第四十二話 夫婦設定と嘘
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「え、……こ、琴乃? それってどういう
▽▽▽
「そういう意味だから。 そのままの意味だから」
ヤベに暇なんて与えない。 ヤベが言い終わる前に言葉を畳みかけた。
なお、回した腕の力は緩めない。
……なんて、こんなことしてもヤベは落ちない。 そんなことは分かっている。
きっと超鈍感ヤベは私がヤベのことをこんな風に思っていたなんて思ってもいなかったのだから。 きっと今、この瞬間に初めて知ったことだと思うから。
友達としか、思っていないと思うから。
「どうせ、今まで私のことそういう風に見ていなかったでしょ。 友達、良くて親友かな」
背中に全身を押し付けながら言う。
「……うん」
小さな声が前から返ってきた。
まあ、でしょうね。 だから。
「じゃあ、これからはそういう風に見てね」
今できる精一杯のことかな。 これが。
「うん」
こんどはしっかりとした声が返ってきた。 ボリュームはあまり変わらなかったけれど。
「じゃあ、そういうことだから。 取り敢えず今日は帰っていいよ」
「うん、そ、そうしたいのはやまやまなんですけれど……」
「何? 緩めないよ」
一層強くしてやった。
「ど、どうしたら」
表情は見えないけれど、きっと相当焦っているんだろうな。
……ちょっといじわるしてやろ。 それくらいはいいでしょ。
「じゃあ、私の良いところ言って。 満足したら解放してあげる」
「え、えーっと……」
おい、スッと言えよ。
「まさか、無いとでも言うつもり? 」
「いや、その……恥ずかしいというか……」
「言って。 言わないと帰さない」
ホールドを頑なに固くして答えを返さないと帰さないことをアピールする。
やっと話してくれる気になったのか、速く放してほしいのか、焦っていた動きが止まった。
どうせ、優しいところとか頼りがいがあるとかだろうな。
きっとあのことも忘れているだろう。
「……凛々しくいるところ」
思っていたことが返ってきた。 まあ、そんなものか。 今日はこの辺で許して緩めてあげよかな。
まあでも、一言言ってやろう。 そう思った時。
「あと、」
思ってもいなかったことが起こった。 まさか、まだあったとは。 ヤベのことだから一個だけだと思っていたんだけれど。
「あと? 」
続きを促す。
果たして、ヤベの口からはこんな言葉が。
「ポニーテール……似合っててかわいいなって思う……」
瞬間、胸がぶわぁっと震えた。
思ってもいなかった言葉に動揺して、思わず緩めかけてしまった。
なんか、むず痒いというか。 でも、全然悪い気はしない。
普段、外見でほめるなんてないから……不意打ちだった。
この言葉、実は今回が初めてではない。
▽
昔、気分転換で髪をまとめてポニーテールにしたとき。
「おはよー。 お、琴乃ポニテにしたんだ。 似合うね」
何気ないあいさつの中でのプラスアルファの一言。
よくある、べたな誉め言葉でも。
私の中では充分にうれしい一言だった。
▽
覚えていてくれたんだ……。
……ってちょっと嬉しくなったけれど、ヤベに限ってそんなことは無いか。
きっと昔のことなんて意識せずに言っただろうな。
そう、意識せずに。
つまり……。
「……合格」
私はヤベを開放した。
▽▽▽
「じゃあ、またねヤベ」
「う、うん……」
ばたん、と扉が閉まる。
その瞬間、拘束から解かれた僕に、光速で現実が戻ってきた。
な、ど、どういうことなんだ……?
「こ、琴乃が僕のことをすき……? 」
そ、そうなのか……。 今までそういう風に見ていなかったけれど……。
急にそういう風に見えてしまった。
普段何気ない琴乃の行動が、すべて別の意味を持つように思えてしまった。
僕のことを他の女の子と話をさせない理由って……。
……。
取り敢えず、家に帰ろう。 うん。
▽
「おかえりなさーい、キヤベさん」
玄関を開けると部屋の向こうからラタスの声が届いてきた。
「うん、ただいま」
「ふふ、なんか夫婦みたいですね」
そう言いながらラタスは僕のところまで歩いてきた。
が、当の僕は、
「うん」
と一言だけ残して靴を脱ぎ、部屋へと入った。
「あれ、この反応は予測していませんでしたね……。 なんか一言あるのかなと思ってたんですけれど」
僕のそっけない反応に満足しなかったのか、ちょっと愚痴っぽく言いながら後ろからついてきた。
そう。 正直、そんなことはどうでもいいのだ。 今の僕には。
今の僕の頭の中には、琴乃の言葉と、それと……えっと、うん。 はい。 あれですけれど。 まあ、詳しくは言わないけれどね!
と自分の中では完結したはずの話だったんだけれど。
「あれ、キヤベさん。 いまえっちなこと考えてますね? 」
急に何の前触れもなくそんなことを言い出すもんだから、
「え! ぜ、全然!? そんなコト考えていないけれど!!!??? 」
と、めっちゃ動揺してしまった。
「キヤベさん」
「……はい」
「キヤベさんの嘘も大概ですよ」
「ぐうっ」
心を読むのは、ずるだと思います。
1日目っ




