シューティングゲームで死ぬとキャラはこうなる
吾輩は人である。
名はホモサピエンス。
いやあ、酷いよねリナちゃん。
吾輩は、今はドラゴンの胸の前でつぶれています。
それはもうハエのように。
周囲にはPとか書かれた吾輩にしか見えないアイテムが浮遊している。
このPのアイテムを取得すると攻撃力が回復するわけだが、そんなことをしている暇はなさそうである。
「ぐるぉぉぉー」
怒り狂ったドラゴンが、吾輩をまるでハエのように叩きに来た。
当然にして、その攻撃を受けたら即死である。
ぴしゃーん。
豪快な音がドラゴンの右胸と左手の間でする。
そして吾輩はそれをカサカサとゴキ〇リがごとく右胸側によることで避けた。
こんなのが続けば吾輩はまたもや死ぬだろう。
だから速攻でこのドラゴンを片づけなければならない。
どう片付けるか?
考えるまでもない。
吾輩はなんと恐ろしいことにおっぱい揉みくだし師なのである。
そして目の前には胸――つまりおっぱいがあるのだ。
やることは一つしかない。
そう、おっぱいを揉むのだ。
「あーー。さわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわ、おさわッ \(^o^)/」
吾輩がおっぱいを全力で触手がごとく揉みくだしているうちに、ついに吾輩はその陥没した頂きを発見する。
ドラゴンといえでも自然の摂理の中で生きるモンスターである。
やはりそれは存在したのだ。
「わははは。ついに見つけた!」
ちくびーである。
吾輩はその時代の先端をさわさわと全力で揉み揉みした。
「ぐるぉぁぁぁー」
ドラゴンが戸惑うような叫び声をあげる。
やがて、ぴびーとかいうエレクトーンで作成したような音が響き渡ると、ドラゴンの体内におっぱいを通じて電流のようなエフェクトが走り、ついにはその身体が崩壊していくではないか。
「ふっ。経絡おっぱいの一つを突いた。お前はもう、擬人化している」
そう、ドラゴンは擬人化し、ドラゴンのしっぽがある美しい炎髪灼髪の美少女に変化していた。
吾輩の≪擬人化≫スキルの発動であった。
初めからメスであったらしく、女体化スキルは不要であった。
(さすがはドラゴン、美しいな……)
吾輩はしげしげとその美少女の下腹部を見ていると、生えているしっぽが猛然とした勢いで振るわれた。
「ちょっとぉー! 何見ているのよ!」
当然のように吾輩は吹き飛ばされた。
本日2度目の即死である。
Pの文字が辺りに散らばる。
「服っ。服頂戴! 服! あー。なんで私全裸なのよぉ☆ って、いままでも全裸で空飛んでた!? いやーん。恥ずかしすぎるぅぅぅ☆」
吾輩のことはそっちのけで、くねくねしだすドラゴンであった。
「はん? リナのサピエに手を出しておいてよくそんなこと言えるわね」
そんなドラゴンだった美少女をリナちゃんは全力で踏みつけるのだった。
・ ・ ・ ・
砦に戻ってきた吾輩とリナちゃん、およびドラゴンの少女の一行は、自宅の砦へと戻ってきた。
ドラゴンの少女は、素がランクが高いからなのか炎髪灼眼の美少女だ。服はリナたちの白い薄緑色のワンピースを借りている。
ただ、その身長がリナちゃんよりも高いため、ワンピースの丈が相対的に短くなっており、座ると見えそうになるため目のやり場に困る。
しかも今まで全裸で過ごしていたからか、あまり男の視線に無頓着のようで、つまるところ見え放題になっていたのだから吾輩はさらに困った。
――なので、吾輩は開き直って堪能することにした。
うむ良い。
ドラゴン実に良い。
「いやぁ、先ほどはすまなかったね。サピエ…、サピエ様」
そんなドラゴンの美少女がサピエに声を掛ける。
サピエと呼び捨てにしようとしたところ、リナから猛烈な視線を当てられてサピエ様に言い直したのはご愛敬だ。
「しかし――、まさか、あんな方法で擬人化術を教えてもらえるとは思っていなかったぞ☆ そして擬人化すると人間のベース知識も入ってくるとは驚いた☆」
上機嫌なドラゴンの美少女だが、なぜ上機嫌なのかはサピエにはさっぱりわからない。
サピエが死んでいたときに何かが起きたのだろうか。
リナちゃんの方を向くとリナちゃんはさっと目をそらした。
「いや、さすがは《強欲之魔王たる魔王》リナ様だね☆ こうやって『使える』モンスターを擬人化していき、側近として仕えさせるとは☆ さすがは新興魔王といったところ?☆」
ドラゴンの美少女は「使える」を強調している。
擬人化されたことで選ばれたドラゴンだとでも思っているのだろうか。
だが、聞き捨てならない単語がその中に含まれていることに吾輩は気づいた。
「なんだ? その新興魔王というのは?」
「なんだ知らないの☆ いま、魔界界隈では新たな魔王が誕生したともっぱらの噂だよ☆」
「は?」
「おまぇ……、サピエ様はニンゲンなのにシステムメッセージは読んでいないの?☆」
「え!?」
「『ステータス』って叫べば呼び出せるよね☆」
「おいおい、それは勇者とかある程度高位のクラスでないと見れないものじゃないのか?」
「そういうものなの?☆ ドラゴンの間では全員使えるし、いままで知り合ったニンゲンのパーティーだったら、必ず一人はステータスが使えるやつがいたけどぉ☆」
「……、な、なるほどな」
(それ、ドラゴンと戦うくらいのパーティが全部勇者パーティってだけなのではないだろうか)
そういう落ちである可能性は非常に高い。
実のところサピエもステータスは使えたのでそのからくりは見えた。
おそらくは、ステータスの見えるドラゴンたちはリナが魔王になったことをシステムメッセージとして感知し、様子見のために来たのであろう。
そしてモンスターをひたすら駆逐している様子を見て腕試しでもしているのかと思い参戦してきたようだ。
結果は負けたが新魔王の直近の配下となり、擬人化スキルを入手したことで彼女はご機嫌となった。と。
そう聞くとドラゴンの美少女はうんと頷いた。
しかし、ドラゴンの美少女って長すぎるな。適当に名前を与えよう。
「えーっとじゃぁ、名前はドラコね」
「え!?」
ドラゴンの美少女――ドラコは、一瞬顔を引きつらせるとすぐに笑顔になった。
「あぁん。名づけされちゃった☆ これで私もネームドモンスター☆ これで私も上級ドラゴンね☆ さすがは魔王リナのニンゲンの参謀だけのことはあるぅ☆」
うれしそうなドラコは尾っぽでばしばしと床を叩く。
「ちょっとまて、なんで吾輩が魔王の参謀になっているんだよ」
「え?☆ 魔王の参謀じゃないのぉ☆ ならどうして魔王リナの隣にいて、私よりも偉そ――偉そうにしていらっしゃるんですか?☆」
ドラコはリナちゃんに睨まれるたびに敬語になった。
魔王の参謀――よく物語に登場する彼らは大抵がニンゲンで、マントをかぶっており、脳みそが足りないモンスターたちに指令を与える悪逆非道な人物のことを指している。
そんな参謀は大抵の場合、国とか公爵家の令嬢を連れ去って酷いことをする。当然人類の敵であり、人側にそんなことが知れれば真っ先に処刑されることであろう。
だが、ここで「いいえ違います」などという雰囲気では到底なかった。
そんなことを言えばドラコはそんなやつがなんでここにいるのだと襲ってくるだろう。
だいたいにおいてモンスターとニンゲンは相性が悪い。
こうして相対している方が本来は変なのだ。
「あ、あぁ。そうだが……」
とりあえず俺はドラコに対して嘘をつくことにした。
システム:『ホモ・サピエンスは称号「魔王の参謀」の称号を得ました』
(ちょ、ちょっと待てい)
だが、システムはそう思わなかったらしく、吾輩には「魔王の参謀」の称号が付いてしまった……。
「やはり☆ 私の目に狂いはなかったようだね☆」
どこか尊敬のまなざしで見つめてくるようになったドラコの視線が痛い。
「――で、勢力を拡大するならうちのまだ一族連れてきて魔王リナの元に集結させようと思うけどどうかな?☆」
「え?」
「あー、ドラゴンっていっても魔王の配下って実は少ないから在野のドラゴンって多いのよ☆ だから新魔王の庇護――じゃない、家臣になりたいやつ――って、言えばすぐにでも20体は集められるんだよねっ――☆」
こうして、次の日からホモ・サピエンスはドラゴンたちのおっぱいをさわさわしまくるという、苦行の日々が始まるのであった――




