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ROTEN

 源泉かけ流しのその風呂はROTENと言うそうだ。


 風呂に入りながらも外の景色を眺めることができるそのROTENは、広大な土地が余っている魔の森であるがゆえにできるのだろう。これが王都周辺などであれば土地の値段の関係で難しい。


 気付けば、マイヤー・ロッテンはそのROENに生まれたままの姿で湯に浸かっていた。


 もう時間は朝だ。



 あれからどれくらいたったのだろう。



 最初の頃は覚えている。


 なんというか、ホモ・サピエンスの手の動きは――神であったといわざるを得ない。


 的確に欲しいと思うポイントに手が届いておっぱいを揉みくだされたのた。


 そう、あれに対抗できるものなどいないだろう。


 曖昧な記憶の中で、リナにお姫様だっこされて案内された部屋のベットで泥のように眠った。


 今は早朝に起こされて服を脱がされ、ROTENという名の風呂に入っている。


 新陳代謝がものすごく活性化したのだろうか。身体は汗でべとべとで、風呂に入ると自らの垢が浮いてきた。


 その垢は源泉かけ流しの緩い水流によってすぐに流されていったが。


 その肌はかつてマイヤー・ロッテンが少女であったころのように無垢な艶やかさを取り戻していた。

 メイドの活動として冷たい水洗いでできたあかぎれや手荒れなども治っている。


 また、髪も艶やかさを取り戻していた。

 ただし、これは最近お嬢様が作るようになったシャンプーとトリートメントと呼ばれるモノの力だろうか。これから婚約しようという間柄なのだ、物資の融通くらいはしていることだろう。


 そしておそらくは、ヒールなどの回復魔法成分もあのおっぱい揉みくだしには含まれているのだろう。

 体調はすごぶる良い。良くなってしまって――



 それほどまでにあの揉みくだしは女というものを発現するに足るものであったのだ。



(負けてしまったわ……)



 マイヤー・ロッテンは天を仰ぎ見る。


 その場所はROTENだ。すがすがしい朝の光景が空には広がっていた。


 青い空に白い雲が流れていく――


「お、新入りかね。おはよー」


「おはようございます」


 水音がして湯気の向こうから一人の女性がやってくる。


 純白の肌に髪まで白い、赤い瞳の少女だ。


「私はジア・エンソーダだ。よろしくな。ここでは機織(はたお)り職人をしている。仕事中だったものでね。集合が掛かった時に行けなくてすまないな」


「マイヤー・ロッテンと申します。ピーチお嬢様の指示でこの場所を見ることになりました」


 ジアは温泉に肩まで浸かり疲れた身体を癒しながらゆっくりと温泉を楽しんでいるようだった。


 傍らにはお盆が浮かんでおり、その上にはポットとコップが置かれていた。


 マイヤー・ロッテンからの視線に気づいたのか、ジアはコップにポットから液体を注ぎ、マイヤー・ロッテンに手渡した。



 謎の白い液体だった。



 それはほのかな湯気を漂わせている。


「あぁ、これはROTENの湯によって温めた牛乳だ。温まるぞ……」


 謎の白い液体の正体は牛乳らしい。


「ありがとうございます」


 確かにその牛乳は今日しぼりたてであるかのように暖かく、そしておいしかった。


「あぁ、新鮮でいいだろう。朝からサピエのやつがシュタインちゃんのおっぱいを朝いちばんに絞ったやつだからな――」


「!?」


 マイヤー・ロッテンはその言葉に思わず吹き出してしまった。


「うわきたねぇ」


「あ、申し訳ありません」


 そりゃぁ、毎日おっぱいを揉むわけだ。

 というか、それは搾乳だろうと思わずにはいられなかった。






(シュタインちゃんって……、牛さんじゃねーかッ)


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