第9話 手探の魔女⑤
『魔女の手』ではないが、本物はまだある。
魔女もおそらく狙ってくる。
職員に本物まで案内させ、裏方まできた。
裏方にも壁から魔女の『手』が迫ってきた。職員は怯えて逃げ出し、『手』の餌食になった。
見つけるまで案内させようとしたが、もう仕方がない。自分の足で探すしかない。
走りながらロザリオで『手』を払っていく。
迷路のような道にやっと魔女の姿をとらえた。
気がつかない内にロザリオに纏った白い炎を魔女に飛ばす。見事に魔女に命中し、ひるんでいる内に思いっきり飛び出し、ロザリオで斬ろうとしたが、壁から伸びた『手』が集まり、壁となった。壁を切ったが、魔女の姿がなかった。
「ち、逃げやがって」
完全には逃げていない。回復するために隠れたのだろう。回復したらすぐに襲ってくる。
ジャンヌは、ロザリオを構える。
壁に寄り沿っていたのは、アキセだった。
魔女がアキセを狙っていた。『魔女の手』ではないのか。
「本当はあんたを助けたくはなかったけどね」
「なんだよ。そのセリフは?けど、その格好似合ってる」
今は会場に忍び込むためにワンピース風の黒いドレスを着ている。からかってくるからアキセにはあまり見せたくなかった。
「うるさい」
ロザリオを構えて警戒しながら質問する。
「さっきの銃声あんたがやったでしょ」
「気付いていたのか」
「状況的に見れば。後、ニセモノって分かっているなら本物を探していたんでしょ。話したら助けてやる」
「壊した」
「あーそうなの」
よし、手間が一つ減った。
「なんだよ。その反応は?」
けど、ウソをついている可能性がある。
「それ本当だよね。ウソだったら帰る」
「本当ですから助けてください・・・」
どうやら本当のようだ。
「それにこんなのんびりしていいのか?魔女がまだいるだろ」
「心配ご無用。今回は余裕」
「余裕ね~」
その時だった。
ジャンヌの後ろに何かが落下してきた。それは長い木材だった。上を向けば、木材が大量に落ちてきた。
「「うわ!」」
背後にアキセと一緒に避ける。
よく見れば、天井に『手』が木材を持っていた。どこから持ってきたのやら。
「小細工な!」
間接に殺すつもりだ。
狭い通路ではまともに戦えないが、広い場所に出でも意味がない。だか、天井から次々に木材が落としていく。もう逃げるしかない。
ジャンヌは走り、アキセも追いかける。
「余裕じゃなかったのか」
「魔女のせいで作戦変更」
よく見れば、アキセの両腕がぶら下がっている。
「その腕って」
「魔女にやられたんだ。ちなみに魔術使えない」
「なんでついてきたのよ」
「魔女に殺されたくないからだろうか!」
無作為に走っていけば、いつの間にか舞台上に出でしまった。
「やっと広いところに出たか」
「よくない!」
ジャンヌは怒鳴る。
「本当はこんな広いところでやりたくないのに」
悔やんだ時だった。
目の前で椅子が飛んできた。
視線を向ければ、客席から『手』が椅子を投げてきた。椅子だけでなく魔女により殺された腕のない死体も紛れている。
間接に狙おうにも魔女らしくないことを。
椅子や死体を避けながら、アキセと離れた時だった。
背後から衝撃。背後から巨人ような大きい『手』が拳でジャンヌを客席の天井へと飛ばす。
壁や床から銃を構えた『手』がジャンヌに向かって打ってくる。
「銃?!」
散弾銃で実弾。さらに虚空から槍も伸ばしていく。
――魔女らしく呪力使いなさいよ
四方から弾が飛び、下方から槍を伸ばしていく。白い炎で飛ばそうにも間に合わない。逃げられない。
その時だった。
目の前で弾が止まり、逆行に『手』を狙う。さらに風の刃が槍の穂を斬っていく。
「これって・・・」
考えるよりも先にこのチャンスを逃さない。
空中で体勢を立て直し、槍だった棒を沿って滑り込む。
『手』が虚空に逃げる前に光の刃を作ったロザリオを飛ばし、『手』を通して虚空に刺す。『手』が槍を離した瞬間に跳び、刺したロザリオに片足で踏む。白い炎をロザリオに通して虚空の中へと注ぐ。
周辺の『手』は、白い炎に包まれる。
『手』は、魔女に繋がっている。虚空の注けば、すべての『手』に伝わる。本当なら、狭い道でやれば、無駄に『光』を浪費する必要がなかった。
読み通り、虚空から叫びと共に魔女が白い炎に燃やされながら舞台上に現れる。
「あああああああああああああああああああああああ」
魔女はもがき苦しむ。
「さっさとくたばれ」
手に白い炎の刃を作り、魔女に向かって静かに飛ばす。
白い炎の刃は魔女の頭に命中し、動かなくなった魔女は、白い炎と共に消えた。
一安心に息を吐き、ロザリオを床から拾う。
とりあえず終わったが、まだアキセには聞きたいことがある。尋問しようとしたが、いつの間にかいなくなっていた。
「どいつもこいつも消えやがって」
ロザリオを見つめる。
曲がってないといいけど。




