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14 お肉さん

「あ! あれがアレなんで……ってことは、あっちがアレで……えーっと……うんうん。てことは、アレですね。フムフム。なるほど、分かりました!」

6本の大木を支えに建てられた立派なログハウスから周りを見回し、1人でうなずくチョロ。


「リュータさん、分かりました! 王国はあっちです!」

後ろを振り返ると、ジュージューと肉を焼いているリュータがいた。

その目はかつてないほど真剣だ。

「リュータさん! 分かりましたよ!」

「もう少しや……まだ返したらアカン」

ブツブツ言いながら肉を睨みつけるリュータ。

「リュータさーん? 聞いてます?」

「もうすぐお肉さんの声が聞こえるはずや!」

箸を勇ましく構えるリュータ。

「ねえ、ちょっとリュ」

「ここやー!」

分厚い肉をくるりとひっくり返すリュータ。

「この焦げ目、肉の弾力……カンペキや!」

ータさん?という言葉と一緒に、立ち込める匂いにダバダバ湧いてくる唾を飲み込んだチョロの右手が宙ぶらりんで止まる。


「おいしそうですね!」

飛び付くチョロ。


――チュイン!――

「!!」

空気を切り裂く音がチョロの耳元をかすめる。

一息遅れて腰が抜ける。


「僕のお肉さんを狙うヤツは何人たりとも許さへん」

しゅーっとオーラを立ち昇らせたリュータか何かを投げたフォロースルーの姿勢のまま、殺気のこもった声を出す。

手に持っていたはずの箸が無くなっている。

「な、何を……?」

腰を抜かしたまま、情けない声を出すチョロ。

しかし、リュータの目はもう肉に戻っている。

チョロはログハウスの隅っこにコソコソと移動すると、しっぽをお腹に抱え込んで必死に息を殺した。



◆◆◆◆◆◆



「ん? チョロさん何してはるんです?」

焼けたお肉を炊きたてご飯の上に載せたリュータが、隅っこで小さくなっているチョロに声をかける。

「!!」

ビクッとするチョロ。


「どないしましてん? 冷める前に食べましょう?」

『おにく〜にっくにく〜』と鼻歌を歌ってご機嫌のリュータ。

「こ、殺されませんか?」

「なんですの? その物騒な話は??」

首を捻るリュータ。

『大丈夫っぽいな…』と、チョロがつぶやく。


「さあ!じゃあ食べましょう!」

しっぽをブンブン振りながら元気よく立ち上がった。



◆◆◆◆◆◆



「いやー、美味しいもんですね」

「こんなに美味しいとは思いませんでしたね!」

リュータの作ったステーキ丼に舌鼓を打つ2人。


ログハウスを建てた後、『絶対に肉!』とチョロが譲らず、しかし干し肉しかないので、『やってみよう』ということで、狩りに初めて挑戦した2人だった。


森を進むこと5分。

「牛や!」

チョロの鼻が獲物の匂いを見つけるより先に、リュータが静かに叫ぶ。

「え?どこですか?」

「ほら、あの赤い木の実が付いてる木の下ですよ」

「赤い木の実?」

ほらほら、と指さすリュータと、目印すら見つけられないチョロ。


「この距離やったらいけるでしょ」

言うなり、足元に転がっていた拳大の石を拾うリュータ。

「何するんです?」

「チョロさん、離れてて下さいね」

「まさか?」

疑うチョロの横でリュータがトトトっと助走を付ける。

―――フィイイイン―――

甲高い音とともに、石を握ったリュータの腕が消える。


――バキバキィッ――

遠くで木がへし折れる。


「イケたんちゃいますかね?」

トコトコと進むリュータに続くこと少し……。

「な!なんですか!? これは!?」

驚愕するチョロ。

そこには、 チョロ6人分ぐらいありそうな巨大や牛が4つの足でしっかり地面を踏みしめたまま絶命していた。


「ここに?」

近付いてよく見ると、牛の太い首に拳大の穴が空いている。

穴の周りは鋭利な刃物で切り取ったようだ。

血が吹き出ていないのを不思議に思ってよくよく見てみると、滑らかな切り口が焦げて塞がっている。


更に、穴を覗いて見える向こうで数本の木が折れており、折れた木の向こうにある大木にリュータがさっき拾ったと思しき石が半ばまでめり込んでいる。


「立派な牛さんやね! 食べ応え満載さんや!」

わーいと気楽に喜ぶリュータ。

慣れた感じで首を落とす。

思い出したように元気よく血が吹き出る。

アネゴとやった時のように、木につるし上げ血抜きをする。


「……」

「……暗くなりますね」

「……血が止まりませんね」

が、時間が掛かるので、リュータは牛の後脚を抱えると、グルングルンとジャイアントスイングをした。

遠心分離機よろしく、牛から血が巻き散らかされる。



「そしたら、捌いて、焼いて食べましょう! 牛さんや、牛さん!」

わーいと無邪気に喜ぶリュータの隣で、チョロも考えるのを止めて一緒に喜ぶことにした。




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