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6

 ヒーラギはローザン殿下にかなり嫌われている。


 初めはこちらから歩み寄ろうとしたが、お茶会でも、舞踏会のエスコートのときでさえ一言も話さず、目もあわせない。


 そんなローザン殿下が口を開けば冷たい言葉、暴言ばかりだから、ヒーラギも好きにはなれなかった。


『また、騎士団の遠征について行けと言うのですか? ローザン殿下はどうなさるのですか?』


『僕は私用があってな。君は聖女だ、一人でも多くの人を助けたいだろう? 気を付けて行って来るがいい』


 十六歳になり、ヒーラギは知ったのだ。

 騎士達が命をかけて魔物と戦うなか、殿下は他の令嬢を茶会に招待して、のほほんと王城で過ごしていたことを……。


 そしてヒーラギを毎回、騎士団との遠征に行かせる殿下の魂胆も知った。殿下は遠征で、ヒーラギが魔物に襲われ怪我をすればいいと思っていたと。殿下の専属メイド達の世間話から知った。


 遠征から騎士達と無事に王城に戻り、宴の舞踏会でヒーラギが陛下、王妃、貴族達に賛辞を述べられると嫉妬して睨みつけ。決まってローザン殿下は『断じて、お前の力のおかげではない!』と、ヒーラギにいい放った。


 聖女の力でヒーラギが活躍すればするほど、ローザン殿下は舞踏会でダンス中に足を引っ掛け、庭園で散歩途中に突き飛ばすなどのイジメをしてきた。また遊びだと言って、笑いながら真剣を向けられたこともあった。


 逃げたくても騎士に見張られていて、逃げられない。そんなとき、異世界からアカリがこの国にやってとやって来た。すぐ綺麗な黒髪の可憐なアリカに、ローザン殿下は夢中になる。


『聖女アリカにも、ヒーラギと同じく癒しの力があった、カザール国に聖女は二人もいらぬ』


『ヒーラギさん、あとは本物の聖女のあたしがやるから。あなたは出ていってもいいし。どうしてもと言うのなら、ここに残ってもいいわ』


『いいえ、後のことはホンモノの聖女様にお任せいたします』


 聖女としての役目は終わった……こんな場所から出ていける。少しずつ荷物をまとめて、書庫で必要な本を借りメモにとり、着々と出立の準備を始めた。


 新聖女としての、アカリのお披露目の舞踏会。ローザン殿下に『お前とは婚約破棄だ!』と言われたとき、余りの嬉しさに小躍りしそうだった。


 だけど、これは表向きの発表で。その裏ではまだ利用価値があるとして。ヒーラギをどうにか引き止めようとする、力が動き始めている事を知っていた。


(ヤツらに捕まりたくない)


 ヒーラギは婚約破棄の後に黒のレースで顔を隠し、準備していた荷物を持って、城から姿を消したのだった。

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