新しい生活
ツバサは外を見に行こうと白い布と赤い布で作られたワンピースに着替えた。
「ある意味では私たちの着ていた服よりも可愛いんじゃないかしら」
体を左右に振ってスカートを揺らすと上機嫌に支度をする。
今晩のご飯を購入する準備を始めようとして机を見るとそこには紫色の布で作られた包みがある。
「何かしら・・・あっ、もしかしてこれはお金ね」
包みには15枚の金色に輝くコインが入っていた。初期装備でも買えということなのだろうか。
一先ずどれだけのお金の価値なのかわからないしカバンも無いので包みを手に外へ出ることにした。
玄関のフックにかけてあった鍵を手にして扉を開ける。
「わあ・・・いい天気ね・・・」
空は自分のいた世界となんら変わりはなかった。しかし街の地面は石畳、家のデザインも造りも違い、遠くには大きな白が見えた。
「本当に私は死んで別の世界に来たのね・・・」
少し寂し気に呟くとウォード錠で施錠した。
ここから新しい生活と新しい自分の人生が始まる。しかもこの世界では勇者と呼ばれている存在。
責任の重さにツバサは不安を抱えながらも一歩踏み出した。
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どうやら自分の家は少し人の多いところから外れていた所だったようで、ちらほらいる人の流れについていくと市場についた。
「おお・・・」
路面店には沢山の人が入交り、忙しそうに売り買いしていた。
そこにいた人々はツバサの存在に気が付くとツバサをじっと見る。
ツバサは歩いているときから気づいていたのだが、人々は茶系や赤の髪が多くごくまれに金髪の人がいるくらいで恐らくツバサの黒髪くて長い髪が珍しいのだ。
生前?でも容姿のおかげで振り返られることは多く、ナンパに合うことは多かったがここでは「す、すごい人だ」となってしまっている様子だった。
「食べる物と水を運ぶバケツ・・・それと顔と髪を隠すマントのようなものが必要ね・・・」
これは歌の前に生活の工面が大変ね、そう考えるツバサだった。