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8.王との謁見

 俺は王都のイシュト城にきていた。

 今回の件の経緯を話すためだ。といっても現在、あっさり解放されて自由の身となっている。

 正直もっと、高圧的な尋問を受けるんじゃないかと思っていたから少々拍子抜けしているところだ。


 話しをした後に何故か城の一室に通されて、丁寧な御持て成しを受けてくつろいでいる最中だ。

 初めてメイドというものを目の当たりにしてちょっと感動していたりする、本当に実在してるんだなぁ……あぁ紅茶が美味しい。


 束の間の優雅な休息を取っていると、使いの人があらわれた。

 そろそろ帰してくれるのかと思って付いて行くと、ん?妙に大きな扉の前で止まったぞ。

 そして謁見の間へと通されていた……。


 そこは広く豪華な作りの中にも凛とした威厳さえ感じられる部屋だった。

 開かれた扉から一歩踏み込んだ瞬間、何とも言えない重圧に全身を支配されたような感覚に陥る。


 緊張で変な汗が背中を伝っていくのがわかった。

 まさか王様に会うことになるなんて、さっきまでは思ってもみなかった。

 何を言われるんだろうと思考を巡らせている時だった。


「やー! グレン、君も陛下とおしゃべりしにきたのかい?」


 そこにはなぜか俺の叔父がいた……ん?リーザとローザもいるな。

 やけに王様との距離が近いのは気のせいだろうか。


「えっと叔父さん?」

「はいはい、なんですかー?」

「どうしてここにいるんでしょうか?」

「それは今から陛下が話してくれるからね」


 とりあえず混乱したまま王様の前で膝をついて挨拶をする。


「お、お初にお目にかかります陛下」

「あー、いいよいいよ! 堅苦しいのは苦手でね」


 そう俺に言う人物はこの国の王、アルヴァ・スター・アーシラだった。

 どうやらお堅い人ではないらしい。それでも服の上からでもわかるような鍛え抜かれた体に、厳しくも優しい雰囲気を纏っている。


「君は昔から変わらないね、アルヴァ」

「これでも民の前では偉大な王として通っているんだぞ」

「えー! 叔父様ってそんな偉大って感じしなくない?」

「リーザ! 思ってても言っちゃダメだよ~」


 王様と普通に会話してる叔父一家、そんな様子をただ眺めていることしかできなかった。

 あの緊張感は一体なんだったんだろうか。


「……と、グレン君だったね。話しはエルネストから聞いてる。今回の件はこちらの要請でね。あの貴族を捕まえるためとはいえ、巻き込んでしまってすまなかった」

「えっ陛下直々に、ですか? でもあの薬っていったい?」

「うむ、あれはハーティ殿が今回のために作ったもので、おびき寄せるための餌というわけだ。前々から不審な動きはあったんだが、中々逃げるのがうまくてね手を焼いたよ」


「モンスターが強化されていましたが、あれは?」

「彼女が作る物はかなりの魔力が注がれていてね、それは魔石を加工するときに使われる量と同等のものだ。奴はそこに目を付けた……というわけだ。もっともそれに気づいた彼女は早々に対策を取ってそうならないようにはしていたんだが」


 うーん、ただの傷薬でああなるとは思わなかったけど、魔石加工と同じくらいってことは相当なんだろうな。


「それでも自分の私兵を投入して対策外の物、つまり初期の薬を密かに集めて色々実験していたらしいね。証拠を押さえようにもどこからか嗅ぎ付けて実態を掴ませてくれなかったんでね」

「それで今回のことを……」

「そう、ハーティ殿とエルネストたちに動いてもらっていたという訳だ」


 ハーティさんはわかるけど、なんで叔父さんなんだろう?


「どうして? という顔だね。エルネストとは昔学問を共にした仲でね、数少ない親友といってもいい。残念なことに国も一枚岩じゃないからね、信用のおける人物に頼んだまでさ」

「僕もアルヴァの頼みじゃ断れないからねー、いろいろ融通してもらっているし持ちつ持たれつってやつかな!」


「フォルセでのことはハーティ殿に一任していたんだが、運悪く薬草を集め、薬を運搬する役になってしまったのが君だ。もっともエルネストの調べでちょうどいい人材だろうと仕組まれていたみたいだが……」


 どうりで順調にことが進んでいたわけだよ、叔父さん!可愛い甥を危険な目にあわせてくれるなよ!


「まぁまぁ、そう睨まないでくれよグレン。冒険者になったんだしいい経験になったろう?」

「下手したら死んでたけどね……!」

「そうならないための、この子たちだったのさ!」


 いや、そうなんだろうけどあなたの娘さんの爆発も危なかったんですよ?と過ぎたことは言わないでおいた。


「ともかくグレン、しばらくはここに滞在するんだろう?」

「まぁせっかくここまで来たわけですし、ここで活動していきたいと思ってますけど」

「うん……そこなんだがここらのギルドに君の受けれるF~Gの依頼は無いんだ。最低でもDからだしね」

「……ということはブロンズのままじゃ依頼は何もできないってことですか?」

「そうだね、それに君はまだ弱いし修行も兼ねて迷宮に潜るのが妥当かな? うまくいけばランクも上がって依頼も受けられるようになるしね」


 まさか依頼が受けられないなんて……。

 でも今回の件で俺の弱さも身に染みたしここは乗ってみるか?


「よーし! 迷宮でも何でも行ってやりますよ!」

「面白そうだしあたしも行くー!」

「リーザだけじゃ不安だから私も……」


 双子も付いてくる気満々だな、遠足じゃないんだぞ?


「うんうん、じゃあ今から君たちはチームだ! 頑張りたまえよ! というわけでアルヴァ、僕たちはこれで失礼するよ」

「はぁ……お前は相変わらずマイペースだな、また何かあったときは頼むぞ?」


 こうして俺たちは城を後にし迷宮探索に行くことになった。

いつの間にやら迷宮へ向かうことになりました。

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