第1街人
ふと目に入ったパン屋の中に入る。
本当は色々な物を見たいところだが今日の所はパンで適当にお腹を満たそうと考えた。
店に入れば人目も大きく減る。
店内は8m×8mくらいの大きさで学校の教室あたりの広さだろうか、そこの壁に設置された台やテーブルに置かれたカゴなどにパンが入れられていた。
やはり現代と比べると見た目も種類も劣るが、これはこれで美味しそうな物だ。
店内には焦げ茶の短髪の少し高そうなマントをした男性が1人と、パンを並べていた茶髪の若い女性だけだった。
ツバサが入店し、二人は何気なくそちらを見たつもりだったのだろうがすぐに驚きの表示に変わる。
「…………ふんふーん…」
その視線に気づいていないふりをしてパンを見る。
が、
「お前、珍しい髪色をしているな。よそ者か?」
気づいたらツバサの後ろに立っており、話しかけてきた。
「えっ……ええ、まぁそんな所です」
よく見ると物凄く顔が良く絶対にモテるだろうな、とひと目でわかるような印象。
服装はマントで隠れていたが少し身なりがいい感じがあり、剣も持っている。
先程城があったので騎士というものなのかもしれない。
「とても美しい黒髪だな。この国では黒髪は大変珍しいのでつい声をかけてしまったのだ。気を悪くしたならすまない」
「い、いえ…」
どうやら良い人そうだが先程まで話していた若い娘が少しむくれているのが見える。
珍しいのはわかったので彼女の相手をするのを再開してはどうだろうか、とツバサは思う。
「しかしこの店に目をつけたのは幸運だったな、ここのパン屋はとても美味い。どれにするか迷っているのなら私が進めるものを食べてはどうかな?」