似姿
ツバサは用意された家にあった魔術の本を読みだした。
が。
「流石に喉がかわいたわね…」
パンも魔物の襲来によりいつの間にか泣くなっており、蛇口という文化もなさそうで水もどこかで入手しなければいけない。
「でもまた黒髪だからといって声をかけられては面倒だわ…。何か良い方法は…」
椅子に深く腰をかけて天上を見上げて考えていたツバサだがはっと思いつく。
そうこの世界には魔法(自分は使えないが)と魔術がある!
ツバサは「自身の肉体」と書いてある本をパラパラとめくると興味深い物があった。
「まだ死んだばかりの人の姿になる…」
説明には『死んだばかりの人間を見るとその姿を真似することができる。術者は下記の印を書いた魔法陣の中心に立ち血をたらす。代償として数時間毎に■■■を■失い、一定位以上の痛みを伴う殴打や外傷を受けると元の姿に戻る。他の魔術との併用ができない。』
一部読めないところがあるが、なんとなくツバサは理解した。
しかし、死んだばかりの人となると先ほどの女性に該当するのだ。
気持ちが悪い上に都合よく姿を借りるのはとても気が引けた。
「でもこのままじゃあの魔物に殺される前に餓死するわ…。ごめんなさい名前も知らない女のひと・・・」
背に腹は代えられない。ツバサは自分に言い聞かせ椅子から立ち上がる。
書くものは無いかと見渡すと机の上のペン立てに一本の白いチョークが入っていた。
「ここにこれがあって…うーんややこしいわね…」
部屋の真ん中がそこそこ広かったので本を見ながら地面に模写をしていた。
複雑な物だったので少し時間が取られたが何とか完成させると本をチョークを机の上に置く。
キッチンに置いてあった料理セットからナイフを持ってくると緊張しながら魔法陣の上に立つ。
「こう・・・妹が見てたマンガか何かでこういう場面だと指を切っていたわね。…まさかアレを自分がすることになるなんて笑えるわね」
緊張で震える手でゆっくりと指を切った。
痛みが走り少し身を震わせるとその振動で溢れてきていた血が魔法陣の書かれた床に滴り落ちる。
「!!」
血が床に落ちた瞬間魔法陣は浮き上がり、ツバサを包むようにまとわりつく…。
挿絵のようなものがあったらみなさんが想像しやすいかもと思い挿絵と更新用のツイッターアカウントを設立しました
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