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「これからは自由だわ~!」


 と、ヒーラギは背伸びをした。あんな窮屈で、酷いことばかり言われる城にいなくていいなんて、幸せすぎる。


 ヒーラギは畑ばかりの馬車道を見て、キリのいいところまで散歩して、どこかの街で相乗り馬車を見つけて、目的地の別荘の近くまで乗ろうと決めた。



 

 のんびり馬車道を歩くヒーラギは、昨日までカザール国の元聖女だった。――しかし、なんの変哲もない伯爵令嬢のヒーラギが、なぜ聖女に選ばれたのかと言うと。


 それはヒーラギが8歳のとき、大怪我を負った弟のキズを、不思議な力で治したのだ。

 

 みんなが大怪我をした弟の、ケガが治ったと喜ぶなか、両親は金になると大喜びした。――そして舌の根が乾かぬうちに「うちの子に、神から奇跡の力を授かった」と、招待された社交界に片っ端から出向き、私の自慢話を貴族達にしてまわった。


 その噂は小さな領地から。

 一瞬に国中へと広がる。


 話を聞いた人々は五年前に亡くなった、大聖女様の後継者が生まれたと。この国に新しい聖女が国に誕生したと喜び。国中から、その奇跡の力を求めて、伯爵家の領地へと人々が押し寄せた。


 当時8歳のヒーラギは毎日、朝から晩まで癒しの力を使うのは、体力的に困難だった。「体調が悪くて無理です」と両親に伝えても、話をちっとも聞き入れてくれず。

 

『ヒーラギ、癒やして差し上げなさい』

『癒しは貴女しかできないのよ』

『こんなに、素晴らしい力は使わなくてはね』


 と、両親は言うのだった。

 

 子供のヒーラギが無理だと伝えても「なぜ出来ない」と叱られ、叩かれた。


 ヒーラギは人が変わってしまった両親が怖くて「……はい」と言うしかなく、言われるまま、訪れた人の怪我を治した。後で知った話なのだけど、なんと両親は治療のお礼として金品、お金、宝飾品、鉱山まで受け取っていた。


 娘の奇跡の力で、多額の金が手に入ると分かった両親は癒す対象を金持ち、貴族にして、癒しの力が必要だが、お金のない者は非情にも追い返していた。

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