駆逐艦 vs 魔王リナ
吾輩は人である。名はホモ・サピエンス。
吾輩は空を見上げた。
《鑑定》スキルを発動させる。
それはすぐに見つかった。
駆逐飛空艦、奇城 茨魏魏ヶ島であった。
黒のボディに白と赤のラインで染色された、見まがうことのない敵駆逐艦である。
システム『スキル《熱核爆裂弾》が承認されています。』
システム『速やかに退避してください』
システム『この地域の生きとし生けるものすべてが死滅します。』
さすがは魔王である。
恐ろしい攻撃をするものだ――
・ ・ ・ ・
「ふふはははー。俺様が魔王リナの襲撃を助けに来てやったぜぇぇ――」
駆逐飛空艦、奇城 茨魏魏ヶ島の甲板で、激情之魔王たる魔王ジャック・ザ・ハートは吠えていた。
「この魔王、ジャック・ザ・ハートの名に懸けて! そこいら一体の人類をまとめて薙ぎ払ってくれるぅぅ!」
そんな魔王ジャックに、駆逐艦の最奥部、ダメージコントロールルームにいる魔王フアトロから念話による連絡が入る。
『高熱魔力源反応! 魔王リナが魔力出力を上げているわ! 注意して!』
魔王リナが?
「はははは。無駄無駄無駄ぁぁぁ」
だが、あんな新米魔王になにができるというのだろうか。
しかし興味深くなったジャックはすかさず魔王リナの状態を魔道カメラによって確認する。
すると、リナは参謀の一人であるピーチから何かをもらっているようだ。
お菓子だろうか。餅のようにも見える。
その腰に吊り下げられているアイテムを《鑑定》すると、おどろるべき結果がジャックの前に現れた。
「な、なんだとう。『お腰につけた機微団子』とは一体!? その効果は――なにぃぃぃぃ! 洗脳だとぉぉぉ!」
魔王リナは『お腰につけた機微団子、ひとつ私にくださいな』といわんばかりの様子で、いくつものダンゴを食していた。
それはもうむしゃむしゃと。
状態異常に掛かるのは時間の問題だろう。
システム:「イベント:いにしえの昔話ピーチ・タローが開始されました」
システム:「魔王リナは、『お腰につけた機微団子』により洗脳されました」
システム:「魔王リナは、『お腰につけた機微団子』の効果によって先陣たる犬役に任命されました」
システム:「魔王リナは駆逐飛空艦、奇城 茨魏魏ヶ島に攻撃表示しました」
流れるようなシステムメッセージに目が行く。
(はん。こざかしい。魔王に敵対するのではなく、あくまで人によって状態異常を食らったからという理屈で攻撃するわけか。しかし、だからといって届くのか攻撃が。あんな遠くから――)
魔王リナを魔道カメラ越しに凝視する。
団子を食べ終わったリナは、おもむろに彼女自身のおっぱを揉み始めた。
やがて光輝きはじめるおっぱいに、魔王ジャックは何事かと見入ってしまう。
それが、致命的な敗因になるとも知らずに。
唐突にして、その光は放たれる。
「ま、まさか――、《おっぱいビーム》だとぉぉぉ! ばかなぁぁ――」
轟――。爆発音が響く。
それは、おっぱい揉みくだし師によって与えられてた遠隔攻撃の一つだ――




