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過ぎてゆく日々が始まりの世界で  作者: でつるつた
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第二十五話 お許しと不意打ち

 

 なんと! お許しが出たのだ。


 「い、いいの、母さん? 連れてきた僕が言うのもなんだけれど……」


 「ええ、いいわよ。 ヤベちゃんが連れてきた子だし、信じられる。 それに、変な手を使うのをやめてくれたんでしょう? 」


 にっこり笑顔でラタスを脅す……じゃなくて微笑む母さん。 圧。


 「あ、あはは……」


 何かがばれていたというのか。 恐るべしマイマザー。 

ラタスは乾いた笑いを返した。


 「ここに住まわせるにあたって聞きたいことがあるのだけれど。 親御さんにはちゃんと許可を得ているの? 」


 「……はい。 大丈夫です。」


 ラタスは少し目を伏せて答えた。  

……いつも通り、ラタスの両親の話になるとなんとなくだが暗くなっているように感じる。


 「そう。 まあ、その辺はおいおい教えてもらうということにして今日はもう寝なさいな。 福ちゃん」


 「はい! 」


 ずっと隣の部屋で待機していたのか、呼ばれた福はすぐに母さんのもとへ駆けつけた。


 「ラタスちゃんに部屋を紹介してあげなさい」


 「ら、ラタスさんと一緒に……? 」


 あからさまに嫌な顔と反応を見せる福。 まあ、無理もないよな。 あんなにべったりとくっつかれているのだったから当然の反応だ。 そんなことを知らない母さんは、


 「ええ、そうよ」


 と、返事をするのであると。 

 確かに今まで通りのラタスなら福が現れた瞬間飛びついていく勢いだっただろう。 しかし、今はラタス風にいうと願ってもないことが、つまり居候が許可されたことに頭が追い付いていない。 


 「大丈夫だ福。 今ラタスは現状の整理ができずにぽかんとしているから。 多分何もしてこないよ」


 「……分かった。 ら、ラタスさん? 行くよー」


 「……はい」


 僕の言った通り、福に呼ばれたラタスは二つ返事でついていった。 取り敢えず、福の身の安全は確保されたわけだ。


 「じゃあ僕も風呂入って寝るよ」


 さて、一仕事終えたことだし、さっぱりして寝ますかね。 

 そんな次の行動予定を考えていると、


 「待ちなさい、ヤベちゃん」


 と招集がかかってしまった。 ……とその前に。


 「……あの、母さん。 ずっと言っているけれどそのちゃん付けやめてくれない? 」


 母さんは大体の人をちゃん付けをして呼ぶ。 それは家族にも例外ではないんだけれど……。 流石に高校生にもなって母親にちゃん付けはいい歳した高校生として恥ずかしい。 だからやめてほしいということをずっと言ってきているのだけれど。


 「あら、反抗期? いいわよ、かかってきなさい」


 こんな感じに暴力で解決しようとしてくるのだ。 ダメだろ! 暴力反対!


 「なんで初めから暴力なんだよ! 話し合いは……まあ、いいや。 それで? 」


何を言っても聞かないであろう母さんに折れ、話の先を促した。 


 「うん。 ラタスちゃんのこと、ちゃんと守りなさい」


 唐突……でもないのか。


 「……またそれ? どういうこと? 」


 「そのまんまの意味よ。 あの子はいい子よ。 ちゃんと、守りなさい」


 「うん、まあわかった。 それで聞きたいんだけれど、どうして住まわせることにしたの? 」


 「嘘を、つかなかったから。 まあ、多少はあったかもだけれどね」


 「嘘……。 と言いますと? 」


 「私を説得させるために何かしようとしたでしょう? 内容までは分からないけれど、それをやめて、直球で来たからね」


 「ふーん? 」


 魔法のことかな。 ってかやっぱり気づいていたのかよ。 


 「まあ、いいのよ。 その辺は何でも。 兎に角、ちゃんとラタスちゃんを守ること。 いいわね? 」


 「……うん、わかった」


 曖昧な返事を返す。 まあ友達だし、忘れかけていたけれど僕のことを好きになる予定の子だしね。 

 しかし、母さんとのこんな感じの会話、実は初めてではないのだ。 

 結構前に琴乃についても同じようなことをいわれていた。 幼心にも当時は誰かを助けることに、というか仮面ライダーに憧れていたのもあって大見えはって


「琴乃は僕が守る!! 」


 とか言ってたっけ。 ……恥ずかしすぎる。


 ▽


 自分の部屋に戻る途中、玄関を開けるとラタスがいた。 肘を塀にかけて暗くなった夜空をぼんやりと眺めていた。


 「あれ、先に戻ってなかったのか? 」


 「ああ、キヤベさん。 お母様との話は終わったのですね」


 「まあな。 そういえば、母さんに居候の話を持ち掛けたとき、魔法、使ったのか? 」


 「……いいえ。 確かに使おうとはしたのですけれど、結局使いませんでした」


 やはり、急に呪文のような詠唱が終わったのは全てを言い終えたからというわけではなかったようだ。 何語を話しているのか分からなかったから、もしかしたら言い終えたのかもとも思ったけれど。


 「どうして? 絶対にあんな賭けるようなことしなくても魔法を使って精神操作とか記憶操作とかした方がよかったんじゃないか」


 「全く持ってその通りなんですけれど……何故かあのとき、それはだめだと思ってしまったんです」


 「何故か……か」


 まあ、なんとなく分からなくはない。 嘘が嫌いな母さんはどこかどんな攻撃も無効化してしまうような威圧……かなんかがある感じがする。 正面から正直に言ったラタスのことを認めたということなのかな。 


 「はい、理由は分からないですけれど。 でも結局は」


 「オッケーだったわけだな。 まあよかったじゃないか」


 「……願ってもいなかったです。 本当に……安心しました」


 そう言ってラタスは本当に安堵したように肩を緩ませた。 知らない土地、世界で自分の居場所というか、安全地帯を持てるということはそれほどまでに心に余裕を持たせるものなのか……。 僕もいいことをしたと思って少しいい気分になる。


 「あの、キヤベさん」


 改まって僕のことを呼ぶラタス。 何かを伝えるような、真面目なトーン。

 僕はしっかりと答えてあげなければならないと考えて、その先を促すように返事をする。


 「んー? ってうわ! 」


 僕がラタスの方を向いた時。

 急に抱き着いてきたのだ……!!


 ……暖かい。 すごく……なんか……

 っていや、無理無理無理!! しっかりと答えるとか、むり! 驚いた僕は不真面目な声を上げてしまった。 あたふたあたふた……。


 なにも声をかけることのできない僕は、ふと気づいてしまったのだ。

 ……震えていたのだ、ラタスは。 僕の胸の中で。 

 そう言えば、どうしてラタスが別世界から来たのかまだ聞いていない。 というか、聞こうとしてもはぐらかしてくるのだ。 

 そして、ラタスの両親の話になるといつも、少し、顔が暗くなる。 別に両親を嫌っているというわけではないのだろうが……。


 ラタスの震えに冷静な考えができるようになる。

 ……最低だ、僕。 目の前の少女は悪魔。 その前に、あくまでも少女。 見知らぬ土地で怖いはずなのに……悪く言うと色恋というか、欲情というか……そういう煩悩的なことに振り回されていたのだ。 

 真面目にやれ、僕。

 そんな決意を新たにして、僕は頭を軽くなでる。 こ、こんな状況初めてだから何をすればよいのか分からないから、こんなことしかできなかった。

 震えていたラタスは少しおさまっていた。 そして顔を上げずに言う。


 「ボクを信じてくれて、ここに住まわせてくれてありがとうございます。 それと」


 パッと顔を上げる。 

僕の今、映る世界には。 ラタスがいるのだ。 涙を少し含ませた、きれいな瞳で。 極めつけに、僕はさきほどからラタスの頭をなでていたため、頭の上には僕の掌。 

そして、すべての悪霊を浄化させんとする笑顔で言う。


 「これからよろしくお願いしますね」


 ……これは不意打ち過ぎる。 この先、しっかりできるのか……僕?


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