★STAGE 6★(最終戦――)
STAGE1:≪女剣士≫モノフルオール、撃破!
STAGE2:≪竜剣士≫ドラコ、撃破!
STAGE3:≪弑逆の参謀≫リネージュ、撃破!
STAGE4:≪機織り師≫ジア・エンソーダ、撃破!
STAGE5:≪男装の麗人≫ソーダ・クラーレ男爵令嬢、撃破!
こうして各ステージを無傷で攻略してきた吾輩はついに大聖女祭りの最終を迎えることになった。
決勝の相手は今代の勇者、キリッカート・パインツリーだ。
こいつに勝てば、吾輩は世界が認める聖女の中の聖女を一人指名することができる。
ついにその時がやってきたのだ。
対戦相手の勇者が睨んでくる。
相手は勇者だ。どんなチートな能力を持っているか分かったものではない。
吾輩は能力を全開にした。
まずは視姦の魔眼だ。
発動しながら勇者を睨みつける。
闘技場の観客席ではその対決を固唾を飲んで見守っていた。
高まる緊張感に、一人の男からは一筋の汗が流れだす。
勇者――
人類の中で最強と歌われる人々の星である。
「よくぞ、よくぞ俺の前に現れたな。サピエ――」
勇者は吾輩の名を叫びながらゆっくりと剣を抜いた。
勇者は軽く剣を振る。風圧が空を斬る。まさに刀劍の神域だ。
それにより剣劇が我輩を襲うが、吾輩は身体を少しずらしてかわす。
チリチリと音がする。
我輩の視姦の魔眼が効いている様子もない。
さすが勇者か。レジストしているのだろう。
我輩と勇者は睨みあう。
「やはり、単発の攻撃では倒せないか……
だが――、スキルであればどうかな?」
勇者は剣を大上段に構えた。その剣は神殺し。うっすらと水色に輝く光剣だ。
そこから振り下ろされるのは剣士系最強とされる短距離範囲攻撃――
「我が剣術はいまだ未覚なり――
なぜならば――次の、そして次の一撃こそが真なる覚醒の技であるならば――
さぁ! 受けるがいい! 我が最強の龍破の技をーー」
剣士系50階層、階位5段――最終奥義が火を噴いた。
光の本流が唸る。
「《龍派! 魅核闘陣んんんん――》」
スキル《龍派 魅核闘陣》が発動する。
勇者が放つ水平展開された8x8マス、および垂直に展開された4x4マスの範囲剣劇がサピエを襲った。
吾輩はそれを弾幕と見なして回避する。
まるでそれは、シューティングゲームのように。
だが、現実とそれとでは大きな違いがあった。
シューティングゲームは所詮ゲームであり努力すればかわすことができたとしても、世の中には『詰み』という攻撃をさけられないパターンというものが存在するのだ。
それが、剣士系最終奥義が最終奥義と言われるゆえんである。
そして――
一発の弾幕が吾輩に当たる。
ぴちゅーん。
「え?」
そんな気の抜けたような声が聞こえる。
勇者はこの程度であれば耐えられるとか思っていたのだろうか。そしてじわじわといたぶるとか。
しかし吾輩のHPは1なのだ。どんな弱い攻撃でも1発当たれば死ぬ。
これは我輩のスキルの構成上当然のことだろう。
勇者の攻撃上もそうだ。この攻撃は連続のコンボ攻撃によって構成されると解される。
したがって勇者は手を緩めることができず、継続する連劇によって吾輩を粉のようにばらばらにしてしまった。
その、あまりの攻撃の強さに闘技場を囲む群衆が息を飲む。
いくら戦闘とはいえ――、これでは完全に殺しているのではないか?
群衆たちが騒然とし始めたころ、その群衆の前に一人立つ少女が勇者の目に入る。
リナちゃんだ。
「がんばって……、サピエ……」
そうつぶやくリナちゃんだが、吾輩は既に死んでいる。どこからどうみとも。
だが、リナちゃんは知っている。吾輩が死を乗り越えるチートなスキルを保有していることを。
1発だけなら誤射かもしれないと、吾輩は復活する。
「あぁ、大丈夫だよ……」
そんなリナちゃんに声を掛ける女性がいる。
女性はリナちゃんの頭をぽんと撫でた。
勇者は、その女性の名を知っていた。あまりにも有名であるがゆえに。いや、《鑑定》でも使ったのだろうか。
「馬鹿な――、彼女が、彼女がこんな場所にいるはずがない。
暴食之魔王たる魔王ベル
おまえが――」
群衆の視線が一斉にその女性に集まる。
その名前は知らぬものがないほどに有名だった。
数々の人々を殺し、大陸のミナミの住人を蹂躙した魔王がなぜここに――
「ほら――、私のことよりまだ終わっていないわよ? 残念な勇者さん」
吾輩は立ち上がる。
勇者を倒すために。
「ほら、次のクローンは上手くやってくれることでしょう。おーほほほ」
その女性――、暴食之魔王たる魔王ベルは高らかに笑う。
そんな異様な雰囲気に勇者は飲まれた。
勇者は叫ぶ。
「馬鹿な……、一体、あの最終奥義のどこをどうすれば復活できるというのだ!」
そこで、ようやく勇者の身体がゆらめいた。
ようやく、《視姦の魔眼》の効果が効いてきたのだろう。
「だが、お前は復活したとして一体何ができる! できるのはその弱っちいDOTダメージだけ! まともな攻撃すらできず回避だけじゃないか。その程度で俺をなんとかできるとでも――」
それバカにしたように答えたのは、暴食の魔王たる魔王ベルだ。
「ほらほらぁ――、『そんな勇者程度の能力』で、サピエ程度の能力に勝てると思っているのぉ?」
「――だが、おっぱい揉みし師であれば対象は女だけのはずだ。そして俺は男ぞ。サピエ――貴様に一体何ができる!」
吾輩は両手の指をくねくねと触手のように回しながらキメのセリフを放った。
「右手とぉぉ、左手でぇぇ、合わせて両刀ぉぉ―― ┌(┌^p^)┐」
人々を新世界に導く白い悪魔の本領を見せてやろうじゃないか。
再度勇者はスキル《最終奥義《龍派! 魅核闘陣》を放ってくるが、吾輩は一度見た技であるため、既に見切っていた。
吾輩は勇者の背後を取りその胸に襲い掛かる。
「いっけー!」
少女が叫ぶ。
吾輩は勇者の耳元でささいた。
「人という字は人と人が支え合って ホモ━━━━━━━━━━━━━━━━━ヽ( ゜Д゜)人(゜Д゜ )ノ━━━━━━━━━━━━━━━━━!!」
勇者の身体が完全に凍り付く。
(まぁ、勇者には聖女も女騎士もいるからな。せめて女体化はやめておいてやろう)
光の本流がエフェクトとなって煌めいて、そして――




