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ガンズ・アンド・バッドメディスン ─異世界の傭兵さんはお薬の力で無双する─  作者: ユッケ
Underground Labyrinth and Sniper

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駆け出し冒険者

 ちょうど一時間ぐらい経った後、奥の部屋からジャスパーとスキュラがやってきた。

 無事施術が完了したようで、当のスキュラは機嫌良さそうに笑みを浮かべジャスパーの傍で彼の腕にがっしりとしがみついている。短い間でだいぶ意気投合したようだ。


 こっちも彼女の衣服について候補を出したところだった。


「よっ、スキュラ。冒険者にはなれたか?」


「うん!ジャスパーがしてくれたんだ」


 そう言って後ろを向くと何の恥じらいもなしにスキュラは服を捲りあげ背中を見せつけてくる。

 反射的に手で目を覆ったが、隙間からそっと覗いてみると、背骨の一部に赤く光る小さな瘤のようなものが出来ている。一見すると目立たないがそれは正に冒険者である証といえるものだった。

 そっと服を降ろさせて、スキュラをこっちに向けるとスキュラの目線の高さまで屈んで肩に手を置いた。


「やったじゃねぇかよスキュラ!これで一緒に冒険出来るぞ」


「うん、早くバッキーと一緒に行きたいな」


 出来れば狩猟クエスト以外がいいな。それが俺にとってもスキュラにとっても良いだろう。


「それじゃあ今度はスキュラの冒険者としての服を決めないとな」


「服は何でもいいよ。バッキーが選んでくれたのでいい」


「そう言うだろうと思ってた」


 俺とアシュは目配せしてにっと笑い合うとスキュラの手を引きアシュに引き渡す。

 アシュはスキュラの手を引いて部屋の隅まで歩いていくと二人で選び抜いた装備一式を手にスキュラに詰め寄る。


「さっ、お着替えしましょうねぇ?」


 瞬く間にスキュラの着ていた服を剥ぎ取り、凄まじい手際の良さで冒険者の服を着せていく。

 その様子を俺とジャスパーはこっそりと見ていた。


「むっつりめ」


「黙ってろ変態め」


 そして着替えが終わると、二人顔を見合わし談話していた風を装う。


「おっ、終わったみたいだな」


 そして白々しい素振りでアシュ達の方に顔を向けるのだ。


 服は二人で選んだわけだが殆どアシュ主導だった。

 ウェポンズマンというのは言わばエンジニアのようなものだ。別段防護性は求められてはいない。ウェポンズマン自体の防御が低すぎるからである。モンスターの攻撃は致命傷に繋がりかねない。求められるのは機能性だ。


 そう自分に言い訳しながらスキュラの新しい姿を見やる。

 その姿は言うなれば魔女のようだ。深い紅色のローブに身を包み、下には漆黒のドレスコートを着ている。ブーツも新調して、とても冒険者らしくなっている。


「何故女は脚を出したがる?いつもそうだ」


「俺に聞くな。ってかハイソックス履かせてるだけマシだろ」


 隣でジャスパーがボヤいてたが適当にあしらってスキュラの元に歩み寄る。

 新しい衣服に落ち着かない様子でそわそわと身体を揺らしていた。


「どうしたスキュラ?何か気に入らなかったか?」


「いや、何だかその、少し……すーすーする」


「スカートなんか久しぶりだろうからな。すぐ慣れるさ。とても似合ってるよ」


「そう?なら……いい」


 ぎゅっとスカートの裾を押さえながらもスキュラは満更でもなさそうに小さく頷いた。


「やー、私達が選んだんですからまず間違いないですよ」


 気に入ってもらえたところで今度はアシュが歩み寄ってきて装備の性能について語り出した。


「ローブはフォレストワイバーンの皮を加工して造られたものです。耐久性も抜群ですし魔力を流すことでフォレストワイバーンの特性である擬態をそのまま使う事が出来ます。お洋服の方は特にありません。あぁでもとても丈夫です。私とバッキーさんの趣味です」


 一頻り説明を終えてアシュは「さて」と一息着いてから本題に入った。


「後は肝心の武器ですが、これに限っては本人が選ぶしかないですねぇ」


 先刻、俺とスキュラで銃がいいかナイフがいいかで小競り合いになったが結局そこは本人の意志に任せることにした。

 ただ、当のスキュラは小さく首を横に振るとジャスパーに駆け寄った。


「実はもう決まってるんだ。ね?ジャスパー」


 この短い間で何があったのか不思議なぐらいスキュラはジャスパーと仲良くなっていた。

 スキュラに促され、ジャスパーは懐から一本の木製の小さな杖を取り出し、スキュラに手渡す。

 本格的に魔術師みたいになってきた。

 一応それが何なのか尋ねると代わりにジャスパーが説明してくれる。


「魔界の樹木から作り出した杖だ。魔力を持った奴の為に作った補助具だがそんな客今までいなかったからな。魔力の放出を容易にしてくれる実に便利な代物さ。新人冒険者へのほんのささやかなプレゼントさ」


 要するに魔法使いの杖ということで間違いないらしい。半分ウィッチの血を引くスキュラには打ってつけの武器というわけだ。

 一通り用件は済んだわけだが、あとは料金の精算だけだ。俺はスキュラに気付かれないようにそっとジャスパーに話しかけた。


「支払いだけどさ」


「あぁそうだった。こっそりしないとなぁ。へへへ、あの子が遠慮しちまう」


 ポケットからメモ紙を取りだしジャスパーはスキュラを見ながらすらすらと料金を書き取り、俺に渡す。

 流石に凄まじい値段だった。手術代、装備代だけで百万超えるとは思ってなかったが兎に角スキュラには内緒にした方がいいだろう。

 そんなことより今は彼女に冒険者になれた喜びに浸ってもらいたかった。


「復元魔法を使った分はなしでいい。アレはこっちの不手際だからな」


 そのこともしっかりと把握されていた。流石に俺の服を見られればばれるか。


「それと、もう一人の駆け出し冒険者に俺から些細な贈り物だ」


「マジか」


 流石にそれは予想外だった。

 この男のことはあまり信用していない。腕は良いようだが撃たれたことや漂う雰囲気から良い印象はない。

 そんな男から俺に贈り物とは思ってもいなかった。


「出会いは最悪だ。だがまだ修復可能な段階ではある。そこで友情の証にこれをお前にあげよう」


 そう言って差し出してきたのは一本の煙草だった。思わず眉を顰めて俺は尋ねる。


「これは?」


「ジョイントだ」


「中身は?」


「俺特製のものさ。一服すれば天国まで吹っ飛ぶ。効果は吸ってから確かめな。俺からのほんの謝罪と友情の証さ」


「ジョイントで友情を結合(ジョイント)?」


「そのとおり」


 馬鹿らしいと思う一方で悪くないと思う気もした。

 笑みを深めて俺はジョイントを受け取りジャスパーの手を取った。


「サンキュージャスパー。大事に使わせてもらうぜ」


「俺達の友情に」


「これからもよろしく頼むよ」


 問題の多い男だがそこまで悪い奴ではなさそうだった。

 さて、用件も済んだ。後は帰るだけだが、俺にはもう一件、寄らなければいけないところがあった。

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