第三十五話 友達とリング
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それからボクとアネットは毎日同じ時間にここで会うことになった。
アネットは毎日欠かさずこの穴の開いた塀の場所まで来てくれた。 アネットの種族は……話を聞いているところによるとどうやら天使族らしかった。 ボクはボクの種族が悪魔族だということをばれないように一緒に居た。
アネットはボクにとって初めての同い年の友達だった。 人と話すことが苦手らしく、そのせいで友達は少ないとのこと。 でも、心の中ではもっと話したいと思っているらしい。 その証拠に日が経つにつれてアネットの方から話をしてくれることも増えてきた。
ボクはアネットからいろんなことを教えてもらった。 お母様やサーシャからは教えてもらえない外の世界のこと、サーシャの話し方のことなど……。 とても楽しく、じょーひんで、ぷらいべーとな時間を過ごしていた。
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ある日、いつも通りボクがアネットの待つ塀の穴のところまで行くと、いつも通りアネットが先に待っていた。
「お待たせ、アネット! いつも遅れちゃってごめんね」
「あ、ラタス! ううん、今来たところですし大丈夫ですよ」
先に穴に座っていたアネットの隣によいしょ、と座り込む。
ん? なんだろうあれ。
「……アネット。 その手に持っている物は何? 」
「あ、これはですね……。 はいどうぞ。 ぷ、プレゼントです」
そう言って両手で丁寧に渡されたものは手のひらより少し大きめな白い箱だった。
「え、ボクにくれるの!? やった! 」
本当にうれしかった。 同い年の友達から初めてプレゼントをもらったのだ。
受け取ると少し重みがあった。
待ちきれなかったから、開けてみてもいい? と聞くのと同時に開けてみると……
「うわぁ……きれい」
そこには黄緑色に輝く透明のリングがあった。
「こ、これはですね……私の先天能力なんです」
アネットの先天能力……そう聞いてドキッとした。
先天能力とは。 ボクたちみんなが生まれたときに持っている能力のことである。
そんな先天能力を教えること。 それは自分の弱点をさらけ出すということと変わりないことなのだ。 サーシャから何度も言われた。 先天能力の開示は自分が本当に心から信じた人にしかしてはいけないということを。 事実、ボクはお母様やお父様、サーシャの先天能力が何なのか知らない。 ボクのことを信用していないわけではない。 能力の中で心を読む能力もあるらしいから。
だから……きっとアネットはいっぱい勇気を振り絞ってボクに言ってくれたのだろう。
「わ、私の先天能力は石を生成するという能力です……。 と言っても今見ている通り、小さいものしかできないんですけれどね……。 いつも一緒に話してくれるお礼です」
アネットとは友達。 そう思っているのはボクで、アネットではない。 もちろん、アネットもボクのことを友達だと思ってはくれていると信じている。 アネットはいい子だし。 でもやっぱり、今まで悪魔族だと勝手に恐れられていたボクにとって不安ではないと言えば嘘になってしまう。
そんな中、こうして形のあるもので表されること。 それはとても、とてもうれしいことだった。
ということをグダグダ考えてしまっていて何も言葉が出てこなかった。
ボクの反応がないのが気になったのか、アネットが話し出した。
「あ、あの、やっぱり迷惑ですよね! 捨ててもらっても」
「す、すごいよ! アネット! こんなにきれいな物初めて見た! 」
なんかアネットが話しているらしかったけれど、そんなことよりも貰ったものがすごくきれいで!
「……え? 」
アネットはなぜかわからないけれど、困惑していたようだった。
「これ本当にもらっていいの? うわー……うれしいな……ねえ、つけても……ってアネット!? どうして泣いてるの!? 」
なんと、なんで?! アネットは泣いていたのだ。 白い頬を赤く染めて大粒の涙を流していたのだ。
え、ボク何かしたっけ!?
「ッグス、い、いえ、そんな風に喜んでもらえたのは初めてで……。 周りの子たちは大きな火を操ったり、強い風を生み出したりして……私のは全然役に立たない能力だって言われてて……」
「? なんで役に立たないの? こんなにボクをうれしいって気持ちでいっぱいにできる能力なのに」
やっぱり外の世界のことはまだまだ知らないことだらけだな……って、アネット!?
「うぅぅぅ、うわぁーん!! 」
「あ、アネット!? ご、ごめんね! あ、もしかしてボクがお礼を用意してなかったから? こ、今度持ってくるから! 」
その日はアネットが大泣きしたのでそこで終了だった。
屋敷の方に戻る途中、ボクはリングにもっていた糸を結んでネックレスにした。
リングを光に照らすと黄緑色にきらきらと光った。
本当にうれしい。 アネットには何をあげようか。
六日目!(ストックが……)




