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「これは…」
私はあたりをゆっくりと見回した。
巨大な白い犬の尻尾のようなものが3本(匹?)弧を描くように空を泳いでいる。
地面にはクローバーの様な植物が芝生の様に一面に広がっているが、色が金色。
所々に咲いている花は色がゆらゆらと7色に変化している。
空は青くて太陽がオレンジなのは見慣れた物と同じで少し安心する。
自分の見た目は…たぶん変わっていない。
鏡がないからわからないけれども、手や服はいつもの通りだ。
異世界ってやつだろうけど、異世界すぎてちょっと受け入れきれない。
ほんの10分前まで私はちゃんと現実を生きていた。
生きがいや目標を持って充実した毎日を過ごしていたわけではない。
バリバリ働いて過労死寸前に追い詰められていたわけでもなければ、引きこもってネットとゲームにどっぷり浸かる様な生活でもない。
普通の人の普通の生活をなんとなく毎日過ごしていただけだ。
もちろんちょっとした不満はあったがちょっとした喜びもあり、人生やり直したいかと言われたら、めんどくさいから別にいいですって感じだった。
ネット小説や漫画で最近流行りの異世界転生モノも楽しんではいたけれど自分がとは。
宝くじに当たるくらいの確率だろうか。
もっと低いかもしれない。
でもどうせなら宝くじに当たった方が嬉しかった。
10億当たったら何するかは結構妄想してたけど、異世界行ったら何しようかは考えたことなかったよ。