表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

第1話

よろしくお願いします。

放課後になると学生の殆どは、『授業』という呪縛から解放され、自分の自由な時間を得ることができる。


ある者は友達と寄り道をしながら帰り、ある者は仲間と熱く目標に向かって練習に励む。


そしてまたある者は、好意を向ける人へと自分の思いを伝える。


だが彼、山鳥高校二年生の前川まえかわ 達海たつみにとっては一日の中で最も憂鬱で嫌いな時間だった。


達海は放課後になると毎日、誰かに呼ばれる。しかも全員が女子であるのだ。


今日もまた女子に呼ばれ、屋上へと足を運んだ。


「あ、あの今日はお時間をとっちゃってごめんね」


「全然大丈夫だよ、それで今日はどうしたの?」


要件は大体わかっていた。今まで告白してきた女子の殆どが、このような言葉から会話に入るからだ。


「す、好きです!私と付き合って下さい!」


「・・・!」


言われることは分かっていたが、あえてここで驚いたふりをする。


そして少し間をおいて返事をするのだ。


「勇気を持って告白してくれてありがとう。気持ちは嬉しいんだけど、俺には好きな人がいるからごめん・・・」


「そ、そうなんだ・・・。時間とらせてごめんね!その子と上手くいくように頑張ってね!応援してるから!」


「ありがとう頑張るね」


達海は微笑みながらその場を後にした。


「今日で98日連続で告白されたか・・・」


達海は告白されることに少しながら喜びを感じるも、それ以上にがっかりとした気持ちが大きかった。


彼はこんなにも沢山の女子に告白されるも、一度もオッケーをしたことが無い。


巨乳の女子、ロリっ子女子、帰国子女・・・

告白された女子のバリエーションは実に豊かなものだった。


しかし達海には、どの女子も好きにはなれなかった。


というよりも、既に彼には心の中にこの人だという女子が決まっているのだ。





☆☆☆



達海は一人で下校を済ませ、家へと着いた。


「ただいまー」


「お帰りお兄ちゃん、今日も誰かに告白されてたの?」


「そうだよ、勿論断ったけど」


「今日で何日連続で告白されたの?」


「今日で98日連続」


「後二日で100日じゃん!頑張れお兄ちゃん!」


「あのなぁ、お前振る方の身にもなってみろよ・・・。まったく」


この若干兄をいじってくる妹は前川まえかわ ひかりであり、実の妹ではない。


小学三年の時両親が離婚した。理由は父の浮気だった。そして達海は父に、母の元に実の妹がついていくことになった。


それから一年後の小学四年生の時、父は離婚原因となった女性と結婚した。新しく母となったその女性は、今から二年前に離婚しており娘を連れて生活していたという。


その娘が光だった。


そのため見た目も全く似ていない。光は小柄で軟弱そうな体つきなのに対し、達海はそこそこ仕上がった体つきをしている。


唯一似てるといえば、サラサラな髪の毛くらいだ。


そしてお互い離婚したことからさらに仲が良くなり、結婚に至ったというわけだ。


今両親は、結婚した当時は色々あり忙しかった為できなかった新婚旅行中で、家では光と二人きりの生活である。


光ともアニメというお互いが好きなジャンルがあったことがわかり、最初は気まずかったものの今では仲良くやっている。


「それでお兄ちゃん、アレは出来たの?」


「アレか、アレならもう出来たぞ」


「早く見せてよ」


「風呂上がったら見せてやるから待ってろ」


☆☆☆


達海が風呂から上がると、自分の部屋へと『アレ』を取りに行った。


そして『アレ』持ってリビングへと戻ると、テーブルの上には料理があった。


「ほら持ってきたぞ」


「おおー!じゃあ早速読ませてもらいまーす!」


「いただきます」


達海は光が作った料理を黙々と食べる中、光は達海が持ってきた『アレ』を黙々と読んでいた。


「んぁー!面白かった!今回も最高だね!」


「ごちそうさまでした。美味かったよ」


「お粗末様でした。ってそれより!今回も良かったよ!」


「そうだろ!俺の書く恋愛小説は絶対に面白いからな!」


「「そしてなにより、ヒロインが可愛い!」」


二人はコメントが被り笑った。


二人の言う『アレ』とは、達海の書く恋愛小説のことだった。達海は去年の夏から恋愛小説作家として活動を始め、今では人気急上昇中の作家である。


そして、彼のデビュー作にして現在新刊製作中の小説『メインヒロインはいつも側に』の中に出てくるメインヒロイン、橋本はしもと 莉里奈りりなにべた褒めなのである。


「やっぱり俺はこの、莉里奈のような女子と付き合いたい!こんな感じの人じゃないと付き合えない!」


「今までの98人の中にはいなかったって訳か」


「そうだ!その通りだ!俺の求める理想は莉里奈のような人しかいない!」


「でも、これ理想高すぎない?」


[体格はすらっとしていて、黒髪のショートヘア、胸はそこまでなく、ツンデレで、世話焼きで、たまに天然、怒ってる時は何も話さない、深夜になると人が変わるかのようになる。そして、最初は好意を表すようなそぶりや表情を見せない]


「こんな人いる訳ないじゃん!」


「いいや、絶対にこの世に一人はいるはずだ!」

「何日、何週間、何年かかっても俺は見つけてみせるぞ。莉里奈のような人を!」


「それはいいけど、明日ボランティア部の他校との合同活動なんでしょ?早く寝たら?」


この時、色々と語り合ううちに深夜2時を回っていた。


「そうだな、今日は寝るかお休み。」


「お休みお兄ちゃん」


☆☆☆


次の日、達海は所属するボランティア部のメンバーと姉妹校である海魚高校のボランティア部の元へ向かった。


今回は、二つの高校のボランティア部の合同活動の内容の打ち合わせのための集会の為に来ていた。


「いやー、可愛い子いるっすかね達海先輩?先輩なら海魚高校の女子もすぐに・・・」


「やめろそんなこと言うのは、俺たちが羨ましくなる」


「いえ、僕は別に・・・」


「ちょっと、みんなそんな事は後にして今は部活中よ」


「・・・」


彼らの紹介は後々するとしよう。


そして達海たちは、海魚高校のボランティア部の部室へと入っていった。


「どうも、山鳥高校のボランティア部です。どうぞよろしくお願いします。」


「どうも、海魚高校二年の咲本琳です。」


その琳と名乗る女子は体格はすらっとしており、黒髪のショートヘアで彼を見ても好意を寄せるようなそぶりや表情をしていなかった。


「今は先輩方は不在なので、もう少しお待ちください。」


そう言うと、琳は山鳥高校のメンバーを見た。


その時ふと、一人の男と目があった。


この時が達海と琳の初めての出会いとなった。


だがまだこの時は知らなかった、この出会いが後に彼らの人生に大きな影響を与えることを。






















読んでいただきありがとうございます。

ただ今用事が重なっており、毎日投稿できるかわかりませんが、どうぞよろしくお願いします。

良ければブックマーク、感想をいただけると励みになります。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ