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ガンズ・アンド・バッドメディスン 〜異世界の傭兵さんはお薬の力で無双する〜  作者: ユッケ
Underground Labyrinth and Sniper

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スキュラとザグール

 ーーーーーーーー


 ホームこと、薄汚い教会では留守番を任された二人が特にすることもなく、ただ他愛のない言葉を交わして親睦を深めていた。

 片やガスマスクを着けた身長三メートルはくだらない大男、もう片方は灰色の髪をした年端もいかない少女だ。

 ザグールとスキュラ、サイズ的にはあまりに不釣合いであったものの性格の相性は反比例して良好なものだった。

 スキュラは浮遊魔術を使ってザグールの顔の前まで自らの体を持ち上げて屈託のない笑顔を浮かべていた。


「すごーい!ザグールって何でも知ってるんだね!」

「昔から勉強は好きだったんだ。喧嘩とか苦手だったから一層ね」


 最初こそザグールの風体から畏まっていたスキュラだったが、勇気を出してザグールの部屋を訪ねてみたところ、彼は快くスキュラを迎え入れて今に至る。

 冒険者として駆け出しのスキュラに対し先輩に当たるザグールは、自身の体験談を踏まえて冒険者としてどのような事が待っているか。そして、スキュラがどうあるべきか一つ一つ教えていた。


「とは言っても僕が冒険者としてまともな仕事をした事は一度もないんだけどね」

「それはどうして?」


 スキュラの問いにザグールはマスクの下で困ったように笑い、彼は逆に一つスキュラに問い掛ける。


「スキュラは冒険者育成学校を知ってる?」

「ううん、聞いたこともない」

「今も昔も、冒険者って稼業はライバル意識が強くてね。最初はほんの小競り合いだったのに、いつの間にかお互い獲物を横取りしたり武器を向けあったり、どんどんエスカレート、それが冒険者狩りの始まりなんだ」

「ふーん、なんだか大変そうだね」

「そこで作られたのが冒険者育成学校。冒険者として、最低限の力と知識と常識を学ぶ場所で冒険者狩りがあまり起きないように仲間意識を持たせようと偉い人も考えてたんだ」

「それで、上手くいったの?」

「うーん、それはどうだろうね。今も初心者狩りなんてものが流行ってたりするし、まぁ冒険者としては悪くない時代だよ。装備は良いしスキルも珍しいものも増えてきたし、それに冒険者ギルドも盛り上がってる。ブラックリストの僕が言うのも変な話だけどね」

「それでザグール、話が脱線してきたみたいだけど……?」


 これはいけないと言わんばかりにザグールはマスクの上から頭を掻き上げ、話を本筋へと戻す。


「そうだった。僕が冒険者として仕事をしたことがない理由だったね。僕もマルクもうちのリーダーもそうなんだ。同じ冒険者育成学校で学んで、一緒に強くなって、一緒に遊んだ。卒業したら三人でパーティを作ろうって夢見ててね。現にこうして夢は叶ったんだけど、運が悪くてね。僕達みんな学校を卒業するときにとある事件に巻き込まれてさ。三人揃って晴れてブラックリストに登録されちゃった。仕方ないことだったんだけどね」


 凄く楽観的と言うべきか、あまりに楽しそうに言うものだからスキュラは彼の心境が掴めずに困惑していた。


「辛くなかったの?」

「辛かったよ。凄く辛かった。僕の存在が否定されたみたいで、僕の居場所を奪われたようで本当に悲しかった。マルクにも沢山迷惑かけたし、立ち直るのにも凄く時間が掛かった。でもねスキュラ、僕は救われたんだ。君がバッキー君に救われたように僕もこのパーティに救われて今ここにいる。それだけは胸を張って言うことが出来るんだ」


 ガスマスクの所為で表情は一切表に出てこないザグールであるが、そう言う姿は誰から見ても過去の思い出を慈しむ一人の若者の姿に見えた。

 スキュラも感嘆し、暫く黙ってザグールを見つめていた。


「だから今みたいにバッキー君とアンリが喧嘩してるのを見てるとどうにかしたいって気持ちになるけど、僕には何も出来ない。でもアンリはとても良い人だよ。だから帰る頃にはきっと二人仲良く肩を組んで帰ってくるよ」

「……あまり想像つかないかな。それよりもバッキーが心配。お薬も持って行ってないし、それにバッキーは偶に無理するから」


 しおれた顔でスキュラは一つ影を落とした。

 不安なのだ。彼女の救いとなったバッキーにもしも何かあったらと考えると、彼女はいても立ってもいられなくなってしまう。

 そんなスキュラを見てザグールはどうにか彼女を元気づけようと言葉を絞り出す。


「だ、大丈夫だよ。アンリはね、その、ああ見えてとっても強いんだから!ゴブリンなんて目を瞑ってたって倒せるんだから。バッキー君のこともきっと守ってくれるよ」

「アンリさんだから不安なの。あの人はなんだか……怖い感じがする」

「アンリが?確かに見た目はちょっと怖いかもしれないけど彼女はね、とても優しいんだ。どうして彼女がブラックリストに登録されてるのか不思議なくらい思いやりがある人なんだ」


言うことが自分に跳ね返ってきていることはいざ知らず、スキュラも彼がそう言うならと納得しつつあった。


「そうなんだ……わかった。ザグールがそこまで言うならわかった。信じてみる。じゃあ今度はゴブリンのことを教えて。今頃バッキーがたくさん倒してるモンスターのこと知りたいな」


 意図せずか、スキュラがアンリの話を切ったと感じたザグールだったが追求しようとはせず、スキュラのお願いに応えてあげることにした。


「うんいいよ。緑の皮膚の小人型のモンスターのゴブリンはね、今回のバッキー君の目的には最適なモンスターなんだ」

「どうして?」

「それはねゴブリンが自分より強い生物には積極的に手出ししないことからなんだ。だからアンリが側にいるだけでゴブリンは下手にバッキー君を襲おうとはしないだろうね。でももしレベル1の駆出し冒険者達だとそれはもう悲惨な目に遭うかもしれない。なんてったってゴブリンは群れで行動するからね。武器も棍棒に槍に弓矢と様々だから対処が難しいんだ。下手に発砲して群れを刺激したら目も当てられない。ゴブリンは陰湿で執念深いんだ。敵を仕留めると決めたら意地でも追ってくるからね」


 ぺらぺらと何から何まで解説した後、ザグールはスキュラを安心させる一言を思いつき、付け加えて彼女に言った。


「心配しなくてもバッキー君は大丈夫だよ。アンリが側にいる限りはね」

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