表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/32

5.王都アーシラ

 父さん、母さんお元気ですか?

 俺は冒険者になって忙しくも楽しい毎日を過ごしています。今では王都アーシラに滞在していたりと順風満帆です。

 初めて来たときは、あまりの人の多さに圧倒されていましたが、街の方たちはとても親切にしてくれています。

 早々に住むところを手配してくれたり、食事の用意までしてくれて至れり尽くせりなわけです。

 少々日当たりが悪く、隙間風が盛大に入ってきたり、料理も冷めている気もしますが、そんなことは些細なことです。

 ここで生活できるだけとてもありがたく思います。

 今は次の仕事が入るまで暇をしているので、こうして手紙を書けています。

 しばらくはこちらで活動すると思うので、中々帰ることができませんが父さん、母さんもお体に気をつけてください。 グレンより


 ……そんな書いたばかりの手紙を力なく破り捨てた。


「どうしてこうなった」


 そんなことを呟くも誰も答えてくれない。

 ここにはグレン一人しか居ないのだから……。


 現在俺はなぜか囚われて地下牢に放り込まれている。日の光も入ってこず、鉄格子からは風が入り放題、冷めたスープに固いパン。

 ハーティさんも同じようにどこかで捕まったりしていないだろうか?心配だ。


 まずは冷静になって事の経緯を思いだしてみよう。


 航海は順調でハーティさんの言っていたように二日で港に到着した。

 降ろした荷物を手配した馬車に積み終えたところで、ハーティさんとは別行動をとることになった。

 なんでも済ませないといけない別件ができたとのことで、先に王都の店まで荷物だけ届けるよう言われた。

 仕方なく渡された地図を頼りに進んでいく途中、関所がありそこで積み荷の検査が行われていた。さすがは王都、こういう安全対策も万全というわけだ。

 俺の番がくるとすまないが規則だからと言われ、いえいえ大変ですね~と平和なやり取りをしていた。向こうでは別の兵士が木箱を開けて小瓶の中身を確認していると、何やら慌ただしくなり複数の兵士が集まり、ボソボソとこちらを見ながら何か話しているのを不思議に思っていると、有無を言わさず拘束、連行されて現在に至る。


 場所を把握しようにも拘束されると同時に目隠しをされたから見当もつかない。音だけで判断するにどこかの屋敷の地下ってところだろうか?てっきり城の方に連れて行かれると思っていたのに。

 途中で積み荷だけ別の連中に引き渡している感じだったけど……。


「はぁ……」


 溜息を吐きながらどうすることもできず、途方に暮れていた。

 何もすることができずに、ただただ座り込んでいると、なにやら上の階が騒がしくなってきた。

 それからしばらくすると扉が開く音が響き、誰かが階段をおりてきた。


 足音がこちらに近づいてきて牢屋の前に立ち止まり、こちらを見下ろしながら声をかけてきた。


「小僧、あれらをどうやって手に入れた?」


 いかにも悪人面な小太りの中年男が数人の私兵を従えやってきた。おそらく貴族か何かだろう。


「……俺は依頼で薬を運んでいただけです」

「ふーむ、なるほどなるほど、いや何も言わなくてもわかるぞ」


 一人で勝手に納得してうんうん頷いて、こちらのことなどどうでもよさそうだ。


「ではもう一つだけ聞かせてもらおう、貴様魔女に会ったな?」

「魔女?」


 ハーティさんのことだろうか、確かに最初魔女かもって思う風貌だったけども。

 とにかくこの言いようだと捕まってはいないようだ。


「そうだ、この薬を作った魔女のことだ」


 そういって手に取った小瓶を満足そうに眺めている。


「その傷薬がなんだっていうんですか?」

「これが傷薬? ぐふふふ、そうかそうかこれがそう見えるか」


 気持ち悪い笑いをして馬鹿にしてくるのがたまらなく不快だった。

 オリジナルの傷薬じゃなかったのか?だとしたらいったい。


「その薬って?」

「知ったところで貴様には関係のないこと……待てよ……なるほどなるほど」


 話し途中で何か思いついたのか笑みを浮かべ一人頷いている。

 あー、これは悪いことを思いついたようだ、とすると流れが見えてきたぞ。


「儂の素晴らしい頭脳に感謝しろよ? 特別にこの薬のすごさを身をもって体感させてやろうではないか」

「ですよねー、そうくると思ってました」

「ほうほうそんなに嬉しいか! だがすぐに、とはいかんのだ」


「それなりの準備が必要でな、なに明日までのことだ。」

「ワータノシミダナ」

「ぐふふふ、この薬があれば後はどうにでもなる、魔女の奴もすぐ捕まえてやる」


 そう言うと男はいそいそと地下から出ていった、なにやら兵士たちに憐みのような目をむけられていた気がする。

 明日何されるんだよ?あの薬って死ぬことはないんですよね?ハーティさん……。


 しばらく静かだったが、約束の時間らしい、俺はまた縛られて兵士に外に連れ出されていた。まだ外は薄暗い。

 深い森の中ぽつんと建っている屋敷から進むこと数分、どうやら目的の場所に着いたらしい。

 そこは少しひらけたところになっていて、さっきの屋敷ぐらいの大きな檻がその中央付近に置かれていた。

 俺は縄を解かれ檻の中へ放り込まれる。、さすがに牢屋から檻の中に引っ越しってことじゃないよね。


「儂は寛大だからな、これは返してやろう……せいぜい長く楽しませてくれよ?」


 そう言うと俺の持っていた装備一式を投げ入れてくる。


「よし、あれを持ってこい」


 そう言う男の手には例の小瓶、命じられた兵士がゆっくり鎖に繋いだなにかを連れてくる。

到着するなり捕まえられてしまいました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ