国を作るなんて
「それは……どういうことですか?」
「そのままです。私と一緒に国を作りませんか?」
……ありえない。
この世界に転生してから全く時間が経っていないから詳しいことは分からないけど、国を作るなんてこと、反逆罪以外の何者でもないだろう。
「この国の王様が嫌いなんですか?」
「……いいえ。王のことは嫌いではありません。あの方は気が弱いだけで賢い人ですから」
「だったら、なぜ……?」
「この国が好きではなくてですね……。臣下達が賢くなくて、民たちも好き勝手争いをする……。我儘かもしれませんが、嫌なんです。こういうのが」
私は王の臣下なのですよ、と男は言う。
「立て直す力があるほど、私は強くありません。ですから、新しい国を作るのです」
「矛盾していませんか? 立て直す力はないのに、新しい国を作る力はあると?」
「ええ、そうです。貴方のような『賢い人』が一緒に頂ければ」
男は全てを見透かしたように微笑む。
「先程から気づいておりませんか? ただの農民の息子がこれほどまで悠長な敬語を話せるでしょうか。否、私は過去、そのような農民を見たことがありません」
……それは、転生した私が立派な教育を受けた者だからですっ!
しかし転生したと言っても信じてもらえるわけがない。
……私は自分で陸上の国を作るんだ!
この人について行ったら叶わない気がする。
とりあえず、敬語を話せる理由を探す。
「えと、私の家族結構賢くて……その影響かなーっと。そ、それに、先程いた少年もまあまあ綺麗な敬語だったでしょう? 私が敬語を話せることにそれほど変なことはないかと……」
「ええ、そうですね。あの少年も汚くはありませんでした。ですが、国を作る上で魔力もなく、多少の敬語しか使えないものでは困ります」
……えぇぇ。そんなに私じゃないとダメなの? それほどまでに大切な理由あるかなぁ。
「……ほ、他にも優秀な人材はいるのではないですか?」
「ええ、優秀な人はいます。もちろん、声を掛けていますよ。すでに仲間になっています」
……なんと! この人、優秀な人を集めてたのか!
無理やり納得させられた気がしなくもないが、一応納得する。
「そうなんですね。あ、私仲間になるの無理です」
「……何故ですか?」
流れで断ろうとしたが、この男は逃さないという目でこちらに向けて笑う。
「そんなの、無理に決まってるじゃないですか! それに、私には夢があるんです!!」
男は「ほお、それは何ですか?」と答える。
……え、別に言ってもいいよね? ね?
「私の夢は……陸上にありふれた国を作ることです!!」
「リク……ジョウ?」
男は突然片言で話す。
この世界に「陸上」はないのだろうか。
「リクジョウとやらは知りませんが、貴方も国を作りたいと思っているのですね。農民なのにすごい発想です。やはり、私と協力するのはどうでしょう?」
「やりませんって!! 私は『陸上』にありふれた国を作りたいんです!! 貴方についていったら絶対作れないじゃないですか!」
男はおや、と首を傾ける。
「つまり、作れればいいんですね? よろしい。私に協力してくれる代わりにその『リクジョウ』とやらを作るためのものは何でも準備してあげますよ」
「なんと!?」
……それは最高な交換条件だ……!!
何かと物がいる。それを準備してもらえるなら、協力した方が早いかもしれない。
それに、私がしたいのは『国を作ること』ではなく、『陸上にありふれた暮らし』をすることが目的だ。
自分が王様になろうとは考えてはいないし、かなりいい条件かもしれない。
「やります! 協力します!」
「良かったです。ではこれから仲間として、より良い国を作っていきましょう」
ミナトと男はそれぞれ行き違っている。
『協力する』ということがどういうことか知らずに簡単なことだと思い違いしてしまったミナト。
男は、ミナトの能力欲しさにリクジョウが何かも分からないまま「なんでも準備する」と言ってしまったこと。根は農民なのだから、と簡単なものだと勘違いをした。
この次、二人は喧嘩をすることとなる。
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