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過ぎてゆく日々が始まりの世界で  作者: でつるつた
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第三十四話 外の世界の者と敬語

 ガサゴソ

 と音がした。 音がしたのは、外の世界の方。

 怖い。 外の世界には怖いものがたくさんあるとサーシャやお母様から聞かされていた。 動物、災害、事故……。 

 そして、別の種族の者。

 

 「あ、あの、私も雨宿りさせてくれませんか……? 」


 まさに今、外の世界に住む者が現れたのだった。


 「ど、どうぞ……」


 そう言うしかなかった。 だって、断ったら何をされるかわからないし、怖いけれど……仕方がない。 ボクは現れた外の世界の少女と身を寄せ合うような形で雨宿りをすることになった。 幸い穴の大きさ、というより石の塀の厚さは小さい2人が入る分には苦労しなかったため何とかなった。 結構ぎゅうぎゅうだけど。


 「あ、ど、どうもありがとうございましゅっ……! 」


 あ、噛んだ。 多分お礼を言いたかったのかな。

 チラッと横を見る。 真っ白な長い髪にたれ目のかわいらしい女の子。 噛んだことが恥ずかしいのか、白い頬を少し赤らめている。 かわいい。 ガサゴソの音の正体が怖そうな人じゃなくて良かった……。 一安心。


 でもどうしよう。 外の世界の人と話したことなんてないし……。 見た感じだと同じくらいの年に見えるけれど。 

 怖い。 やっぱり知らないことは怖い。


 でも、やっぱり。

 話してみたい。 

 同い年くらいの子なんてボクのいる世界では珍しい。 出来たら、友達になりたいな……。

会話をどう始めたものか悩みあぐねていると、


 「あ、あの、お名前聞いてもいいですか? 」


 と、とても消え入りそうな声で向こうから話しかけてくれた! 

 あ、でも……名前、か。


 「えっと、ラタスだよ。 あなたは何て言うの? 」


 「あ、私はアネットと言います。 ご、ごめんなさい、一緒にあまやどりさせてもらって」


 「いや、全然! むしろ安心したよ。 ひとりで怖かったからね」


 「ほ、本当ですか! 実は私もとても怖くて……ラタスさんに会えてよかったです」


 見た目通り、優しい声だった。 しかも。 この話し方……。


 「……その、外で何をしていたの? 」


 「あ、えっと、私本を図書館で借りてて……それを返しに行こうとおもってたんですけれど道に迷ってしまって……それで雨も降ってきてもうどうすればいいかわからなくなってたんです」

 それで今に至ります、とアネット。


 「あ、あの、ラタスさんは何をされていたのですか? 」


 「ボクはね、この屋敷の外の探索をしていたんだ! ぷらいべーとな時間を使ってね! 」


 「そうなんですね。 ということは、ラタスさんはこの屋敷に住んでいるのですか? 」


 「うん、そうだよ」


 「と、とても大きな屋敷ですね……」


 「その手に持っているバッグは? 」


 ボクはとにかく今自分が気になっていることを聞いた。 だって、外の世界からの同い年くらいの子だよ!? 確かにお父様やお母様の客人でよく屋敷に外の世界の人たちは来るけれど……。 その人たちと話すことなんて何もないし、そんな機会もなかなかないし。 こうやって興味しかないのは仕方がないでしょ!


 「あ、この中には図書館から借りてきた本があります。 よかったら読みます? 」


 「……」


 「あ、あの、どうかされました? 」


 急にボクが黙ったせいか、少し不安そうな顔になるアネット。 そんなアネットにはお構いなしにボクは話を続けた。


 「アネットってさ、すごく……」


 「は、はい……」


 身を構えるアネット。 


 「じょーひんだよね!! 」


 「……え? じょーひん?  」


 話の内容がコロコロと変わっていることに困惑しているアネットを置き去りにボクは質問を続けた。


 「うん! だってサーシャとしゃべり方が同じだもん! すごいなー。 ボクもサーシャみたいになりたいんだけど難しいんだよね」


 そう、初対面でおまけに外の世界の人という未知の存在に対して、さっきのボクならこんなにも話を続けることは無かっただろう。


 でも、今は『いつもの』ボクなのだ。

 ……と言っても、正確には完全にいつもと同じという訳ではないけれど。

 最初から思っていたのだが、アネットの話し方。 ボクが目標にしている、そして大好きなサーシャの話し方と同じなのだ! サーシャと同じ話し方、それすなわちいい人! ということで、そういうことです。


 「さ、サーシャさん、というのは?」


 急に現れた人に対して当然の反応をするアネット。


 「ボクの憧れの人だよ! すっごく優しくてじょーひんなお姉さんなんだ! 」


 「憧れの人、ですか……とても素敵な方なんでしょうね」


 「うん! 」


 一方的に話していたボクはさらに一方的にお願をする。


 「それでね……ボクにその話し方、教えてくれない? 」


 「話し方、というのは、敬語のことですか? 」


 「そう! ダメかな? 」


 ボクはサーシャのような人になりたいのだ。 いつもれんしゅうはしているけれどなかなか上達しない。 サーシャの話し方をマスターしているアネットなら何かコツがあるのかもしれない。 だからお願いをしたのだ! 


 それに……もうひとつ。 というか、こっちの方が本命で。 アネットのこと、もっと知りたい。 そして、お友達になりたい。 その思いがあって、思い切ってお願いしたのだ。

 果たして、アネットの回答は。


 「い、いえ。 勿論いいですよ」


五日目!(眠)

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