第一話 グランデリアへ
「ここがヴァルモンデの首都グランデリア・・・」
それは圧倒されるほどの壮大さと威厳に満ち溢れていた。
街の中心にそびえ立つ王宮は、まるで天空に触れるかのようにそびえ立っていた。その壁は白く輝き、太陽の光を反射してまばゆい輝きを放っていた。高い塔が空にそびえ、旗が風になびく光景はまさに王国の威光を象徴していた。
街は広大で広々としており、大通りには活気に満ちた人々が行き交っていた。色とりどりの衣装をまとった人々が笑顔を交わし、商店街では賑やかな交渉が行われていた。グランデリアは、芸術や文化、商業の中心地でもあり、王国の繁栄を象徴しているのだろう。
しかし、セリーナにとってはこの壮麗な景観が苦々しいものとなっていた。ここはセリーナの故国を滅ぼし、家族や民衆を苦しめたヴァルモンデ王の治める王国の首都なのだから。
街の中を歩く度に、過去の痛みがよみがえる。セリーナがかつて誇りに思っていたエルシリアの首都セレスタを思い起こさせるのだ。
セレスタもグランデリアとは違う趣ではあるが、それはグランデリアにも負けないくらい賑やかで繁栄した美しい都であった。美しい大理石でできた壮麗な建造物が立ち並び、大勢の人々が行き交うエルシリアの都。
吟遊詩人がかつては歌にしたとされる麗しい都セレスタ。それを破壊した者たちが今まさに幸福を享受し、繁栄に酔いしれている。
グランデリアの繁栄はセリーナ――否、エルシリアのすべてを踏みつけて築き上げたもののように写るのだ。
「あんた、顔真っ青だよ?大丈夫かい?」
気づけば心配そうに深紅の瞳がこちらを覗き込んでいた。
「アマリア、大丈夫よ」
「無理してないだろうね。ちょっと休むかい?」
「本当に大丈夫。大きな都市だから人酔いしただけよ」
そう言い訳したが、五年近くになる付き合いのアマリアにはセリーナの本心などお見通しだろう。
それでも、嘘をつくのはアマリアがこの復讐にあくまで『反対』の立場であるからだ。
アマリアはセリーナに何度も『復讐を忘れて、死ぬまでアマリアの相棒として生きていく』ことを望んでいた。
アマリアと過ごしてきたこの五年あまりの時間で商売を学び、庶民として生き方や常識を学んだセリーナにとってそれはどこまでも甘美な誘いだったが、アマリアの手を取ることは出来なかった。
セリーナの中で『エルシリアのセリーナ王女』であることはどうしても忘れることが出来なかったのだ。
そんなセリーナへの説得を最終的にアマリアは諦めた。ただし『アマリアも協力させる』という条件付きではあったが。
復讐は果てしなく困難な道だということはセリーナにもわかっていた。だから、無関係なアマリアを協力させることは商人としての大望を持つアマリアの人生を巻き込むことになる。
そんなことをセリーナは望んでいなかったが、アマリアもこればかりは折れなかった。
「エルシリアを復興させたら一等地に店を構える支援と税金を優遇しなさいよ。あんたに協力するのはあくまで商売への投資だから」
アマリアは笑ってそう言った。
セリーナに罪悪感を抱かせない為にあくまで商人としての立場を崩さなかった。
そうして、二人は協力し表向きは商売の為にここ『グランデリア』までやってきたのだった。
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