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ヴァナルガンド  作者: 喪愛
1181年
1/4

1/1〜1/4

玉藻前

平安時代末期に鳥羽上皇の寵姫であったとされる伝説上の人物。

後に若藻という16歳ほどの少女に化け、西暦775年吉備真備の乗る遣唐使船に同乗し、来日を果たしたとされる。九尾の狐。空海を操り仏教を広める


物部 守屋

古墳時代の大連。西暦587年7月


源頼朝

源氏の棟梁。

母・由良御前の実家熱田大宮司家を通じて、

初代天皇家と縁の深い名門・尾張氏の血を引いている。

最後の大和血統である天武天皇の末裔。

後に戦国最強を作る始祖である島津忠久は頼朝の庶子。

その為か鎌倉時代を作ったのに源氏が滅びる。


菊花

大化の改新646年。

654年。斉明天皇の御世、若狭の国の高橋長者という金持ちの家に、玉のように美しい娘が生まれた。

663年。9歳の時に『白村江の戦い』を見る。

その際に菊花は唐から来た藤原が10,000超もの兵士を引き連れて都落ちした物部達を堕としているのを見る。

それが後に1500年続く『部落』でその始まりを見た。

668年天智天皇即位。

670年頃の16歳に人魚の肉を食べた事で不老不死になった飛鳥の人。

672年に壬申の乱で皇位を天武天皇に奪われる。

686年に藤原不比等が動き701年に本格的な律令体制『大宝律令』が完成。(部落の始まり)

また天武天皇の孫の『長屋王』を謀略で自害させるなど、藤原家の血のつながっていない皇子を徹底的に排除した。

『資治通鑑』によると列島に【天皇制】が誕生したのは、

唐王朝の支配がこの列島で確立した大宝律令以後。

905年に生きながらえ『古今和歌集(1000年)』に君が代を寄贈した読人しらずとして暗躍した。

1096年 第1回十字軍出発。(この時にエルサレムへ赴く)

1164年崇徳天皇の死に目に立ち会う。

1185年の安徳天皇の事件に立ち会う。この時点で541歳。1449年で京都にあらわれ「康富記」「臥雲日件録」で八百比丘尼として名を馳せる。植樹伝説や椿をもって諸国を巡歴した。因みに京に現れた時期は『戦国時代』に続く戦乱の始まりである応仁の乱よりも20年ほど前。彼女は『平安時代の終わり』と『鎌倉時代の始まり』とそして『戦国時代の始まり』を見る。

真名は『千代』。ヘブル語で『選民』。(&賎民)

通りゃんせの『菅原道真』。

刀の『平将門』。

皇室を呪う『崇徳』。

『日本三大怨霊』の死に目に立ち会う。


菅原道真(学を以って天皇に仕えようとした者)

仁和2年(886年)に讃岐守にも任じられ、4年間現地へ派遣されて善政を布いた。この人事異動を左遷と見る周囲の目があったのであるが、道真も地方官である国守は菅原家の家業ではないと断言し、不遇意識を嘆いた。文章博士として『学問を以て天皇に仕えること』こそが先祖代々の仕事であり、したがって、道真にとって、都を離れて地方に赴くことなど、ありうべからざることだったのである。大宰府に連れて行くことが許されたのは幼い子供だけで京の家では妻と年長の娘たちが留守を守ったが、門前の木を売り、在地の一部を賃借しするなど、留守宅の生活もしだいに苦しくなっていった。 「大宰員外帥だざいのいんがいのそち」と呼ばれ名前だけの高級官人左遷用ポストとして使われた。このため大宰府の人員のうちにも数えられないばかりか、大宰府本庁にも入れてもらえず、ずっと南のぼろ屋で侘び暮らしを強いられていた。2年をこの地で過ごした道真は、延喜3年(903年)2月25日、そのまま京に帰ることなく、失意のうちに配所で没した。


平将門(武を以って天皇に成ろうとした者)

関東の支配者となった「平将門」は、関東の民に非常に人気があった。武蔵国・常陸国で多額の税で苦しめる受領を結果的に追っ払ったことになったからでした。そしてその強い関東の民の支持のもと、「平将門」は「新皇」を称したのです。「自分は新しい天皇で、京に居る天皇は古い天皇。自分は「桓武天皇」の子孫でもあるため、天皇になってもおかしくはない。」と言うことなのでしょう。「平将門」はただ朝廷と対等に話がしたいがために「新皇」を称しただけで、朝廷に逆らう気はなかったのかもしれません。「平将門」が兵をそれぞれの地元に帰している時に「平貞盛」と「藤原秀郷」は4000兵を集め攻め込んできたのです。「平将門」が急ぎ兵を集めたのですが、集まった兵はわずか1000兵ほど。「平将門」が陣頭に立ち奮戦するが、数に勝る「平貞盛」・「藤原秀郷」軍がじわじわと追い詰めます。退却を余儀なくされた「平将門」は地の利がある本拠地に誘い込み逆転を狙いますが、「平貞盛」と「藤原秀郷」はその誘いには乗らず、さらに追い詰めていったのです。「平将門」は甲冑をつけたまま各地を転々とし、兵を募るのですが、旗色も悪く、朝敵とされてしまった「平将門」の味方をする者はほとんどいませんでした。そして味方の兵にも逃げられ、わずか300兵になった「平将門」軍。最期の力を振り絞り「平将門」が陣頭に立ち奮戦するが、最期飛んできた矢が額に当たり、あえなく討ち取られてしまったのでした。そしてその首は平安京に運ばれ、さらし首とされたのです。


崇徳天皇(呪を以って天皇に禍を下した者)

『日本国の大魔縁となり、皇を取って民とし民を皇となさん』。讃岐で死去。天皇の武力である天叢雲剣を扮する。


藤原鎌足

750年頃の人。蘇我入鹿を殺害し

『大化の改新』を行なった人物であるのは、

歴史の教科書に書かれてるとおりです。

この藤原鎌足こそ、藤原氏に絶大なる権力をもたらした人物であり、藤原王朝の始祖ともいえる人物です。

『資治通鑑』によると列島に天皇制が誕生したのは、

唐王朝の支配がこの列島で確立した大宝律令以後。


楊貴妃(功子内親王)

貴妃とは『皇后の次の位』を表す尊称。八百比丘尼と楊貴妃共にヤウ。人間は6年で全ての細胞を入れ替える。第1皇女功子は1179年4歳の時に行方不明になる。人魚の肉を食べる。安徳天皇が1185年に死亡した年に『八百比丘尼』が誕生。以後諸国行脚しながら800年間知られざる皇統を見守る。そして行く先々で白い椿(つばき)を植えて歩いた。それが今作のヒロイン『乙』の苗字。花言葉は『至上の愛らしさ』。


白河法皇

崇徳の爺ちゃん。崇徳天皇は鳥羽の妻待賢門院彰子との不倫の子。

なお、平清盛も白河法皇の落胤という説があり、

もしこれらが本当なら

『清盛』と『崇徳天皇』は【異母兄弟】ということになる。父が同じで母が違う兄弟。腹違いの兄弟。

白河天皇は藤原の血が薄かった為、幼少期に冷遇されたようで、藤原摂関家の勢力を最も削いだ天皇として知られる。


鳥羽上皇

第一皇子崇徳許すまじ。


後白河天皇

遊び人で要領が良い。百人一首


藤原頼長

保元の乱で失敗し讃岐に流させた畜生。その中には凋落した源氏の棟梁、為義が居た。


源為義

源頼朝・源義経らの祖父。


源頼朝

鎌倉幕府の初代征夷大将軍。後に弟の義経を殺す。


源義経

源頼朝の異母弟。幼少期の天狗伝説が有名。平家を滅ぼす。


崇徳天皇

徳島には『もう1つの天皇家の傍系』がある。アメノフトダマノミコト(天太玉命)を祖先とする忌部いんべ氏。祇園祭は阿波で始まり、それが奈良方面に移り、それから京都へ伝播したのだという説もある。日本の古代における本来の「京都」とは徳島だと言う説。四国には古事記より古い謎の奇本と称されるものがある。藤原が天皇家の血筋を乗っ取った際に斎部氏は逃れる。現代では言うと天皇家の正統な後継者は斎部氏の末裔であると言える。


土御門天皇

範子内親王の夫。崇徳に琵琶を引く天使。崇徳はお礼に子供を天皇にする。鎌倉時代に自分から阿波に赴いた。


惟宗忠久(島津忠久)

鎌倉時代以前は京都の公家を警護する武士。後に島津家を設立。1179年産まれ?1175年。

『お稲荷』とは稲荷信仰において、狐が稲荷大明神の使者であり、お告げを示すことから、狐を意味している。島津家は狐をずっと厚く信仰してきた。なぜかといえば、その初代忠久の生母丹後局が源頼朝の子を身ごもったが、正室北条政子に迫害されたので上方に逃れ、大坂の住吉大社で産気づいた。雨のなか、狐火が突如現れて闇夜を照らしてくれたので、無事男児を出産した。これが忠久だった。

これはもちろん伝説だが、以来、島津家では主に戦場で狐や狐火が登場して勝利に導いてくれたという吉瑞が島津方の史書に多数残っている。関ヶ原合戦の島津の退き口でも、狐が現れて道案内をしてくれたという逸話があるほどだ。

養和元年1月1日。


主人公は18歳

崇徳天皇が死んだのは1164年

兵衛佐局は京都に帰り出家する

重仁親王が死んだのは1162年

62年に産んだ皇子を侍従の菊花に渡し育てさせる。

14歳だが16年後の30歳になっても容姿が変わらない



忍者の始まりは600年代の聖徳太子

平安時代の始まりは794年

百済を創設したのは1000年の陰陽師安倍晴明

1160年頃に平時忠が禿(犬神人)を作り平安京内に目を光らせる

源氏を百済派が平氏を犬神人派が支援。

源平合戦は百済も禿も滅び


犬神人のスタイルが確立したのは鎌倉時代ですが、

平安末には『その原型』が存在したと思われ、

地理的にも平家の本拠『六波羅に近い』ことから、

なんらかの関係があったかもしれません。

以下は想像ですが、平家は権力の座に上るのに合わせて、童や犬神人などを配下に置いて、密偵などに使っていたと思われます。


都牟刈の大刀ツムカリノタチ

草薙のクサナギノツルギであり、

天叢雲劒アメノムラクモノツルギでもあります。

大きく曲がった“つむがりの剣”



「長さは2尺7、8寸(81〜84cm)ほどで、刃先は菖蒲の葉のような形で中ほどはむくりと厚みがあり、柄の方の6寸(約18cm)ほどは筋立っていて魚の骨のようであった。色は全体に白かった」



一般的な日本刀(打刀)の長さが、例えば江戸時代に好まれたものではだいたい2尺3寸(約70cm)




「生き肉であるか?僧侶よ」

「……左様」

松脂蝋燭を光源とする寺の仏像の前で怪しげな二人が密会をしていた。彼等が見るのは口に草の塊を咥える裸の男の子だった。

「あっちでおっ母が手を振ってくれている!」

その顔はまるでそれが人生の全てかのように歓喜に包まれている。飢餓な為か頰は痩せこけ腹が常に鳴っているが今の少年の脳裏には楽しい母との思い出が繰り返されていた。余りの恍惚感に涎を垂らしてしまう程に。

「健康的な男児で御座います故食材にでも下にでも御使い頂けまする……」

その言葉に汚れた笑みを浮かべる男は裸の男の子を抱き寄せた。

「では早速……」

そう言い行為に及ぼうとした時仏像の背後から物音がした。

「何奴!?」

僧侶は叫び声をあげる。気付かれたのにも関わらず変わらず音を鳴らす。

「カァアアアア!!!!」

直後刀を持った用心棒二人の片方が仏像の裏に回るが苦無が脳天を貫いた為血飛沫をあげて倒れた。

「なん……だと……」

その答えを示すように穴から一匹の小動物が現れた。……(ムササビ)だ。予想外の事態に男は刀を握る手を少し緩めてしまう。

(ムササビ)……!?」

凝視すると同時に仏像の頭から1人のくノ一が降ってきた。いきなりの事で対応出来ない刀の男は少女が振り下ろす鉄扇により脳天を潰された。飛び散る血飛沫が黒髪を赤黒く染める。

「ヒィイイイ!!」

それを見た二人の男は一目散に逃げていった。

「……」

「ヒヒヒ」

下から声が聞こえた少女は寝転がる少年に視線を向ける。すると少年は仰向けであった為視界に大事な物が映った。

「……」

少女は声を洩らし瞬きを数回した。

「……案ずるな。外には数十人の兵隊達がおるのだ。あの女子如き負ける筈がない」

「思い返すと京の都にあれほど美麗な女子は見た事がありませぬ」

「楽しみじゃな。寡黙な女は一度性の味を憶えるととても乱れる。……あの女子がどんな声で鳴くか想像がつかない」

そんな事を言ったのが数秒前。

「な……何という事じゃ」

「誰が殺ったのだ……」

只今外に出た二人の男は用心棒数人の骸を発見する。彼等の頭部はその傍らで転がっていた。血痕は目の前にある木の裏にまで続いていた。人影を察した男達は後ずさる。

「貴様!!公儀隠密か……!?」

「そうだ……百済(クダラ)の者共」

木の裏からくノ一が現れる。

「アァアアア!!」

一人の男は突き立てられる刀を抜きくノ一に迫った。

「一昨日は兎をみたの。昨日は鹿。今日はあなた」

少女は血に塗れうわ言を言っている少年に歩み膝を曲げる。寝転がる少年を起こし壁にもたれさせる。

「……キィ〜キィ〜」

鼯は少年をあやすように頭上で走り回っている。

「……お母さん。居ないの?」

その声質はまるで年下の子供をあやすお姉さんのように優しかった。その言葉を聞いた少年は大きく歪ませた笑みを浮かべる。

「ヒヒヒ。おっ母はおっ母だよ。誰でもない。でも今のおっ父は愉しい夢を見させてくれる薬師さんなんだ」

少女は少年の言葉を聞きながら両の手で頬を包み自分の顔と突き合わせる。

「笑わないで」

……僅かに眉を吊り上げて。

「ヒィイ!!」

くノ一に迫った男は倒れた。残されたもう一人の男は後がない事を知り腰を抜かす。

「ッ……!」

少年は真剣な表情に気圧されかけるが意地で口を歪めた。

「ヒッヒヒ……!何を言ってるの?笑ってなんていない」

「嘘」

その言葉を聞いた少年は自分の存在を否定されたような気がして胸が締め付けられる思いをした。少年は笑顔のまま瞼から大粒の涙を流した。

「嘘は……言ってないんだよ」

落ちた涙を鼯が確認するように舐める。

「笑って……」

「……ごめん」

少女は少年の頭を抱き寄せて耳を桃色の胸元に密着させる。耳から鼓動の音が聞こえる。

「ふ……ぁあ……」

「聞こえる……?」

「なぁにこれぇ」

「……生命の鼓動」

その音が心地良いのか徳は猫のように目を細める。少年は少しずつ身の上話しをし始めた。

「……前のおっ母はね。僕を捨てたんだ。呪われた子供だって言ってね……。そしておっ父と出会った」

少年は腕を少女の背中に回し耳を強く押し付ける。少女は少年の頭を優しく撫でる。

「君の名前はなんて言うの?」

「ーー僕の名前は--」

……丁度外では雨が降ってきた。

「矛を収めてくれ!」

僧侶はくノ一に請願する。良く見ると黄色い液体が地面を濡らしていた。そんな男の情けない姿を見ながらくノ一は徐々に迫る。

「誰が好き好んで人肉など食べるものか!!」

くノ一は立ち止まるも厳しい視線を男に向ける。

「お主には分からんのか!そもそも今の飢餓だって平氏と源氏の争いから始まったのだぞ!!」

男は後ろに後ずさりながら大声をあげる。

「これはつまる所……崇徳天皇の呪いなのだよ!!お主も知っておろう!!!奴が死に際に『皇を取って民とし民を皇となさん』と皇室を呪った事をォ!!」

「それがどうした」

「平氏と源氏……双方が争う今の現状であるが崇徳の呪いが真であるならば勝つのは『どちらでも無い』!」

「……」

「どちらも負けるのだッ!平清盛も!源義経もォ!!」

男は落ちた刀を拾い斬りかかるがくノ一により両腕を斬り離された。そして背中から地面に倒れる。

「ハ……ハ……!」

「……遺言はあるか?」

男は空に浮かぶ『三日月』を見上げる。

「穢多と呼ばれ……賎民と呼ばれ……。我等が悪習は連綿と続き早幾星霜」

くノ一は眉を顰める。

「『部落』とはこの国に於ける闇そのものなのだ……。それは藤原鎌足が百済(クダラ)から2000の兵を率いた時。聖徳太子が仏教を古神道に混ぜた時より始まる。奴等。代々言い伝えられる『かごめ唄』を実現させる為に罌粟(ケシ)をこの国に齎す気よ……!」

「ッ!かごめ唄だと!?」

くノ一は男の胸倉を掴む。男はそんな焦った表情を満足そうに見ると遺言を遺した。

「ヒヒッ……。『十二神将』に気を付けるんだな」

×××


「……んぅ?」

朝日は昇るにつれ起きた鳥達の鳴き声が山中に木霊する。少年は意識を覚醒しつつあるのか閉じた目を痙攣させる。囲炉裏か火鉢があるのか暖く心地いい。

「何やら後頭部が柔らかいぞ。それに身体の節々が痛いし凄く怠い」

そして目を開く。

「あ」

目と鼻の先に見惚れる程の美少女が居た。何故か目が充血していた。

「……」

凛とした上品な顔立ちの女の子だった。身を包む物として乙女色の湯帷子、撫子色の帯締め、藍鉄色の小袴、青藍と薄花色の袖がない羽織を纏っている。髪を二つに分け、それぞれを大きな二つの輪にして後頭部で一つに纏め上げて根元を細幅の白い絹でしっかりと結わえ、そして頬に垂れる髪を桃の絹で装飾していた。時折垣間見える眉毛が美しい。

「キィ」

頭には(ムササビ)を乗せている。

「……」

「……」

少年は山伏を着せられ少女に膝枕をされていた。少年と少女は数秒間見つめ合う。……女の子の匂いがする。それに何故か懐かしい感じがしないでもない。寧ろ驚かない事が当たり前かのようで。

「そろそろ起きた〜?」

女性の声が聞こえた。少女がそちらを振り返っている隙に再び目を閉じた。

「ま〜だ起きてないのね〜……。そんなに居心地が良いのかしらね??」

「……」

少女は呆気に取られたように声を洩らす。その事を察する少年は冷や汗を流す。気付かれないようにただただ目を閉じ続ける。

「もう朝ご飯出来ちゃっているのに」

「……献立は何?」

「お腹に良い物をと考えてお粥にしたわ。ほら!ここに」

芋の香りが鼻を擽る。しかし動いてはいけないと思いジッとする。

「……菊花。仕事に行かなくて良いの?」

「いっけなーい!(キノト)!!ちゃんと食べさせといてね!!!」

菊花と呼ばれる女性は木の御盆を乙と呼ばれる少女に手渡すと慌ただしく走り部屋を出て靴を履いて家を出た。乙はお盆を横に置いて木の茶碗と木の匙を手に持つ。

「お腹、空いてない?」

「……」

少年は答えない。

「食べさせてあげる」

茶碗と匙を鳴らす音が聞こえる。粥を掬い口元に運ぶ。湯気が唇を摩る。

「……何故」

疑問をぶつける為に口を開いた少年だったがそのせいで冷めてない熱々の粥を舌に放り込まれた。ちなみに少年は猫舌だ。

「あつち!!」

思わず目を見開き粥を吐き出してしまう。そのお陰で乙の鼻に唾と米を付着させてしまう。落ちた米粒を鼯は食べる。

「あ……」

自分の仕出かした事の大きさに顔面を蒼白する少年。だが乙は指で米粒を拭うと首を傾げ一言。

「……?熱かった??」

「なん……だと……」

少年は文化的衝撃(カルチャーショック)を受けた。今まで女と二人っきりで話したこともなくましてや食事なんてした事もないし食べさせて貰えるなんて夢のまた夢な人生を歩んでいた為女と言えば春画な彼からすれば目の前にいる絶世の美少女はまさに天女。

「……お主はもし着替えを覗かれたら殴ったりする女子であるのか?」

その質問に初めて表情を怪訝に崩す乙。

「……何でそんな事をする必要があるの」

「……お主はまさしく日本人形じゃ」

思わずこんな言葉が漏れた。その言葉を解せないのか乙は顔に謎を浮かべる。

「将来は和風美人確定じゃ」

「……ありがとう?」

乙は頭を下げてお礼を言う。貧しい胸が鼻先にまで迫り柔らかな絹の匂いを嗅げた事に恍惚とした感情を覚える。

「ふーふー……はい」

冷まさせたお粥を口元に運ばれたので食べる。

「おいしい?」

「悪くない」

「ふーふー……貴方が好きな具材は何?」

「あむ。鮭」

「ふーふー……じゃあ今度一緒に獲りにいこう」

「えぇ……。むぐ」

何でこんな事になっているのだろうか?とお茶を飲まされながら思う。

「さっきから気になっとったのじゃが」

自分の腹に視線を向ける。そこには(ムササビ)が夢心地に眠っていた。

「この狸は何じゃ?それにお主は奇妙な物を羽織っておる。何じゃその青いの」

その問い掛けに乙は茶碗と匙を横に置いて腹に眠る鼯を抱き包む。

「フウは(ムササビ)なの」

そして少年の耳元に鼯を近付けた。

「ほら」

ついでに顔も近付けている為乙の声が耳元で囁やくように聞こえた。少年は思わず身体を震わす。

「お主はフウと呼ばれておるのか?」

「フウは顎を撫でられるのが好き」

フウを撫でていると乙が口を出した為顎を撫でる。

「……それにこれは『機織部』と言う人から貰った物。私にも良く分からない」

「ふーん」

するとフウにウレションをされ袴が濡れた。

「きったね!???」

少年は頭を起こす。だが身体に節々が痛んだ為腕で身体を抱く。余りの痛みに目を開けられない。

「イッツ……」

やっと目を開くと無表情ながらも怒気を滲ませている乙が少年の顔を覗き込んでいた。

「……昨日無理をした。安静が必要。だから食べる」

「オゴゴゴゴ!??」

乙は少年の口を無理やり開けて冷めた粥を流し込んだ。そして口を閉ざし呑み込ませた。

「飲む」

「んー!んー!!」

お茶を無理矢理飲まされた。そして疲れ果てた少年に一言。

「脱いで」

「ハァ!?貴様!儂の天狗様を見るつもりか!?そんな事をやられては儂の威厳に……」

「……昨日見た。そして威厳なんて無かった」

「え?」

「後入る前に出しておいて」

「は?何を……」

乙に背負われ外に出された。家は寝殿造りの板屋で家の横に蒸し風呂が備えられていた。

「わ〜。葦じゃなかったんだ〜……」

「竪穴式住居は地方民の住まい。京では常識」

「京民陰湿過ぎない?」

そんな抵抗も虚しく下半身を脱がされ樋箱(ヒバコ)の上に腰を落とされる。

「え?嘘じゃろ??儂ら今日初めて会った筈じゃろ???それなのにコレとかお主見てくれに似合わず虐めるのが好きな方か?周りの動物達も困惑しとるぞ」

上を向けば木の枝に三匹の猿共が指を指して鳴き声をあげていた。

「キーキキキーー!!」

「キャキャキャキャ!!」

「ウキキ!!ウッキーー!!!!」

「笑うなぁ!!糞猿共!?」

「……排泄物なんて私程になれば慣れる」

「お主穢れすぎじゃない!?第一印象と全然違うぞ!!」

直後大自然の中で脱糞をする羽目になる。

「嗚呼アアアアアアアア!??」

しかも同い年の少女に視られながら。

「ウキィ……?」

「キキ〜……??」

「ウッキ〜……??」

余りの光景に目を合わせる三匹。そして両手でそれぞれ目、耳、口を隠すのだった。

「嗚呼……」

乙は放心している少年を玄関に置くと部屋に戻り普段着を脱ぎ入浴用の湯帷子に着替える。蒸し風呂に入るとき、湯気で火傷しないようにとの配慮だ。それに続き少年を脱がせ木綿製の褌だけとすると手早く同じ色の湯帷子を着替えさせて入浴の準備を整える。乙は少年を担ぎ一緒に家の横に備えられる『蒸し風呂』に入った。今日は体調を配慮して薬草を蒸す薬風呂だ。

「風呂まで付き合うのか……。と言うか準備しておったのか」

「うん。貴方が起きる前に」

突っ込む気力も失せたのかされるがままに受け入れる。乙は少年を向かい合わせに座らせる。きちんと二人は尻の下に布を敷いている。

「キィ」

フウは部屋の外で警備をしていた。

「……」

「……」

二人は壁にもたれ向かい合っている。乙は紐を解き垂髪となっている為か先程と印象が大分違う。恥ずかしさの余り視線を逸らすが乙はじっと見つめる。

「飾りけもなくすっきりと清らかなさまよの」

「?」

「控えめで清潔感がある容貌に、謙虚なふるまいをし、慎ましい美しい身のこなしと言う事じゃ」

「ますます意味が分からない」

「『大和撫子(ヤマトナデシコ)』だと褒めているんじゃ」

「……。ふ〜ん」

興味がない返事をした乙は立ち上がって起きた時と同じ距離まで近付く。

「っ」

髪が汗を掻く額に張り付いているのか色っぽく、少し腕を動かせば抱きしめ密着出来る程に人肌が近い。少年は胸が苦しくなり煩悩を振り払う。続いて紛らわすように身の上話を始めた。

「……儂は(トク)と言う者!此処に来る以前とある旅の和尚と行動を共にしておった!」

直後乙が僅かに揺れ荒い息を吐いたような気がしたが見た感じ気のせいらしい。『徳』は気にせず言葉を続ける。

「以前にはおっ母が居ったんじゃが生憎旅先で逝き一人で放浪しとった所を和尚に拾われた」

「……」

「和尚は言うたんじゃ。旅は道連れだと。たまたま和尚が故郷に帰っている所を儂も同行させて貰い何れその地に根差すと約束しとった」

「……」

「和尚は……儂みたいな士農工商の更に下の家畜を匿いあまつさえ旅に連れ立ってくれた」

「……」

「嬉しかったんじゃ。ついに儂にも父親が出来たんじゃと」

「……」

徳は息を整えた。これから大事な事を聞く為に。

「何故……お主は儂の名前を聞いてこんのじゃ乙?何故矢継ぎ早に行動を起こす?」

徳は乙の表情を伺う為床を直視し心の準備を整えていく。……顔を見上げて声をかける。

「……何故そこまでして儂を」

見上げた直後頬っぺたに水滴が落ちた。徳は乙の表情に目を細める。

「っ」

乙は先程の無表情とはうって変わり止め処なく大粒の涙を流していた。幾つもの涙が徳の頰に落ちる。

「何故……泣くのか」

「貴方はまたひとつウソをついた」

すると乙は徳を押し倒した。艶のある長髪が徳の頬を撫でる。髪が顔面を叩く。

「ちょ!?」

只でさえ蒸し暑いのにこんな事をやられたら頭などに血が上って不味い事になる。徳は必死に顔を背ける。

「昨日貴方は私に対して節操のない事をした。貴方である事を知らなかった私はそれを受け入れてしまった」

「は?」

「私の胸に頬擦りをしたり、背中に手を回して胸を弄ったり、私の膝を頬擦りをしたり」

「いや。文言可笑しくないかの?何故に両手を回して胸を弄る事が出来ようか?それではまるで儂が赤子みたいに……」

背けていた顔を恐る恐ると戻す。

「私を……また家族と呼んでくれた」

眉を八の字にし上目遣いをしていた。

「家族……」

「……本当に憶えていないの?【徳】」

(イサオ)?」

「うん。三年前私に教えてくれた名前。苗字は『機織部』。貴方は【機織部徳】……」

機織部……。羽織の時に聞いた名前だ。つまりアレをあげたのは。

「アレをお主にあげたのは3年前の儂であると?」

「うん。初めて会った冬の日私は1人で静かに泣いていた。震えていた私に対してあの羽織を着させてくれた」

「……」

「別れる時あれを貴方から貰った。そして忘れない為に毎日着ていた。それなのに……貴方はあんなに変わり果ててしまっていた」

「!?」

乙に顔を胸に埋められた為徳は身体を硬直させる。

「ヒック……ヒック……」

見ると乙は表情を歪ませて泣いていた。涙が汗と共に湯帷子に染み込む。泣き止ませる方法を知らない徳は慌てふためく。

「嘘つき……嘘つき……」

泣き噦る様子を見た徳の胸に鈍い痛みが走る。薬風呂の効能のお陰で僅かに動かせるようになった腕をあげ指で自らの目頭を抑える。

「すまぬな……」

徳は乙に貰い泣きをした。そしてだんだんと意識が遠のいていく。徳は遠のく中最後の後悔をした。

「蒸し風呂に入っとるんだった」

「私達がいなければ逆上せて死んでますよ。『華龍』さん」

「……そうだな」

菊花と華龍がそれぞれ蒸し風呂から出した徳と乙を抱えていた。部屋の隅に重ねた筵の上に2人を寝かせる。束ねた筵を枕に布団として一回り広い筵を一緒に被せた。

「……」

「……」

乙と徳は気持ち良さそうに寝ていた。

「乙が泣くなんてこれで3度目ですね」

「あぁ……」

華龍は昨日の夜を思い出す。

『華龍!!』

男が死んだのと同時に乙が慌ただしくやってきた。腕には徳を抱えている。理由を聞いた華龍は驚く。木に凭れている徳を見る。

『……何!?あいつが!!』

『早く菊花の所に連れて行ってっ!じゃないと徳が……』

乙は普段からは想像もつかない程焦った様子で華龍に縋る。それを聞いた華龍は苦悶の表情を浮かべる。

『しかし菊花は此処には……』

『イマスヨー!!』

菊花が居なければ徳は危なかったし乙の心にも癒せない傷が付いていた。

「どうするんです?」





「罌粟と呼ばれる物だ。お前は

だから暫く

①本当の天皇家 実在の初代天皇 ~ 称徳天皇

(継体誕生450年、称徳誕生718年と考えると268年以上)

②桓武王朝(光仁王朝) 光仁天皇 ~ 堀河天皇

 (約370年間)

③藤原すり替え王朝 鳥羽天皇 ~ 現在に至る

 (約900年間)


神武天皇及び建国日は『紀元前660年』。

天武天皇の孫『長屋王』は701年に自害。

聖武天皇の子『安積親王』を暗殺、

藤原一族による横暴に危機感を抱き

改革を進めていた「菅原道真」の追い落とし

神武皇族の血統は【1041年】で終わる。

701年〜2018年の【1319年】を神武天皇から続く万世一系と騙り続ける。(藤原鎌足は中国人)

伊勢神宮が天皇家の氏神(天照大神)を祀る神宮として信仰されるようになったのも天武天皇の時代になります。


徳島には『もう1つの天皇家の傍系』がある。アメノフトダマノミコト(天太玉命)を祖先とする忌部いんべ氏だ。祇園祭は阿波で始まり、それが奈良方面に移り、それから京都へ伝播したのだという説もある。日本の古代における本来の「京都」とは徳島だと言う説。また、『諏訪大社』の元宮は徳島にあったとされる。


主人公

「皇室の穢れを一手に担う元犬神人。

中臣本宗家は忌部氏とともに神事・祭祀をつかさどった海人系豪族。(レビ族)

蘇我氏により物部と一緒に都落ちし部落となる。

つまり主人公は中臣と忌部の血筋を引いているが部落に押し込まれていた。『日本最高の貴族』とも言われ、天皇に次ぐ地位に居続けた藤原氏だが本当の正当性はこっちにある。

後の崇徳天皇により

『皇を取って民とし民を皇と成さん』と呪われるようになる」


鎌足が称した「中臣姓」ですが、

中臣本宗家は、古代の日本において

忌部氏とともに神事・祭祀をつかさどった海人系豪族でした。

が、物部氏とともに仏教受容問題で

蘇我氏と対立したために没落、

『白川家』が神祇伯を世襲するようになると歴史の舞台から消滅しました。


白川家


保元の乱で後白河天皇の信頼を平治の乱で太政大臣となり

1160年に『六波羅の禿』を創設。

儀助は初期禿の長。10歳の時に平清盛に仕え以後20年間『検非違使』として非人達を扱う。


ヒロインは供御人(天皇の直属民)

鋳物師・木地師・河原者・牛飼・馬借・遊女・白拍子・桂女・傀儡・大原女・辻子君の11種


<椿乙>

ヒロイン。後に座敷童となり見続ける。

【理想の愛】【謙遜】【誇り】【完璧な魅力】

乙女色(控えめな美、控えめな愛)

撫子色(いつも愛して、思慕、大胆、純愛、貞節)

深紫色=(弱さを受け入れる勇気)

青藍色(物悲しさ)

薄花色(心の移ろい)

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