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ガンズ・アンド・バッドメディスン 〜異世界の傭兵さんはお薬の力で無双する〜  作者: ユッケ
The Unchain

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ラスボス

 殴り殺す。絞め殺す。撃ち殺す。

 何でもいい。過程より結果を重視すべきだ。目の前の男を殺す。それだけでいい。

 この男がラスボスだ。こいつさえ突破すれば俺の戦いは終わったも同然のことだ。

 俺の構えは言うなれば適当そのものだ。自分の構えやすいように構えてる。だからこそどんな攻撃にも対応出来る自信がある。


 敵は一人、廊下という地形上前からしか仕掛けてこれない。

 何はともあれアポロが動いた。最短距離、廊下を一直線に走り抜け片手にナイフを取り突っ込んでくる。

 速い。だが対応できない速さではない。ギリギリまで引き付け叩く。

 アポロが射程圏に入ると同時に右フックを打ち出した。

 俺の拳はアポロの頬を抉り抜き、アルミ缶のように潰した。筈だった。

 確実に捉えたと思った瞬間、目の前のアポロが煙のように姿を消したのだ。

 脳が認識するより早く肌が背後の殺気に気が付き身体を前方に投げ出す。

 僅かな差でナイフが音もなく振り下ろされた。ゲームの世界にもあるスキルだ。どんな耐久をしていようと一撃の下、相手に致命傷を与える必殺技。


「バックスタブ……!お前スパイか!?」


 二つ、解せない点がある。一つはスパイがここまで高い身体能力を有していること。二つはどうして一人だけここまでレベルが段違いの男がこの屋敷にいるのかだ。

 さっきの加速もまだ余裕があるように見える。

 死にかけた。薬を使った状態で初めて危機を感じた。

 悠長にはやってられない。短期でケリをつけるべきだ。

 左手の人差し指を歯に当てる。指の骨先が砕ける。正確には内蔵したSUMが割れ、体内に薬を追加される。


 薬は瞬く間に全身に駆け巡り冷めかけの頭に新たな起爆剤が投下された。

 一瞬だけ瞳孔が閉じて、次の瞬間、視界が拡張する。未だ踏み込んでいない領域に達したと実感する。

 既にアポロは動いていた。速い。いや、速かった。

 三秒前の自分なら反応できず首を斬られたかもしれない。

 後出しの拳で差し出された手ごとナイフを払う。驚きに顔を染めるアポロの顔がはっきりと見えた。

 左のジャブを一発、アポロの胸に打ち込む。音速を超えた拳がめり込み、胸板を陥没させるとアポロは喀血したたらを踏んだ。

 短く跳躍し、足を振り上げる。その所作すらアポロには見えていなかっただろう。

 振り上げられた脚が絶望的な速度を以てアポロの頭に振り下ろされた。

 仕留めたと確信したその矢先、霞のようにアポロの姿が振れ、振り下ろした踵はアポロをすり抜けた。


「そんなのありかよ!?」


 目でアポロを追うと、どうやら彼も本気を出したらしい。

 手首、肘、踵、爪先からナイフを飛び出させ、完全に武装した状態で飛び掛かってきていた。

 熱い感覚が脳に走る。どういうわけか彼のナイフは硬質化した俺の肌を切り裂き、真っ赤な鮮血を流させた。舞うようにアポロは四肢の刃物を巧みに振り回し、防御する俺の腕を切り裂いていく。

 だが痛みに対する耐性をこの二日で養った俺にとってこれぐらい軽いものだった。切り裂けるのなら大歓迎だ。切り裂かせてやればいい。

 アポロの手首のナイフが俺の手の平を刺し貫いたとき、ナイフ毎アポロの手を掴む。


「つーかーまーえーた!」


 間髪入れずに全力で頭突きを叩き込む。顔面を凹ませ鼻をへし折ってやった。

 それでもアポロの目には闘争の炎が映っていた。爪先のナイフを閃かせ前蹴りを放ってくる。

 その根性には拍手を送りたいが終わりだ。返しの蹴りがアポロの爪先のナイフをへし折り、両手に刺さったナイフを引き抜くと同時に身を捻って遠心力と脚力を掛け合わせた回し蹴りの一撃を叩き込む。

 会心の一撃だった。威力、感触申し分なし。アポロの横っ腹を打ち抜き、アポロは弾丸のように吹き飛び、屋敷の壁を三枚突き抜けたところで外へと放り出された。

 生きてはいまい。もし生きてたとしてすぐに復帰するのは不可能な筈だ。

 決着だ。正直かなり手強い相手だったがどうにか片付けた。残るはクライスだけだ。ここまで来たら後は楽勝だ。傷は深くない。切傷も既に血が固まってきている。


 薬の効果もまだ効いている。いざとなれば三本目を打てばいい。そうしたとして俺の身体がどうなるかはわからないが。

 戦闘の合間に度々鼻血が流れてきていた。頭痛もするし時折ないものが見えたりもしている。やっぱりただの強くなれる都合のいいお薬というわけではないらしい。

 片方の鼻の穴を塞いで息を噴き出す。すると、どろっとした濃い血が屋敷の床にぶちまけられた。


「あー……すっきりした」


 頭の中に溜まった不純物を吐き出したような爽快感だ。鼻を啜り、目先の階段を視野に入れる。

 保安部の連中が来る前にクライスを殺し、スキュラを連れて此処を後にする。それが俺の目的だ。

 そこで思い出した。クライスの逃げ込んだ四階はスキュラの待機している部屋があるということを。


「まずいか?いや、俺と彼女の関係は知られていない。そうさ、ばれる前に始末をつければいいだけさ」


 一人脳内の意見を纏め、かくかくと首肯し歩き出す。


「殺す。助ける。逃げる。これで解決だぜ!」

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