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星あつめ

作者: 二ノ宮明季

 星を追いかけていた。まるで遠い夢のように。

 ドキドキ、ワクワク! 君の隣で気分は高揚する。

「向こうが穴場だって!」

 君が笑う。

「そっか! じゃあ早く行かないと!」

 僕も笑う。

 僕たちは虫網を片手に、そしてボウルをもう片手にしながら走り出した。




 遠い昔、星はたまに空で瞬くもので、はたまた流れるもので、決して触れる事の出来ない物だったらしい。

 けれども今は、僕らの主食だ。正確には、パパとママにとっての主食……らしい。

 ある日チキュウが大爆発して、星がわらわらと降ってくるようになったとか。……あれ、逆だったかな。

 まぁ、とにかくここは、そのチキュウの名残で、沢山の星が散らばる場所。

 たまにその辺から、昔の資料が出て来るらしい。空を見て、星を見て、占いをしたのだろう、というのが、現在の大人の見解だ。

 その昔、きっとニンゲンは届かないから欲していたのだろう。僕たちの食べる、星を。

「ほら、早く!」

 君は虫網を振って、僕を促す。僕は僕で「うん!」と大きく答えて、ついて行く。

 穴場だと言う場所は、本当に穴場で、穴場と言うか洞窟で、おおよそ星があるようには思えなかった。

 だが、僕はついて行く。ありえない場所にある。それがまた、楽しい気持ちに変わっていくのを、僕は知っているから。


 洞窟の中は真っ暗だったが、僕たちはあらかじめヒカリゴケを毟ってきている。

 ほのかに発光する苔の明かりだけを頼りに、ドキドキワクワクと先に進んだ。

 入り組んだ道を抜けた先には――

「わぁ!」

 光り輝く池があった。

 中には、夥しい量の星。星が水の中で、キラキラと輝いているのだ。

 本来であれば、星は光っていない。

「これ、本当に星?」

「星にしか見えないだろ? だって、そういう形をしてる」

「そうなんだけど、ピカピカだからさぁ!」

 僕が驚いている内に、君はさっさと虫網を水の中に沈めて、星を掬おうとしていた。これじゃあ、虫網じゃなくて、タモだ。

 けれど、そんなのは何だっていい。

 僕も欲しくて仕方が無くなって、虫網を水の中に沈め、星を掬う。

 キラキラと光る星は、僕の手の中でもまだ光っていた。とっても綺麗だ。

 嬉しくなって、救った星をボウルに入れて、もう一つ、もう一つと星を掬う。

「楽しいね!」

 僕が笑う。

「うん! 嬉しいしね!」

 君も笑う。

 僕たちは幸せだ。こんなにご飯を手に入れられた。

 こんなに美しいご飯……うーん、食べるのがもったいない。

「パパもママも、喜ぶかな?」

「絶対喜ぶよ!」

 僕たち、子供は、皆パパとママの為にも星を探す。全てはパパとママに喜んでもらう為に。



「0225、0226、帰還。未確認の鉱物を採取」

「早速検査に入る」

 白衣の人間は、シェルターの中で口にした。

 硝子越しの部屋には、ロボットが二体。このロボットが、地球の中を探し回り、隕石がぶつかり、世界が崩壊した理由を探している。

 もう、百年も前の話らしい。

 巨大な隕石が地球に落ちて、それを皮切りにいくつもの隕石が落ちてきて、世界は崩壊した。

 生き残った僅かな人間は、どうにか「シェルター」と呼ばれる居住区を作り、自分達が住める環境の場所を増やそうとしていたらしい。生きている人間は少ないが、代わりに百年の月日をかけて、高性能になったロボットが、今は世界を探索している。

 今生きている人間に、当時の隕石の騒動を目にした者はいない。

 けれども彼らは貪欲に、土地を広げ、生きていこうとしていた。

 ロボット(子供)達に、荒廃した土地()で元気に遊んでもらいながら……。

 水に沈んでいた石は、星ではないのかもしれない。けれどもロボット(子供)達は、はしゃいで人間(パパとママ)に、全てを渡した。



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― 新着の感想 ―
[一言] 素敵なSFショートショートをありがとうございました。こういうお話しが好きです。
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