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勇者vsおっぱい揉みくだし師!

 闘技場――


 そこは今後3年における異世界を代表する『真なる聖女』大聖女を決めるための戦いが行われる場所だ。

 ≪聖女≫のクラスを持つ女性はほとんどいないが、わずかには存在する。そんな中、世界各国からその時代の大聖女と認定されるのはただ一人なのだ。


 その名もずばり『大聖女祭り』。


 その大聖女は、闘技場での個人トーナメント戦の優勝者が指名することによって決まる。


 すでに時は決勝戦だ。


 2人の男が対峙をしている。


 闘技場の観客席ではその対決を固唾を飲んで見守っていた。

 高まる緊張感に、一人の男からは一筋の汗が流れだす。


 その一人は勇者――

 人類の中で最強と歌われる人々の星である。


 そのこなた勇者に立ち向かうのは一人の痩せぎすな男――サピエであった。

 前の戦いでぼろぼになったマントは、戦いの激しさ(グレイズ)を物語っている。


 その内には青い白衣――


「よくぞ、よくぞ俺の前に現れたな。サピエ――」


 勇者は相手の名を叫びながら剣を抜いた。


 対する男――サピエは無手のままである。


 両手をゆっくりと前に差し出すとぶらぶらとまるで触手のように手首を垂らした。

 その視線は勇者をまるで射抜くようだ。


 爛々と輝く瞳に勇者は怯む。


 勇者は軽く剣を振った。


 風圧が空を斬る。


 剣劇がサピエを襲うが、サピエはほんの少しだけ身体をずらすことでそれを避けた。


 チリチリと音が(グレイズ)する。


「やはり、単発の攻撃では倒せないか……


 だが――、スキルであればどうかな?」


 勇者は剣を大上段に構えた。

 その剣はうっすらと水色に輝く光剣フォトンソードだ。


 そこから振り下ろされるのは剣士系最強とされる短距離範囲攻撃――


「我が剣術はいまだ未覚醒なり――


 なぜならば――次の、そして次の一撃こそが真なる覚醒の技であるならば――


 さぁ! 受けるがいい!」


 勇者がスキルを発動させる。


 それれは剣士系50階層、階位5段――

 最強の最終奥義(ラストワード)が火を噴いた。


 光の本流が唸る。


「《龍派(りゅうは)! 魅核闘(みかくとう)(じん)んんんん――》」


 勇者の掛け声によってスキル≪龍派(りゅうは)! 魅核闘(みかくとう)(じん)≫が成立し発動する。


 勇者が放つ水平展開された8x8、および垂直に展開された4x4の剣劇がサピエを襲った。


 それはまさに弾幕だ。


 一つ一つを回避(グレイズ)していくサピエだが、次第に狭まっていく領域に身動きが取れなくなる。


 そして――時は来た。


 ガッ――


「え?」


 一発の攻撃が当たるとサピエは死んだ。


 あまりのあっけなさに勇者は驚きの声をあげる。


 だが、攻撃は止まらない。追撃の攻撃がオーバーキルとなってサピエを襲う。


 サピエはすでにバラバラなのに、さらに攻撃によって粉のようになってしまう。


 その、あまりの攻撃の強さに闘技場を囲む群衆が息を飲む。


 いくら戦闘とはいえ――、これでは完全に殺しているのではないか?


 群衆たちが騒然とし始めたころ、その群衆の前に一人立つ少女が勇者の目に入る。


「がんばって……、サピエ……」


 そうつぶやく少女だが、サピエは既に死んでいる。


 どこからどうみとも。


 その身体は剣劇によってバラバラだ。


 これ以上どう頑張れば良いというのだろうか。


「あぁ、大丈夫だよ……」


 そんな少女に声を掛ける女性がいる。

 女性は少女の頭をぽんと撫でた。


 勇者は、その女性の名を知っていた。

 あまりにも有名すぎたのだ。


「馬鹿な――、彼女が、彼女がこんな場所にいるはずがない。


 ≪暴食之魔王たる魔王≫ベル


 おまえが――」


 群衆の視線が一斉にその女性に集まる。


 数々(あまた)の人々を殺し、大陸南部(みなみ)の住人を蹂躙した魔王ベルがなぜここに――


「ほら――、私のことよりまだ終わっていないわよ? 残念な勇者さん」


 見れば――


 サピエの身体は急速に元に戻りつつある。


 その血肉は時間を巻き戻すがごとき気持ちの悪さで物体ごと元に戻ろうとしているのだ。


 その中央にあるそれに勇者は怯んだ。


 それは目だ。


 サピエの強い眼光が黄色い光を放つ。


 あれが――世にいう魔眼なのだろうか。


「ほら、次のクローンは上手くやってくれることでしょう。おーほほほ」


 その女性――、≪暴食之魔王たる魔王≫ベルは高らかに笑う。


 そんな異様な雰囲気に勇者は飲まれた。

 勇者は叫ぶ。


「馬鹿な……、一体、あの最終奥義(ラストワード)のどこをどうすれば復活できるというのだ!」


 そういいつつも勇者の全身に寒気が走っている。


 全身を鳥肌にさせるようなそれは明らかにサピエからによるものだ。


 だがそれは、勇者の精神的なもの由来だけではなかった。


 それは明らかに魔術的な――


 勇者はサピエのその瞳が体力にDOT(ドット)ダメージを与えてくることにようやく気付いた。


 あれこそが、気持ち悪い存在だけが有するという《視姦の魔眼》だろうか。


 知らない男たちにえっちな視線で嘗め回せられるとは、ここまで気持ちの悪いものだったのかと勇者は思う。


 だが――


「だが、お前は復活したとして一体何ができる! できるのはその弱っちいDOT(ドット)ダメージだけ! まともな攻撃すらできず回避(グレイズ)だけじゃないか。その程度で俺をなんとかできるとでも――」


(しかし、奴は死んだら復活できるとか、回数制限とかあるのか? そもそも奴はどんな世界観(・・・・・・)でこの異世界を生きているのというのか――)


 それに答えたのは≪暴食の魔王たる魔王≫ベルだ。


「ほらほらぁ――、『そんな勇者程度(・・)の能力』で、サピエ程度(・・)の能力に勝てると思っているのぉ?」


 サピエの能力、それは一体……。

 まさか、俺があの日勇者となったときに同じようにサピエが獲得した、あの能力を使おうというのか。

 勇者は考える。


(だが、その能力で俺をどうするというのだ――

 そのおっぱい揉みくだし師のクラス程度の力で――

 第一、俺は男だぞ――)


 そこで勇者は思い至る。


 サピエはまさか、長時間のDOT(ドット)ダメージで動けなくなったところで近寄り俺のおっぱいを揉もうとでもいうのか。


 その考えに至った勇者の身体の全身に虫唾が走り、全身にさらなる鳥肌が泡立った。


「――だが、おっぱい揉みし師であれば対象は女だけのはずだ。そして俺は男だぞ。サピエ――貴様に一体何ができる!」


 サピエは両手の指をくねくねと触手のように回しながら、初めて勇者に語り掛けた。


「右手とぉぉ、左手でぇぇ、合わせて両刀ぉぉ―― ┌(┌^p^)┐」


 じりじりと近づいてくるサピエに勇者は後ずさる。


 勇者は本能的な恐怖を覚えた。


 勇者は再度剣圧を放つが今後も簡単にサピエにかわされてしまう。


 やつはスキルでないと倒せないのだろう。


(ならば――何度でも最終奥義(ラストワード)を放ってやる!)


 そしてスキルを使おうとしたとき、勇者の耳にブブ―と嫌な警告音がかすめた。


 システムからの始めてみるメッセージが入る。


システム:『ラストワードは同一ゲーム上同一の敵に対して使用できません――』


(構うものか。この異世界はJRPGじゃない!)


 再度勇者は警告を無視して最終奥義(ラストワード)、スキル《龍派(りゅうは)魅核闘(みかくとう)(じん)》を放つ。


 だが、今度は簡単にサピエにグレイズされてしまった。


 一度見せた技であるがゆえにサピエに既に見切られているのだ。


 勇者はついに背後を取られた。


 勇者の乳首にサピエの指が掛かる。


 サピエが背後から襲い掛かったのだ。


 そこで勇者は次の展開が読めてしまう。


 これから――勇者のおっぱいはめいっぱい揉みくだされるのだ。


「いっけー!」


 少女が叫ぶ。

 サピエは勇者の耳元でささいた。


「人という字は人と人が支え合って ホモ━━━━━━━━━━━━━━━━━ヽ( ゜Д゜)人(゜Д゜ )ノ━━━━━━━━━━━━━━━━━!!」


 勇者の身体が完全に凍り付く。


 サピエの指使いが冴える。


 光の本流がエフェクト(もざいく)となって煌めいて、そして――

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