
「そうなんですね。どうにかなるといいですね。」
私が魔管欠損に興味を持っているのは、前の世界では存在しない物だからというだけではなくて、神田さん一家のことも関係している。
実は神田さんの息子さんのソラ君は魔管が一部欠けた状態で生まれてきたらしいのだ。
完全欠損ではなかったのでなんとか欠損部を繋ぎ合わせて回復することが出来たが、手術を何度も繰り返さなくてはならず、死を覚悟するような発作も一度や二度ではなかったのだと聞いた。
ルナちゃんに比べて随分と小さいと思ったのはそれが原因だった。
今、ユユラさんは第三子目を妊娠中で、その子がもしまた同じ病気だったらと、ものすごく不安になるのだそうだ。
神田さんは私と同じ渡り人なので、それがソラ君の病気にも何かしら影響しているかもしれない、そうだとしたら次の子も、と辛そうに打ち明けられた。
渡り人である事が影響しているかどうかなんてわからないけれど、少しでも心配事を取り除いてあげられる情報はないかと、私も色々調べている最中なのだ。
とはいえそもそもその病気が珍し過ぎて研究も進んでいない状況のようだ。
そんなに珍しいなら逆に大丈夫なような気もするが、何せ滅多にない異世界転移を引き当てた私達だから、その辺の自信は持てない。
ミイちゃんにも聞いてみたが、難しいことはわかんない、と軽く返されてしまった。
一度近いうちに王都にでも行って、大きな病院で話を聞いてこようかな、と最近考えている。




