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ダブルソウル『にこたま』  作者: 三島 宏幸
13/13

ほったいもいじくるな

ひめと右京は先生の背中に乗って飛んでいる。まだ本調子とは言えない先生だけど、オレはあの後、何も出来なかったからな。帰りくらいは送らないとな。と、殊勝なことを言って、無理して飛んでくれている。急がないで良いよ。安全第一でお願いします。ひめは着物が気になるみたいだ。


「あーあ…ココとココ…こっちもかぁ…」


ひめも頑張ったもんね…着物もあちこち破れて傷んでしまったね…でもひめがケガしなくて本当に良かったよ。


「ありぁ?」


着物をいじくってたひめが袖の中に何か見つけた?


「えへへっ!まだあったわー弾!こりゃーサムライエッジのマガジンじゃね!ほら」


カシャ


パシュパシュ


やっぱりひめは天然だ…まあ良いよーなんとかなったしオッケーさ。


「ねぇ…この下って永吉郎らーを降ろしたとこよね…?」


「うん!他にも徳川軍の人達がいっぱいいたよね」


「…死体がいっぱい…永吉郎らーは大丈夫なん?」


「あ…うん!麻敷の連中は皆、元気だって言ってたよ」


「…あれは徳川の人らーなんじゃね…かわいそう…」


「うん…かわいそうだね…」


「しろたん。あそこに降りて。うちはあそこから歩いて帰るよ。皆の霊も一緒に連れて帰る」


そう言ってひめは戦場後に降り立った。死体になった侍達、一人一人に何か呟き手を合わせる。右京が目を背けたくなるような悲惨な死体にも、ひめは手を触れ慰める。ひめの手は血で真っ赤に染まっている…慈愛に満ちたそんなひめを右京は誇らしく思う!

しばらくそうしてから、また二人は歩き出した。皆で江戸に帰ろう!



ドドドドド!


音のした方に目を向けると、江戸の方から仰々しい大名行列が近づいて来る。あれは徳川の旗印、葵の御門だ。行列は二人の前で止まった。


「お前らが此度の騒ぎを治めたという麻敷の二名か?」


高飛車な物言いに正直腹が立ったが右京は、ハイとだけ答えた。


「麻敷の者よ泣いて喜べ!此度の働きを将軍様がたいそう感心なされてな!なんと将軍様直々に迎えに来られたのだ!」


「別に頼んでないし!」


「あぁ?何か言ったか?将軍様がお呼びされておる!さあ、あの『乗物』に早よう!くれぐれも粗相のないようにな!」


ひめはブツブツ文句を言ってる…これはまた一悶着ありそうだ…

どうか将軍様が感じの好い人でありますように!

乗物とか言うらしい駕籠のとこに行くと、スッっと少しだけ引き戸が開けられた。


「大義であった。誉めて使わす」


将軍がそれだけ言うとまた戸は閉められた。


「はぁ?!なんなん偉そうに!ちゃんと出て来て話しんさいや!」


「これ!将軍様に向かってなんという言いぐさかっ!この小娘が!」


「うるさいうるさいうるさーい!うちらーはまだ良いわ!生きとるけーね!迎えに来てもらわんでも歩いて帰るわ!その代わりにあの人らーを連れて帰ってあげんさいや…待っとる人もおるじゃろ…」


「討ち死にした家来のことか?揃いも揃って情けない!手柄はみな麻敷組ではないか!捨ておけ捨ておけ、そのような屍など!」


パシュ!パシュ!パシュ!


「痛い!いたたた!何をする!この小娘!」


ひめは銃口をおっさんに向けたまま睨み付ける


「おい!おっさん……まだ弾は残っとるがよぅ……」


ひめは心底怒っている…怒りの炎で燃えている…名前も知らない勇者達の為に…


「おい!将軍!お前も同じか?コイツと同じ考えか?ちゃんと出て来て言うてみんさい!」


スゥー


また扉が開いた…今度はいっぱいに!


「家臣の者が大変失礼をした…二人にしたご無礼は余が謝る…すまなかった…」


なんと将軍自ら頭を下げるとは…悪いことは悪い。八代将軍徳川吉宗はなんとも器が大きく魅力的な男だった。


「徳川ではなく、江戸の為に死んでいった者達の骸は、必ず家族の元に帰し、礼を持って丁重に弔うと、この吉宗が約束しよう!これで良いかな?鬼姫様!」


「なんであんたまで!鬼姫って…?」


「今、江戸ではお前の話題で持ちきりだぞ!世の耳にまで届いておるわ。なんでもその小さな体で握り寿司を百貫食べたそうだな。あと鰻はー」


「わかったわかった!もういいわ!」


な、なごんでる!一時はどうなることかと焦ったけど。良かったー将軍様が大人の対応できる人で。


「さあ、姫と家来の者、お前達の乗物も用意してある。疲れただろう。遠慮しないで良いのだぞ」


「ありがとね!遠慮じゃないけどうちは歩いて帰るわ。あの人らーの霊と一緒にね!」


「ならば余も歩こう。皆で歩いて帰ろうぞ」


将軍様が歩いている。馬上の者も慌てて馬から降りた。皆で歩いて帰ろう。戦で亡くなった人達を連れて帰ろう。

オレ達を無理してここまで運んでくれた先生は、今はひめに抱かれて眠そうにしている。ひめは優しく微笑んで、先生の為に子守唄を歌う。


「ねーんねん、ねーこのしっぽをかーにがはーさんだー♪いーたかーろ、いーたかーろ、いーたかーろーなー♪」


先生は気持ち良さそうに眠ってしまった。よくこの子守唄で寝れるもんだなと右京は思った。将軍様もひめにバレないように笑いを噛み殺していた。

ああ…江戸の町だ…皆、出迎えに来てくれてる。永吉郎、省吾之助、頭に武蔵の顔もある。オレとひめに着物をくれた越後屋の主人に、鰻を奢ってくれたい組の親分さん、町の皆も総出で迎えてくれている。嬉しくて涙が出そうになったその時、徳川の家臣達から掛け声が起きた…


「下にーぃ下に、下にーぃ下に」


笑顔で出迎えてくれてた皆は、急に緊張して土下座をする…

こんなんじゃ皆の顔が見えないよ!


「あの…将軍様…コレなんとかなりませんか…?」


「すまないな…昔からこうゆう慣わしなのだ…」


「けっ!そんなもん!こうじゃっ!上にーぃ上に!上にーぃ上に!」


ひめは声を張り上げて叫んだけど、大勢の家臣達の声の方が大きくて…ひめの声はかき消される…ひめの大声に寝ていた先生が目を覚ましてしまった。


「あ…ごめんねしろたん…起こしてしもーたね…」


ボイーーーン!


先生はいきなり大きくなって白虎の姿になった!?まさか寝ぼけたか…?


「お嬢、オレに任せろ!上にーぃ上に!!!!!上にーぃ上に!!!!!」


先生は物凄い大声でそう言った。まるで吠えるように!大勢の家臣達の掛け声も、先生の咆哮にはかなわない!

皆の顔が見えた!立ち上がってこっちを見てる!鬼姫ーって呼んでる人もいるけど、今日はひめも大目にみてくれるだろう!なんだか楽しくなってきた♪


「こうゆうのも善いな!」


将軍様も満更ではないご様子。

永吉郎や麻敷組の皆も行列に加わってパレードは最高潮!皆に手を振る右京は、自分がまるでミッキーマウスにでもなった気がした。ひめのとこに越後屋さんが駆けてきた。


「ごめんねー社長さん…着物破けてしもーた…」


「良いんですよーそんなこと。でもこれはちょっとお直しは無理ですかな…どうですお嬢様!この越後屋が、もう一着ご用意させてもらってもよろしいですかな?」


「えっ!よろしいに決まっとるけど…ほんまに良いん?」


「江戸に住む者の感謝の気持ちでございます。どうぞご遠慮なさらずに!」


「じ、じゃーね…実は欲しい着物があるんじゃけど…」


それから三日三晩、宴は続いた。江戸の町は連日のお祭り騒ぎ。

だけどオレ達はめちゃくちゃ疲れていたせいで、ほとんど布団でゴロゴロしていた。永吉郎の肩の傷は先生が舐めたら一発で治った!ほんとに唾つけたら治るんだ!頭だけはなぜか元気で、ほとんど出たっきりで帰って来ない。水を得た魚とはこうゆうことだろうか?たまに帰って来ると、面白い物を見つけたと言ってオレ達に饅頭をくれた。鬼姫饅頭をひめは食べなかった…

オレ達の体調が良くなって、江戸のお祭り騒ぎが落ち着いた頃、オレ達麻敷組は江戸南町奉行大岡越前守に呼ばれて奉行所を訪れた。死人退治のご褒美がでるらしく、麻敷組の三人は涙を流して喜んでいたけど、永吉郎は早くおりんちゃんのとこに帰りたがっていた。ひめとオレは江戸時代の裁判所がどんなものか、興味津々だ。だけどオレ達が招かれたのは期待していた『お白洲』?という所ではなく、奉行所の中の大岡さん家だった。部屋に通されて少し待つと大岡さんが現れた。


「今日はわざわざ来てもらってすまなったな。此度は大変な活躍で疲れておるだろうに」


頭の佐々木孝次郎は緊張を通り越して陸に揚げられた鯉みたいに口をパクパクさせていた。


「よっこらしょ!あっ!うぐぅ…悪いな…気にしないでくれ…持病の痔だ…私も今日はお白洲ではないのでな。楽にさせてもらうよ」


その言葉にひめは大爆笑!つられて皆も笑ってしまった。場はいっぺんに和やかなものに変わった。


「さて、さっそくだが此度の麻敷組の働きに御上から褒美が出ておる」


皆はごくりと唾を飲み込んだ…


「一つ、麻敷組に詰所として武家屋敷を授ける」


武蔵が喜んだ!


「やったー!あの雨漏りのひどいボロ道場からおさらばできるぞ!」


「一つ、浜田省吾之助を与力に格上げする。尚、浜田殿には内与力として私の元で働いてもらう。宜しく頼むぞ」


省吾之助は大喜びだ!


「やったぞー!これで女房子供に楽させてやれる!」


「一つ、麻敷組頭佐々木孝次郎には茶器を授ける。この茶器は良い物らしいぞ」


「ち!茶器?不作法者のこの俺に…?猫に小判とはこの事でございます…」


「と、麻敷組には以上だが。上様からは、お前達が欲しがる物を聞いて参れと言われておる。なんなりと申してみろ」


「うちは江戸のみんなに良くしてもらったけーねぇ。はー何にもいらんよ」


確かにひめはこっちに来てから確実に太っている…


「オレもひめと一緒です。もう十分です」


「お前達は欲がないなぁ…何もいらんでは私も困るぞ」


その時、永吉郎が遠慮深げに口を開いた。


「ご無礼を承知でお願い申し上げます」


「おお!善い善い!なんなりと申してみろ」


「この江戸より遠く離れた山里に、親に捨てられた子供と家族に見放された老人ばかりの村があります。私もできる限りのことはしてまいりましたが…なかなか思うようにはいかず…しかし子供らは大きくなって力も強くなりました。これからは畑に水を引き、農作物を育ててゆくことで村を興していきたいと思っております。どうかお力をお貸し下さいませんか…これが私の願いでございます 」


「それは気掛かりなことだな…世の乱れも言うなれば…幕府や延いては奉行の私の不徳の致すところだろう…よし!わかった!その村の畑や水路の整備を請け合おう!作柄は…!ちょうどお上が「サツマイモ」なる芋の栽培を推奨しておる。手始めにそれから始めてみるかな」


「ありがとうございます!友人との約束が…やっとこれで守れます…」


「にゃにゃーん!」


嬉しくて泣きそうな永吉郎に先生が飛びつく!良かったねー先生!


道場に帰ってからのひめとオレは、永吉郎が持ってたおりんちゃんの鏡を借りて、地獄の閻魔大王を呼び出した。左京が使ってた勇者の剣の中の鬼の三兄弟にもご褒美をあげなきゃね!閻魔大王はやっぱりひめには弱いらしく、終始おっかなびっくりな様子だったけど、弾のお礼をひめがするとすごく喜んだ。刀は鏡を通してて地獄に送ったんだけど…届いた刀に向けて閻魔大王が説教を始めたもんだから、それに腹を立てたひめが今度は大王に説教を始めてしまった。ひめが言うには、鬼達はもう良い鬼になったんだから叱ってはいけないよと、まあそんなやり取りがあって後、鬼の三兄弟は晴れて刀から出て来られた訳で。赤、青、白の鬼の三兄弟は、何度も何度もひめと閻魔大王にお礼を言った。信じてくれてるひめを決して裏切らない為に、俺達は真面目な鬼になると大王に約束した。



翌日、先生は永吉郎とお役人を背中に乗せて、さっそく例の村に調査に出かけた。まずは農地になる土地の下調べらしい。いつまでも名無しの村じゃナンだから早めに名前を決めなきゃね。

ひめも一人で出かけてしまった。越後屋さんにお願いしてた、新しい着物が仕上がったらしい。

ご褒美として新しい詰所に武家屋敷を用意してもらった麻敷組は、目下のところ引っ越しの準備で大忙しだ。頭はあれこれ指示を出すだけで働きゃしない!省吾之助は内与力という、お奉行様の元で仕事をする職場に変わる為、自分の荷物だけをさっさと纏めて麻敷組を出て行ってしまった。結局、残っているのはオレと武蔵の二人だけ…


「右京殿!何だ?そのへっぴり腰は!武蔵はもう少し荷物を丁寧に扱え!」


クッソー!頭も働けよ!荷物はまだまだいっぱいあるのに!まったく猫の手も借りたいよぉ…


「御免下さい…麻敷組はこちらでよろしいですか…?」


この忙しい時にお客さん?武蔵は困り顔で来客を出迎える。


「え?今日から配属になった?ふんふん…それはそれは!」


なんでも新生麻敷組に加わる同心三人に、その配下に付く岡っ引き?そのまた下の下っ引きとか言う人達が詰めかけてきた。総勢十二名というとこか。


「おー!よく来たな!挨拶は後だ、さっそく手伝え!これで武蔵にも後輩ができたな!しっかり使えよ!」


頭はひめがいないと威張りん坊だ!



とうとうオレ達も江戸を去る日がやって来た。永吉郎が故郷に帰りたがっててたのもあるけど、ひめの持ってきていたシャンプーが切れたのが一番の理由と言えた。ありがたいことに、オレ達の見送りにはたくさんの人々が集まってくれた。江戸の町の皆、新生麻敷組、中にはお侍さんの姿も見えるから徳川の人達も来てくれたのだろう。皆、口々にお礼の言葉を言い、別れを惜しんでくれている。ひめのシャンプーが切れたから帰りますなんて…絶対

言えません…


「ありがとうー!」「また来いよー!」「達者でなー!」


たくさんの声がする。オレ達はその声に答えようと一生懸命に手を振った。位牌を抱えた人もいた。


「姫様のお陰でこの子の亡骸も帰って参りました…姫様はこの子のぶんまで元気でいて下さい!」


「うん!おばちゃんも寂しいじゃろうけど元気で頑張ってね!」


ひめもウルッときている…オレ達を乗せて先生が江戸の町を飛び立つ…


「おにしめちゃまーまたちってねー!」


「うん!また来るよー!あと、うちは鬼姫じゃないよー麻敷……」


先生の背中に乗って飛び去ってゆくひめの声は、最後まであの幼い子供の耳に届いただろうか…



「ふぁぁ。よー寝たわ。今、どこらへん?」


「お目覚めですかーお嬢。あと少しで着きますよ」


そうだ。オレ達は帰って来た。広島県の三次市にある麻敷寺に。

ちょっと前からずっと永吉郎が何かブツブツ言っている。たぶんおりんちゃんへのプロポーズの練習だろう。振り返って見ると顔は真っ青で…大丈夫か?永吉郎…?


「び…白虎殿…麻敷寺に帰る前にちょっと私の家に寄ってはくれませんか」


永吉郎は自宅で顔でも洗ってきたのか?少しはましな顔になっていた。

先生が麻敷寺に着陸した。その様子を見ていたのか、はたまた勘が働いたのかは定かでないが、おりんちゃんが急いで駆けてくる。


「ただいまーおりんちゃん!」「ただいまーおりんちゃん!」


「お帰りなさい!お二人ともご無事でなりよりです!」


永吉郎がおりんちゃんに歩み寄る。


「帰って来たよ…」


おりんちゃんは目に涙をいっぱい溜めて言葉に詰まっている…


「私はおりんに伝えたいことがあります。聞いてもらえますか…?」


おりんちゃんはコクリと頷く。


「私には自信がなかった…おりんを幸せにしてあげる自信が…もしも不幸にしてしまったらどうしようなどと思うと…おりんは私の一番大切な人だから…一番大切にしたい人だから…軽はずみなことは言えなかった…だがそれは間違いでした。もしかしたら自分が死ぬかも知れないという状況に置かれてみて、始めてそれが判るというのも情けない話ではありますが…この想いを伝えたい!伝えないままで死ねるかと!そう思いました」


頑張れー永吉郎!ファイトー永吉郎!


「私は貴女が好きです。どうか私と夫婦になって下さい!」


言ったー永吉郎!………おりんちゃん返事は?


「はいっ!末永くお願い申し上げます!」


「あは…あはは…やった!やったぞー!」


「もうっ!永吉郎ったら♪」


あれれ?今、おりんちゃん永吉郎って呼び捨てにしなかった?


「実はこの日の為に、前に江戸に行った時に買っておいた物があるのだが…おりんにあげたくて…?櫛…櫛を…あれ?あれれ?」


永吉郎は身の回りを探し回るのだが見つからない…

すると先生が永吉郎の元に何かを咥えて歩み寄る


「ああー!白虎殿!落としていましたか…これはかたじけない。これはまったく締まらない形にはなってしまいましたが…」


「あははははー♪」


おりんちゃん大爆笑!ひめとオレもつられて笑ってしまった!もう永吉郎も笑うしかない。きっと二人はこうやって、笑いの耐えない楽しい家庭を築いてゆくだろう。格好なんかつけなくても気持ちは伝わってるよ!


「おりんちゃんおめでとう!これはうちからなんだけど…うちから言うてもうちも貰いもんじゃけー気にせんで貰ってやぁ」


「まあ!これは!美由紀様…ありがとうございます」


「永吉郎が失敗したらしょうがないけーうちが着ようかなって思よったんじゃけど!あっ!これ言わん方が良かったねっ」


ひめはおりんちゃんに花嫁衣装をプレゼントした。越後屋さんにおねだりしてたのはこの着物だったんだねー!ひめはやっぱり優しいな!そして天然だ!いつの日かひめが花嫁衣装を着る時に、隣にいるのははたして…なんて、まだまだ先の話だねっ!



オレ達は現代に帰って来た。ラブラブな二人を見ていられなかし、さすがに気を遣わないとね。二人はたぶん?いや間違いなくオレ達麻敷家のご先祖様だ。その子供も、またその子供も。そうやって命は繋がってゆき、今オレは生きてる。生きてりゃ辛いこと苦しいこともたくさんある。幸せな時はたいして有り難がらないくせに、不幸な時にはまるで世界中の不幸を一人で背負ってるみたいに感じてしまう。人間って基本的にはネガティブにできてるんだろう。オレだって左京のことが羨ましく思える時がある。でも左京にだってオレを羨ましく思う事があるらしいから驚きだ。結局は無い物ねだりなのだろう。そう思うと気分が楽になる。


グゥー


ひめのお腹が鳴っている…この石段を降りたらもうすぐ我が家だ。

江戸で見聞きした土産話は山ほどある。何から話そうかと気持ちは逸るのだけど、間違いなくお喋りなひめの方が、右京の何倍も喋ってしまうことだろう。そんなひめの隣に座りには右京がいて…

幸せは噛み締めるもの。

自分の胸に聞いてみるもの。

右京は今、幸せだ…












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