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過ぎてゆく日々が始まりの世界で  作者: でつるつた
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第二十九話 意外と図書館


 ▽


 全体が落ち着いたところで(落ち着くべきなのは私だけなのだけれどね)センと昼食をとることにした。


 「全く、琴乃! その抱き着きやめてもらえないかしら! 迷惑なんだけれど」


 弁当箱を開けようとしていたセンは私にホールドされることによって手を止める羽目になった。 


 「いや、それは仕方ないのよー、セン。 あなたが可愛いから」


 「はぁ。 もう会話にならないわ。 で? ラタスさんとはどこで知り合ったの? 」


 いつものことであるため、剣道をしている私と特に運動をしていないセンの体付きの差は明らかだ。 抵抗を諦め、会話を進めることにしたようだ。 というわけで昼休みはセン力補充し放題。

 それはさておき。


 「え、私ラタスと知り合いだってセンに言ったっけ? 」


 さっき言ってしまったのだろうか。 半ば混乱状態だったため、自分の話したことはあまり覚えていないのだけれど……。 


 「言われてないけれどわかるわよ、そのくらい。 あなた、呼び捨てにしているじゃない、ラタスさんのこと」


 「さ、流石千里様。 良い観察眼をお持ちで……」


 センの頭の良さに改めて驚く。


 「で? まだ質問に答えてもらっていないんだけれど」


 どうしたのだろうか。 いつもより質問の解の催促が強めな気がするのだが……。 あ、もしかして。


 「もしかして私が知らない女の子と知らない間に仲良くなっていたことに焼いちゃった? もう、センったら~」


 こいつ~本当にかわいいのだかr……。


 「よし、今日の放課後、図書館行きましょう」


 「嘘ですごめんなさい」


 私は音の速さよりも早く謝罪を述べた。 と、同時にセン力補充のホールドも解いた。

 図書館というワード。 別に日常で聞く言葉だと何とも思わないワードだ。 私も本は好きな方だし、それに……家にいないときはよく利用させてもらっている。 

 しかし、センが使う図書館という言葉は別だ。 図書館と書いて「牢獄」と呼んでも過言ではないのだ。 というのも、センは常人には考えられないくらいの勉強をしている。 兎に角、めちゃくちゃ頭がいい、というか、知識を頭に入れるのがすきなのだそう。 そんなセンと図書館に行こうものなら……うう、あの静かな空間が牢獄にでも思えてしまう。 一度入ればセンが「帰るわよ」というまで出してもらえない……。 別に勉強がとりわけできないわけではないのだが、いかんせん時間が異常なのだ。 切り札を出された私は泣く泣くセンに従うのだった。


 「昨日ヤベの家に行ったら会ったのよ」


 ホールドを解いた後、私は自分の弁当箱を開けて食べながら答える。


 「キヤベの親戚さんなんですってね」


 「そーそ。 とーおい親戚なんだって」


 私は含みのある言い方で答えた。 きっと頭のいいセンなら気づいているだろうけれど。


 「……まあ、分かるわよね、嘘だって」


 流石です、千里様。 というか本当にわかっていたのが怖い。 


 「やっぱりセンもそう思う? いくら何でも怪しすぎでしょう」


 パクっと卵焼きを口へ運ぶ。 我ながらいい出来だ。

 ……なんだろう、何故かセンが少し驚いたかのように私のことを見てる。

 すると、センがその表情の理由を話し始めた。


 「……以外ね」


 「んー? 何が? 」


 今日の弁当の内容かな。 特に変わったところはないんだけれど。


 「琴乃の事なんだから、いの一番にラタスさんのキヤベダーリン宣言のことについて騒ぎ散らかすものかと思っていたのよ」


 全く予想していなかったところからの質問だった。 確かに……。 言われてみればそうだ。 今までの私なら、ヤベのことをダーリンと呼ぶ輩が居ようものなら問答無用で成れの果て棒でめためたにしていただろう。 ヤベを。

 あ、でもそうか。 昨日、ラタスと一対一で話してちゃんと相手の、敵のことを理解したのだ。 だから、そういう攻撃に対して怒りではなく、いや怒りもあるけれどそれと別に冷静に分析をできる自分がいるのだ。 こういう手を使ってきたのか、という具合に理解ができるようになった、というか。 そういう感じで伝えようかな。


 「ああ、それの事ね。 勿論、何とも思っていないわけではないわよ。 でもまあ、一手先に行かれたというか、これは一杯食わされたって感じ……というか、騒ぎ散らかすって私を怪獣か何かと思っているの? 」


 「TPOもわきまえずに襲ってくるのだからあながち間違えていないかもね」


 フンッという顔でサンドイッチを口へ運ぶセン。


 「な、何も言い返せない……」


 シュンと小さくなる私。

 一方センはやはり私のこの落ち着きが理解できないのか、同じ質問を重ねる。


 「やっぱりへんね。 そんなに落ち着いていられるだなんて。 キヤベがダーリンって他の女から宣言されたのよ。 いつもはそれこそ怪獣のように近づく人ひとりひとりに攻撃

しているのに。 昨日、何があったのよ」


 本当に不思議に思っているのねー。 まあでも、ひとつわからないことがあればとことん追求するセンの性格のせいもあるのだろうかね。 というか、昨日何かあったっていつの間にか断定されてる……!

 まあ、別に隠すようなことでもないし。


 「攻撃しているのはヤベにだけよ。 ……まあ、いろいろあったのよ……


 ▽

 

……ということがあったの」


 「フーン、ライバル。 琴乃の中でラタスさんと折り合いがついたってところかしらね。 ……それにしてもキヤベ、大変ね」


 何故かヤベのことを案じるセン。 異性から言い寄られるということは別に大変じゃないのではと思うんだけれど。


 「それより、センもよかったわねー。 大河と一緒のクラスになれて」


 チラッと目線だけセンに向けて様子を見る。


 「っ……! ごほっケホッ!! 」


 『何故か』何かに驚いてむせるセン。 あぁ、かわいい。 ただ、かぅわいぃ。


 「あら、どうしたのかしら千里様?? 頬を赤らめちゃって」


 うぶすぎる! もう本当に守ってあげたくなる。 私は答えのわかりきった質問をぶつける。


 「き、急に大河の話になったからびっくりしただけよ……」


 必死に冷静になろうとしている……。 はい。 かわいい。

 まあ、御覧の通り、センは大河のことが好きなのだ。 私としてはあのいつも元気ハツラツで百倍で能天気そうな大河のことを、勉強できてツンツンツンデレなセンが好ましく思っているなんてビックリだったのだけれど。


 「ほんとこういうのに弱いわねーセン。 その様子だと特に進展はなさそう」


 「別に進展なんてないわよ。 いつも通り」


 「いつも通り、かっこいい、ですって!? 」


 「……今日は私の家にしましょう」


 「本当にごめんなさい許してください」


 それはまずすぎて光の速度で謝った。


 「ふふ、冗談よ。 私の家になんて……呼ぶわけないでしょ」


1日目……!

(昨日かけずすみません泣)

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