2・食堂
翌日のホームルームで、先生は来なかった。
教頭曰く《一身上の都合》だというが違う気がしていた。
事態が急変したのはホームルーム後すぐだった。
『全校生徒、至急体育館に集合して下さい。
臨時集会を開きます。生徒は直ちに体育館に集合して下さい』
校内放送が鳴り響き、何かが起こっている事は確かなものとなった。
残念ながら依都歌の嫌な胸騒ぎは、その予感は的中してしまったのである。
「・・・えー・・・」
校長は話が長い。それはどの学校でもある事だが、この高校の場合、教頭も長い。
前振りとか要らねぇよ、と内心文句を言いつつ、耳を傾け、無意味の中に散りばめられた意味を聞き逃すまいと集中する。
「・・・というわけで、本題に入りましょう。
実は、とある女子生徒が昨晩、遺体となって発見されました。
彼女、九十九木 楓旗さんは優良な生徒で・・・」
ガヤガヤとした中に『九十九木なんて奴いた?』
『しらなーい』なんていう声がちらほらと聞こえて心底、腹が立った。
どいつもこいつも、興味のない人や嫌いな奴の事は眼中にないのだ。まして、それが目立たない奴なら、尚更。
彼女は死んでしまった。好きだったのに気持ちを伝えぬまま、二度と会えない場所へと逝ってしまったのだ。
その現実を受け入れたくなかった。
嫌だ。そんな事有って良い筈がない、と。
だが、昨晩の光景が脳裏に蘇って、無意識に僕は涙していた。
何も言えず、何も言わず、無言無音で。