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聖母ミイヤー

「控え――、控えおろう! この方をどなたと心得る、先の最先任大邪神、主神たる女神カーキン様であらせられるぞ! 控えるがいぃーー」




 ・ ・ ・ ・



「まさか……、この世界の主神が邪神だったなんて……」



 思わず声をあげるピーチ・グリーングリーンにサピエも同感であった。


「いやなに。この世界で邪神戦争が勃発したときにな、私はそんなの関係ねーと邪神らしく引きこもっていたらな、当時の主神だった神が勇者を召喚してだな、その勇者が世界を神魔関係なくぶち殺してな、おかげで我がこの世界の最先任神となったのだよ。いぇーぃ」


「勇者なんてことしてくれているのよ」


「ちなみに勇者は日本人だ。それは見事な中2だった。」


「「すみませんでしたー」」


「なんだ、婚約者同士仲が良いな」


「「いやいやいや」」


「く……、なんだか胸焼けするな。祝福でも掛けてやろうか」


システム:「主神カーキンがピーチ・グリーングリーンとホモ・サピエンスを祝福し絆レベルが上昇しました」


システム:「ピーチ・グリーングリーンとホモ・サピエンスは婚約破棄ができなくなりました」


「あ。それって」


「や、やめてーー」


 ピーチ・グリーングリーンは思わず叫ぶ。


『さっさとお前ら結婚しちまえよっ』


システム:「ピーチ・グリーングリーンとホモ・サピエンスに、人生の墓場までのカウントダウンが始まりました」


「おぉ、一見、なんという神らしい祝福なのだろうか」


 サピエは不覚にも喜んでしまった。


 確かに、神らしい祝福と言えば祝福なのだろう。


 それはとても邪神とは思えないものだ。


『――で、適当にニンゲンをいじったところで本題だ。女神アクア・ポリシャン! 我がぽてちの時間を妨害してまで我を召喚するとは、覚悟はできているのだろうな!』


 お前もおやつタイムだったのかよと、サピエは心の中でツッコミを入れた。


 しかもポテチとは――、もしかしてこいけ〇だったりするのだろうか。


 なにしろ女神にポテチを供給するくらいだ。常に安心できる商品を提供し、地球環境、人々の健康、社会的貢献を心掛ける。くらいそのポテチ業者は言っていてもおかしくはない。

 いや、もしかしたら牛さんのホルモンの名前の会社だったりするかもしれない。


『ははー。このニンゲンの男の称号を見てください』


『ふむふむ? なるほど――。これは我が面白がって追放系主人公につけたものに相違あるまい。――で、それがどうしたのかね?』


 お前がつけたのかよと、サピエは心の中でツッコミを入れた。


 だいたい追放系主人公ってなんだよといいたい。


 そりゃ、たしかにこの前アク〇ポリスでは追放系が上位を独占していたけれども。


『この男、2人も婚約者を持っておりまして――』


『なんだとこのリア充め。しかしなるほど――、女神の権限では聖女を同時に与えられなくて主神たる我に泣きついたと――』


 いやいや、リア充ではないだろうと、サピエは心の中でツッコミを入れた。



 だいたい、まだ二人ともおっぱいを揉んでないじゃないか。


 彼女たちのおっぱいを揉みくだしてこそリア充だろうとサピエは主張したかった。


『どうせ、聖女を一人目に与えた後で、調子に乗って2人目とか後で言い出したんだろう? それならば2人目を婚約破棄させて、3人目を酷いクラスにして物笑いの種にするのなんてどうだろうか』


『それはとても面白そうなご提案なのですが――、その2人目が今、祝福を与えた彼らでして―』


『はっ。しまったぁぁー』


 神たちのシーンという言葉が聞こえてきそうだ。


 その言葉に青ざめるのはメイドのミイヤーだ。


 ピーチとサピエが祝福されていなければ、ミイヤーはいまごろ超絶面白いクラスが与えられていたことだろうと、サピエは心の中でツッコミを入れた。


『ちなみに、3人目の彼女の名前は『ミイヤー』といいます』


『なるほど、ミイヤーか……。あっ』


 主神カーキンと女神アクアは、ミイヤーを凝視する。


 彼女は公爵家のメイドさんであるから、それなりに容姿は端麗であった。


 黒髪にメイド服を着ており、実に可愛らしい。


 ピーチ・グリーングリーンがいなければそのおっぱいを揉んでいたところだ。


 そして、主神カーキンはアクアとともにあることに気づいてしまったようだ。

 なんだろう。どうせろくでもないことだ。


 とにかく、なるほどと女神アクアの肩叩くと、次にミイヤーの頭に手を置いた。


『よかろう。あぁ、婚約はしたな。では主神カーキンの名において、ミイヤーを聖女としよう!』


 ぱぁ~。


 神殿の空から光が満ち溢れる。


 ミイヤー・ロッテンがピーチ・グリーングリーンと同じように神聖なる光に包まれた。

 この日、二人目の聖女の誕生だった。


「あ、ありがたき幸せ――」


 主神からの神託にミイヤーは、涙を流しながら祈りを捧げた。


 いやその主神、邪神だからね。


 だが、それを世界に広めたら世界は一瞬で恐慌状態となるだろう。


 だからそれは秘匿するしかないのであろうか。


 周りの修道女さんたちはどうしたら良いのかわからず右往左往するばかりだ。


『そして、ミイヤー。お前に称号を授ける。今日から汝は聖母(マンマ)・ミイヤーを名乗るが良い――』


「あああ、あ、ありがたき幸せ――」


 メイヤーは感極まった様子で感謝の念を込めてさらに主神に祈る。


 そんなメイヤーをピーチとサピエは冷めた表情で見ていた。



「「(あんた。それが言いたかっただけだろ――)」」



 吾輩とピーチ、二人の息は婚約でもしているがごとくとてもぴったりであった。



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