表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/38

4

 サンドリア伯爵領にどんな傷でも癒やす、娘がいるという噂は王都にまで届く。


 王都では5年前に亡くなった大聖女が張った、国土を覆う結界が薄くなっていた。まわりの森に瘴気が溢れ、魔物化した魔物が増えてきていたのだ。


『ようやく新しい聖女が生まれた』


 噂を知った国王陛下は聖職者たちに命令した「なんとしてもその娘を、新聖女として迎え入れろ!」と。


 命令を受けた聖職者たちはサンドリア伯爵領まで訪れ、国に聖女が必要だと両親を説得した。金のなる木がいなくなると渋る両親に、聖職者は一生遊んで暮らせるだけのお金を見せた。 

 

 あまりの金額の多さに両親は喜び、国王陛下の頼みなら仕方がない。


『ヒーラギ、国の為に祈りなさい』


 陛下はすぐ、新聖女がカザールに誕生したと国民に知らせ、聖女としてヒーラギを王城の離れに住まわせた。




 聖女となったヒーラギは早朝五時に「聖女様、お祈りの時間です」と起こされ。5年前に亡くなった大聖女様が行っていた、毎朝五時から祭壇で祈りを一時間。昼に二時間。夜に一時間、カザールのために祈りを捧げさせた。


 祈りを捧げるとは。大聖女が張った国土を覆う結界を補強する。そんな大それた事を、ヒーラギは出来ないと言ったが、無理やりやらされ、不思議にも出来てしまった。


 それを見ていた聖職者達は『これで国は守られる』も喜んだ。


 それから毎日、祈りを捧げないと食事が貰えず、少しでも寝坊をすれば、引きずられて祭壇に座らされた。彼らは両親のように暴力は振るわなかったが、祈りは強要させられた。


 それには訳があった。

 1つは、森の動物達の魔物化。


 それともう1つ、カザールの近辺には魔王が収める、ジュストラルクという魔族の国があった。古代歴史書によれば300年前に勇者が仲間と魔王を倒して、ジュストラルク国は滅びたと記されている。


 魔王がいないと安心したのも束の間――最近、新しく魔王が誕生したらしく、静かだったジュストラルク国は勢力を増した。この国の平穏な日常が終わる。


 魔族たちは瘴気を放ち、隣接するズロー森の森を超えて、カザールに攻めてきた。魔王におびえた国王陛下は「聖女様のお力を、我々にお貸しください」と、当時12歳になったばかりのヒーラギに願った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ