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12 せーの!

「改めて、ここから、どないしましょうね?」

朝ごはんを食べて、コーヒーを飲んで仕切り直す。

「山を登りましょう」

「山?」

「はい。この山です」

後ろの山を指さす。

「ここがどこか分かりません。高い所に登ればアテがつくかもしれません」

「なるほど。この川がモタロー川かスンボシ川かも分かりませんしね」


カニドンとサルドンの間にある山をゴハンモリ山という。リュータが街道を逸れて入った山だ。

そのゴハンモリ山から流れる2つの川がモタロー川とスンボシ川。

流れ着く先が全く反対なので、どっちの川に落ちたかによって向かう方が変わる。


「山やなしに川を遡ったらええんちゃいます?」

「結構、落ちましたからね。登れる場所があるか分かりませんし。それに山の麓側ならワタシが分かるかと思います。国の近くですので」

「なるほど、そしたら登りましょう」

頷くなり、サクサクと荷物を片付けるリュータ。

デカいリュックにポイポイと詰めていく。


「ん?どないしましたん?」

チョロが下を見て固まっている。

視線の先には、昨日外した鎧が転がっている。

「ああ、それ」

「………」

「どないしましてん?」

「……壊れたんです」

「そうですね」

「……壊れた魔械鎧は重いだけなんです」

「そのようですね」

「……どうしましょう……」

「何がですのん?」

「放置できないんですよ!」

「持っていったらよろしいやん?」

「持てないから困ってるんですよ!」

目をパチパチするリュータ。


「持てますよ?」

「どうやって! こんなもの持ってたら動けませんよ! ほら!せーの!」

ブーツ状のパーツを両手でうーんと持ち上げる。


「いや、普通に」

言いながら鎧に近付く。

『えーっと……』と言いながら、鎧の形状を確認するリュータ。

『ゴツゴツしててまとめにくいな、こら』と確認するリュータ。


リュックの中身を空けて、クッション材を取り出す。

「こっちかな? いや、こっちやろ」

「………」

「これは、ここに入れ……入らへん。こっちか」

チョロが両手でやっとこさ持ち上がる鎧をひょいひょい動かす。

「……怪物?」

「ただの異世界人です」

言いながらリュックに鎧を詰めていく。

鎧をしまい終わると、荷物を戻す。


「ちょ、ちょっと!! それはなんですか!?」

なんでこんなものまで、というぐらい充実した荷物の山に唖然としていたチョロが慌てた声を出す。

「ん? なんですの?」

まったりと振り向くリュータ。

「い、いや、それ! ソレです!ソレ!」

泡を食っている。

「これ? これはただのランタンですけど?」

「違う! 違います! その四角い人形!」


その震える指が差したのは、ロボットの人形、カイゼルハウゼルマークⅣだった。


「これですか? これはカイゼルハウゼルマークⅣですよ」

「か、カイゼ? いや、そんな名前じゃなくて、それ自体です! なんでそんなとんでもないものが!?」

「とんでもない? しょーもないオモチャですよ? ほら、言うたやないですが、召喚された時に、神具とか言うて手に入ったけど、何するもんかようわからんで終わったって」

「わか!? 分からないって!? 何言ってるんですか!? ぶっ飛ばしますよ!?」

遂に怒り出すチョロ。


「いやー、せやかて誰も分かりませんでしたもん」

困るリュータ。

「みみみ見せていただいても、よよよろしいですか?」

「どうぞ」

ポイっと投げるリュータ。

「ぎゃああ!」

慌てるチョロ。

物凄い宝物を持つように両手でがっちり抱える。

「ゴクリ」

唾を飲み込む音まで喋って、カイゼルハウゼルマークⅣを見る。


「…………す、すごい………」

リュータにはさっぱり分からない理由で怯むチョロ。

「……こんなものが……この世に……」

気にはなるけど、チョロが自分の世界に入ったっぽいので、とりあえず片付けを優先するリュータ。


「そいで、それはなんですのん?」

しまう荷物がカイゼルハウゼルマークⅣだけになったリュータが未だに感心しっぱなしのチョロに声を掛ける。


「え、ええ。これは、魔械導力(マガギンコア)です。それも伝説級の!」

「マガギンコア?」

「そうです!」

ふんすっ!と拳を握るチョロ。

「へぇー??」

しかし、その感動は一欠片もリュータには届かない。


「いや、とんでもない魔械導力ですよ! こんなの空想上の産物にしてもイレギュラーです! あったらいいなこんな魔械導力って想像できる人がいたとしたら、それだけで天才なレベルです!」

「へぇー??」

「なんなんですか!? その気の抜けたリアクションは!?」

ガンガンと足を踏み鳴らすチョロ。


この後、通じないやり取りがしばらく続いた。


「つまり、このカイゼルハウゼルマークⅣは、あの鎧とかに使う動力源みたいなもんやってことですね」

根気強いやり取りの結果、なんかそんなもんらしいという答えを聞き出したリュータだった。


本質的な意味は分かってないが。


「そうです!このサイズでこれだけの機能を持っているなんて……見てください! ここにあるのはナンジヤ回路と、ホワツツ回路の複合回路です! これだけで今の技術体系の100年先は進んでます!」

「ふーん……なんかすごいんですね」

これがリュータの精一杯だった。


伝わらなさというか、リュータのリアクションの薄さが不満なチョロ。


「と、とりあえず、とりあえずチョロさんの国を目指しましょう!」

また爆発しそうなチョロの気配を察して、先手を打って提案するリュータ。

「え?」

パーっと笑顔になるチョロ。


「カイゼルハウゼルマークⅣがすごいとしても、とにかくここにおったらただの人形でしかないんですから、兎にも角にも、お家に帰ることを優先しましょう!」

「え! いいんですか! いただいても!?」

なんか喜ぶチョロ。


「いや、あげられませんよ。無いと僕の生活が困るんで」

「………」

なんか落ち込むチョロ。


「あげられませんけど、なんか役に立つ手段があるなら、調べた方がいいとは思うんで、とりあえず調べられる場所に行きましょう」


何でもいいから、早く進みたいリュータだった。



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