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13 どうやるさはさっぱり分かりませんが、上手にやってください。

チョロの理解を得たので、一路山頂を目指すことになった。


テントなど鎧を入れたせいではみ出したものはリュックに括り付ける。

「そしたら、行きましょう」

『よっこいしょ』とリュックを担ぐ。

「………」

呆然とするチョロ。

「だ、大丈夫なんですか!?」

「ん? ああこれですか? これはソンギリスズメのツヅラを使ってますから、めちゃくちゃ頑丈なんで大丈夫ですよ」

ソンギリスズメは体長6m以上になる巨大な怪鳥モンスターで、背中に巨大な袋を背負っている。

この袋をツヅラという。


「いや、え? いや、鞄じゃなくてって、よく考えたら鞄もですけど、違って、その鞄を持つのがですよ!」

「ええ、まあまあ重いですけど。全力疾走するわけでなし、なんとでもなります。行きましょう」



◆◆◆◆◆◆



「大丈夫ですか?」

「大丈夫です」

「それならええんですが」


言いながら歩く速さを少し落とすリュータ。


右手に鉈、左手に鎌。

鉈でバッサバッサと道を遮る枝を切り捨て、鎌でズバズバと下生えを刈払い道無き道を道にしながらも、サクサク進むリュータ。

リュータの拓いた道を必死に追いかけるチョロ。



◆◆◆◆◆◆



「大丈夫ですか?」

「だ、だいじょうぶです……」

「それならええんですが……休憩しましょうか?」

「わ、私は手ブラですから…。リュータさんより先にバテるワケには……ハァハァ」

「はぁ、まあ、無理せんと言ってくださいね」

言いながら歩く速さを更に落とすリュータ。


軽い足取りで進むリュータ。

精一杯追いかけるチョロ。



◆◆◆◆◆◆



「大丈夫ですか?」

「でゃ、だいじょうびゅで…だふぇ……」

「大丈夫に見えないんですが? なんやったらおぶりましょか?」

「こふぇ、こふぇ…ふぇーふぇー、こふぇ以上、負担になるわけに…」

「せめて休んだ方が?」

「おぎぃ、ブェフェ、ブェフェ」

咳き込むチョロ。

「お気遣いなく……」

「……」



◆◆◆◆◆◆



「最初にからこうしてれば良かったんですね!」

「そうですか」

「ええ! これなら見晴らしがいいですので、知ってる場所も分かりやすいですしね」

「さよですか」

リュータの歩く速度に合わせて、しっぽをフリフリしながら、元気になったチョロはご機嫌だ。


リュータのリュックサックの上に上手に椅子を括りつけ、その上にちょこんと座っている。

左手にジュースの入った水筒を持って、当たりをキョロキョロしている。


「あ! あれは何のお花でしょうね?」

「へえ、あんな所に小川が」

「鳥さんは楽そうでいいですねぇ」

「暑いですね」

「思ったより揺れる」

「ジュースが無くなった!」

「あの果物っぽいのは食べれるんでしょうか?」

と、地理を確認するという自分の任務を誠実にこなすチョロだった。



◆◆◆◆◆◆



「そろそろ日が傾きますね」

「夕日がキレイだといいですね」

「日が落ちる前に、休む所を決めましょう」

「私は全然大丈夫ですから、お気遣いは必要ありませんよ?」

「……まあまあ元気なのはええことですよ」

「あ、でも確かにお腹が空いてきましたね! ご飯が食べたいです!」

「……元気で何よりです」

「お昼は簡単に済ませちゃいましたからね、夜はガッツリいきたいですね! 肉がいいです!肉が!」

「……お肉って狩るんですか?」

「は? 嫌だなーリュータさん!人が悪い。そんなの私に出来るわけないじゃないですか!」

「ですよね…」



◆◆◆◆◆◆



「何してるんです?」

「何って、休むとこ作らなあきませんやん」

バサバサとレジャーシートを広げるリュータ。

「ダメですよ!」

怒るチョロ。

「こんな深い森の中で、そんなピクニックみたいなことしたら危ないです! 猛獣だっているかもしれないんですよ!?」

「そら、そうですが」

「『そうですが』じゃないですよ! こんな所でお肉焼いたら、襲って下さいって言ってるようなもんですよ!」

「じゃあ、どないするんです?」

「知りませんよ! 分かりませんけど、それはダメです!」

「……」

「あ! そうだ! 木の上に寝る所を作ればいいんじゃないですか? 木の上なら安全です!」

「木の上?」

生い茂る木を見上げるリュータ。

「あの上に?」

「安全ですよ?」

「どうやって?」

「さあ? 私は知りません」

「……」

「でも、やってみないと分からないじゃないですか! どうやるかはさっぱり分かりませんが、上手にやってみて下さい!」



◆◆◆◆◆◆



「なんか、凄い雰囲気の斧ですね?」

「ちっこいですけど、いい斧やと思いますよ? 街で暮らすことになった時に、餞別に貰ったヤツなんで」

「へぇー」

リュータが取り出したのは、片手でも楽に取り回せる程の小さな斧だった。

それもそのはずで、本来は投げて使うものだ。

小ぶりながら刃の放つ光が重い。

迫力が凄まじく、素人目に見ても尋常な代物じゃないのが分かる。


「この辺でいってみましょか?」

言うなり手近な木に向かって斧を振り下ろす。

――ビシィッ!!――

鋭い音を上げて、斧が木の半分程に斜めに食い込む。

「今度はこっちから……」

――ビシィッ!!――

反対に回って、同じように斧を振り下ろす。

木にVの字状の切り込みが入る。

「そいで……」

木を抱えると、ヒョイっと持ち上げる。

「こうして……」

そのまま、そっと横に倒す。

「最後に……」

鉈に持ち変えると、バナナの皮でも剥くようにバサバサと枝を落としていく。

「こんなんですかね?」

ものの1分ほどで丸太が出来上がった。

「こんなんでも30本ぐらい用意したらなんかできるでしょう」

疲れた様子の欠片も見せず、リュータは斧を振るった。



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