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ガンズ・アンド・バッドメディスン 〜異世界の傭兵さんはお薬の力で無双する〜  作者: ユッケ
Underground Labyrinth and Sniper

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狩人と戦士

 いつもと一緒だ。

 いつもSUMを使った時と全て同じ、あの何でも出来てしまいそうな全能感と、頭の中で何かが今にも爆発してしまいそうな緊張感が渦巻いている。

 それがどうしようもなく心地いい。

 頭蓋の内側で熱が篭っている。脳の隅まで熱が行き渡って思考が奪われていくようだ。同時に感じるのは怒りと言うべきだろうか。今発揮出来る力の全てを何にでもぶつけてあげたい。

 言うなれば、破壊衝動だ。


 力試しとばかりに振り返りざま、隠れていた岩場目掛けて拳を叩き込んだ。

 全ていつも通りだ。衝撃に伴って岩が粉微塵に吹き飛び床に散乱する。あり得ない力を俺にもたらしてくれる。

 俺は両腕を広げてアンリと相対した。


「こうでなくっちゃいけねぇや。これでこそ俺さ、なあアンリ!」


 全てが快調だ。今なら何だって壊し尽くせる。

 それがアンリだろうと例外ではない。

 アンリはやれやれと小さく首を振った。


「成る程、結局こうなるわけだ。君を殺したいのならどうやら君のベストの状態を殺すしかないらしい」


「降参するなら今のうちだぜ? 始まったならお前でも手加減しない」


 俺の言葉をアンリは鼻で笑い返してくる。


「薬を使った途端随分と強気だな。残念ながら地の利は私にある。そして、君の弱点も良く分かってるつもりだ」


 言い終えるより早く、アンリは弓を射る。

 正確でありながらとても速い。だが、薬を使った俺には最早脅威ではない。

 頭蓋に刺さる手前でキャッチして柄からへし折り床に叩き付ける。


「これ合図ってことでいいのか?」


「その通りだ」


 続けて二本、矢を放ってくる。

 鏃に何か付いている。効果付きの矢だ。

 スタンアロー、もしくは他の俺に有効な一撃を持つものだろう。

 どちらにしても受けるのは利口ではない。

 およそ人間の運動神経では考えられない速度で屈み、矢を躱すと同時に両手を地面に着いてダッシュの構えを取った。


 こっからアンリに一直線、全力で加速すれば彼女でも反応できない速度に達した上でタックルをぶち込める。

 脚に力を込め、飛び出そうとしたその時、俺の背後から衝撃が走った。

 矢が爆ぜたというのはすぐにわかった。問題はその威力が先程のボムアローと比べ物にならないという事だ。

 俺は爆風に煽られて体勢を崩した。すかさずアンリが矢を連射してくる。

 同時に八本、並のスナイパーではまず不可能な芸当、これは不味い。


 四肢の筋肉をフル稼働し迫り来る矢を全て弾き落とす。

 立ち上がり、アンリに見せつけるように足下に転がる矢を踏み砕いてみせた。


「矢の無駄だぜアンリ」


「そう思うかい?」


 直感とでも言うべきかアンリの見せた薄ら笑いから今の一瞬で何か仕掛けてきたのだと確信し、俺は横に跳びこの場を離れる。

 その瞬間、今まで俺のいた場所で爆発が発生、モクモクと毒々しい紫色の煙が湧き上がりだした。


「惜しい」


 心の中で舌打ちを一つ。

 薬効スキルの効果を逆手に取られてしまった。どんな薬にでも反応してしまう以上、たとえそれが毒でも同様に効果を発揮してしまう。


「おかしいな。手加減しないと聞こえたような気がしたが、どうやら気のせいだったらしい」


 そう言ってアンリは挑発的な笑みを浮かべる。

 あー、駄目だ。今すぐにあの顔殴りたい。俺の中に微かに存在するフェミニズムなんてものを今すぐ放棄して拳固めてあの鼻っ柱へし折ってやりたい。


 頭の中で今にも爆発が起きそうだ。毒を使ってこようが俺のやる事に変わりはない。

 殴って蹴って撃って、ぶっ倒す。俺の勝ちで終わりだ。


 アンリが矢筒から矢を抜こうとした直後に俺は地を蹴った。

 要は撃たせなければいいだけの話。スナイパーの弱点、それは接近戦に滅法弱いという点だ。

 完全に間合いを潰した。矢を放つより早く、アンリの持つ弓を蹴りで弾き飛ばす。

 丸腰になったアンリに追撃を加えようとするが先に彼女がバックステップで距離を取る。

 済ました顔で弾かれた手をさすりながらアンリは成る程と短く呟き、


「この状況、スナイパーの私には少し分が悪い。悪いが仕切り直させてもらうよ」


 くるりと背を向け、こちらを小馬鹿にするようにステップを踏むと、アンリは一目散に地下迷宮の奥へと走りだした。


「あぁ成る程」


 アンリに倣って短く呟いてみる。

 これなら距離も取れるし時間も稼げる。俺の薬が切れたらそれこそ終わりだ。

 結局俺には追いかけるという選択肢しかないわけだ。


「鬼ごっこってわけだな!」


 大きく息を吸い込み、爪先に目一杯力を込める。全開でいこう。

 彼方に見えるアンリの背中に狙いを定め、地面を蹴った。

 石の床が砕け散る程の踏み込みにより、俺自身が弾丸にでもなったのかと錯覚するぐらいの勢いでアンリを追跡する。

 アンリもかなりの速度が出てるがそれでも俺の方が僅かに速い。直に追いつく。武器の持たないアンリに接近戦で俺に勝てる道理はない。

 そう踏んでた矢先に予想外の事態に見舞われた。


 突如足下の地面から巨大な爆炎が上がり、俺を呑み込んだのだ。

 今の俺には表皮を焼く程度のものだが一時的に視界が完全に塞がれてしまう。

 爆炎の中を走り抜けると、目先にいたアンリの姿は既になかった。


 考えが甘かった。俺を殺すための準備の時間なら、彼女には十分あった筈だ。

 これはアンリが仕掛けた罠。恐らくは地雷、前日視察に行った時に仕掛けたのだろう。


「地の利ってこういうことかよ」


 そこらへん罠だらけだろう。毒を盛られたら致命傷になりかねない。

 だからどうしたって話だ。アンリをぶっ倒すために進むしかないのならそうするしかあるまい。罠がどうした。それで俺を殺せると思うな。


 再び走り出そうとした時、前方で何かが光った。

 何かと思う間もなく、俺の眉間に大きな衝撃と共に弾丸がのめり込んだ。


「いって! やっぱ狙撃銃も持ってきてたんだな」


 表皮で止まっている弾丸を引っこ抜き、弾丸を確認する。

 7.62mm口径、肉を貫きはしないが当たると少し痛い。

 立て続けに放たれてきた二発目に対し、右足刀を放つ。アンリの真眼とまではいかないがSUMを服用した俺の眼も十分にその粋にある。俺を貫こうとする弾丸の横っ腹を蹴り飛ばし傍らの岩にめり込ます。


「どんどん撃ってこいよ!! そうじゃないと俺は殺せないぜ!」


 発光した位置からして距離は1キロ弱といったところ。全力で走れば数秒で辿り着く距離だ。


「爆弾でも銃でも好きなだけ持ってきなァ!」


 重心を低くして前傾姿勢を取る。下半身に力を籠めると、脚の筋肉が一際大きく膨張する。メキメキと今にも破裂しそうなまでに膨れ上がった脚で俺は地面をおもいっきり蹴った。

 限界まで縮めたバネを一気に解放、足元から発せられる衝撃と共に俺の身体は冗談のような推進力で前方へと飛び出す。

 視界に映る景色が次々に入れ替わる。後方で爆発が入り混じる。地雷を踏んでも爆発するより遥かに速く走ってるから何の問題もない。爆風によって更に加速し、前方にアンリの姿を捉えると俺は大きく跳躍し、


「アンリエッタアアアアアアアアアアァァァァァッ!!!!」


 そのままの勢いで稲妻の如き飛び蹴りをアンリに向けて放った。

 迎撃の狙撃をものともせず、俺自身が一本の槍にでもなったかのように一直線に銃を構える彼女の胸へと突っこむ。

 衝撃の刹那、落雷でも起きたような轟音が響き渡った。銃で防御されたが、俺の渾身の一撃は確実にアンリに突き刺さり、銃を二つにへし折りながらアンリを彼方へと吹き飛ばした。


「手応えありだ!」


 申し分ない一撃だ。

 普通ならこれにて決着、ちゃちゃっとアンリにそれらしい説教垂れて帰路を辿るところなのだが、どうもそう簡単にはいかないらしい。

 遠くに見えるアンリは何事もなかったかのように起き上がり、その顔は確かに笑っていた。


「堅いな! やっぱそう簡単にはいかねぇか」


 遠目で見やると彼女が二振りの短剣を手に取る姿が見えた。


「あぁ、そう来ちゃうのね」


 恐らく二本とも毒入りだろう。掠れば即死、だからどうした。喜んで受けて立とう。遠くからこそこそ撃たれるよりこちらの方が断然いい。

 そして何より、彼女の用意した策を一つ一つ潰していった方が手っ取り早そうだった。

 どちらにしても、俺とアンリの両者が共に駆け出した。


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