プロローグ
ここはローソルト大陸にある、緑豊かな小さなカザール国。
今から数百年前、この国の近隣に濃い瘴気が発生するズローの森があった。その森に住む動物達は、森で発生した瘴気にあたり次々と魔物化した。
魔物化した魔物はズローの森を抜け、カザールの国民を襲いはじめる。その場所から命からがら、逃げ延びた人々は空にむけて祈った。
『お助け下さい!』
『神よ、我々をお助けください』
『神様、お願いします』
その願いを神は聞き入れ。のち、神に選ばれし聖女が誕生した。その神に選ばれた聖女の祈りはカザールの国土を覆う結界を張り。魔物達から守ったと逸話が残る。
魔物がはびこるカザール。前聖女が亡くなった後に聖女として選ばれ、10年ものあいだ祈りを捧げた聖女。その聖女のおかげで、国民たちは魔物に襲われずに済んでいた。
聖女の力で平和なカザールに数ヶ月前。艶やかな長い黒髪、黒い瞳を持った女性が異界から現れる。その異界の女性は麗しい見た目と、聖女と同じ癒しの力を持っていた。
『おぉ神が異界より、新たな聖女を送りくださった』
異界からきた、新しい聖女に人々は歓喜した。そしてーー常日頃、現聖女が気に食わないカザールの王子、ローザンは異界から来た少女に恋をして、邪魔な現聖女を追い出そうと考えた。
本日開催された現聖女10周年を祝う舞踏会で王子、ローザン・カザールは新聖女と呼ばれるアリカを連れて、この舞踏会の会場へと悠々とあらわれた。
そして今現聖女の私、ヒーラギ・サヘーラに指をさして。
「いいか、よく聞けヒーラギ嬢! 長年の聖女活動ご苦労だった……だが、我が国にも新しい聖女が現れた。貴女の聖女の力はこの国には必要なくなったのだ……僕と婚約を破棄してもらおう!」
と、婚約破棄を告げたのだった。
「ローザン殿下、それは本当なのですか?」
「本当だ!」
婚約者からの確信の言葉をもらい、少しだけ口に笑みを浮かべ、深々と頭を下げる。
「……謹んで、婚約破棄を受けたわまります」
そう告げて、聖女10周年を祝う舞踏会の会場を後にした。




