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過ぎてゆく日々が始まりの世界で  作者: でつるつた
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第十一話 同居

 

 「は? あの、もう一度言ってくれるかな? 」


 聞き間違えですかね。 一緒にす……


 「あなたと一緒に住む場所を下さい!! 」


 聞き間違えではなかったです。 いや、


 「なんでだよ! もっとこう、寿命とか命とかじゃないのか!? 」


 悪魔らしい要求をしてくるかと思いきやまさかの同居の要求だと。 


 「なんですか、その物騒な要求は……? そんなものもらったところでなんの利益にもなりませんよ」


 と、少しひかれた。 悪魔にひかれるってそんなことあるのか。


 「……それにしたってどうして僕と君が一緒に住まなければならないの? それこそ何の利益にもならないでしょ」


 僕は違うけれど。 とは言えるはずもないので心の中にしまっておいた。 悪魔と言えど容姿端麗。 それにマンガ好きな僕からすると最高のシチュエーションではないか。 こんなこと本当にあるのだな。 しかし、ラタスの言い方からするともし僕とラタスとが一緒に生活をすればそれはラタスにとって利益のあることになるらしい。 なんだろうか。 やっぱり、寿命? 怖いな。


 「……? ボクの願い、あなた聞きましたよね? 」


 ラタスは不思議そうにそういった。 ボクの願い……? ラタスの願いって、あ。 


 「僕を惚れさせるってやつか? 」


 「はい!! そうするためには日ごろから一緒に行動するのが一番だと考えています」


 にこにこ、となんてことを話すのだろうこの小悪魔は。 日ごろから一緒に行動だと? ダメだ、僕が持たない。 いい意味で。 

 しかしここはひとりの男として。 そう簡単にはホイホイとついていくような僕ではない。 勿論魅力的(いろんな意味で)な提案ではあるがここでひとつの、当然の疑問が湧く。


 「つ、つまり……君は……ラタスは僕のことが好きってこと? 」


 もじもじと尋ねる僕。 ひとりの男、どうした。 でも、言っていることは正しいと思う。 僕のことを惚れさせようと、落とそうとしているということは、ラタスは僕のことが好きだということが大前提になければならない。 果たして答えは、


 「いえ、全然」


 泣きそう。 ひとりの男がもう壊れそう。 流石に知り合って間もない間柄だったのでその場で崩れ落ちはしないが、容姿端麗の子に『あなたのこと、ぜんっぜん好きじゃありません。 なにうぬぼれているんですか』(逆思い出補正あり)と真正面に、言われると死にそうになるのもまた当然。 恥ずかしすぎて消えたい。 


 「で、ですよねー。 ですが、そうでありましたら、如何なる理由で私のようなカスを落とそうとしていらっしゃるのでしょうか」


 必死に言葉を繋いだら何故か敬語になってしまった。 ここでまた後悔。 どうして質問をしてしまったのだろう、と。 また辛辣な、でもって本人にはなんの悪気もない答えが返ってきたらどうしよう。 もう落とされるかもしれない。 物理的に。 果たして、ラタスの答えは、


 「ボク、恋というものをしてみたいんです」


 というものだった。 彼女の表情は笑ってはいるもののどうしてだろうか、どこか悲しみが見て取れる。 とても可愛い……あ。 なるほど。 ラタスと出会ってから、時々ラタスのことを眩しすぎて直視できなくなることが度々あったが……。 今気づいたが、あのときは彼女を彼だと勘違いしていたからの感情で、あれは可愛いという感情だったのか。 という、一応シリアスな、重要そうな場面にも関わらず本能のまま動く僕。 流石だ。 もう何に引っかかっていたのかも忘れてしまった。


 「それで、僕を落とそうと思ったのか? 好きでもない僕を? 」


 馬鹿野郎、僕。 なんで嫌味っぽくいってしまったんだ。 いいじゃないか。 こんなこと何回転生しても起こらないシチュエーションなのに! 素直に受け取っておけ!


 「あ、誤解しないでくださいね。 あなたのこと嫌いってわけではないですよ。 ただボク、誰かに恋をするっていう感覚が分からないんです。 だから、ボクから相手を落としにかかれば何か変わるかなって思ってこの世界に来たんです」


 と、僕の嫌味っぽく言った言葉に対するフォローをしてくれたラタス。 ありがとう。 立ち直れるよ。 

 しかし、恋を知るためにわざわざこの世界に来たのか。 それだけの理由で? と言ったら本人は起こるだろうか。 あっちの世界では相手はいなかったのだろうか。 容姿端麗な彼女だ。 男も引く手あまただったろうに。 そもそもなぜ恋をしたいのか。 疑問は尽きるところを知らない。


 「というわけで、一緒に住ませてください! 」


 正直どういうわけかは分からないが、家がないのは本当だろう。 いつ頃からこの世界に来たのかは分からないが、話し方から昨日今日の口ぶりだったし、悪魔で魔法が使えたとしても一人の少女。 夜外でひとりで寝させるわけにはいかない。 それになんといってもこのシチュエーション、最高ではないか! 一緒に住みたい!! 


 「……分かった。 取り敢えず母さんに掛け合ってみるよ。 まだ君のことよく知らないし、どういう事情でどうしてここに来たのか……とかね、今後話してもらうよ」


 おそらく僕の母さんは心が広いから承諾してくれるだろう。 でも、ラタスのいた世界の、ラタスの両親はどうしているのだろうか。 ラタスは『一緒に住ませてください! 』 と言っていた。 それはつまり、あちらの世界には当分帰らないということだろう。 それをラタスの両親は許しているのだろうか。 家出、だったりするのかな。 そのもろもろも、今後はっきりさせていこう。


 「ありがとうございます!! それでは行きましょう。 善は急げです! 」


 流石の僕もここまで非日常な出来事が起きたのなら、未来に期待をせざるを得ない。 そんな僕たちは、この先あんなことが起こるなんて思いもしなかった……なんて呟いてみたいと思うのも仕方がないだろう? ……すみません、そうつぶやかせてください。 お願いします。

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