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ガンズ・アンド・バッドメディスン 〜異世界の傭兵さんはお薬の力で無双する〜  作者: ユッケ
The Unchain

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これは戦争ではない。これは殲滅である。

 屋敷より二軒ほど離れた貸家の屋上で一人の少女は不満そうに瞳に剣呑さを持たせてその様子を観察していた。

 通信機も必要としない。目隠しを外した彼女は口の動きで大抵の会話は読み取ることが出来る。

 真紅の毛髪と真紅の瞳の併せ物はスナイパーとしては嫌でも目立つものだろう。

 少女は心の底から嘆息し通信機に声を入れる。


『アンリエッタよりドクターへ。説明を求めます』


 二つ下の階にいるドクターの判断はアンリにとって非効率極まりないものだった。

 本来なら今から起こるのはほんの些細な誘拐だった。

 アンリはただ念の為の補助程度の役割として呼ばれたものだった。想定外の事態に備えての保険のようなものだ。それなのにこの始末だ。苦言を漏らすのも仕方ないものだろう。


『あぁ、悪い。シナリオを練り直す』

『大量虐殺にですか?』

『悪く言えばそう言うな。良く言えば湿っぽい救出劇をド派手な革命劇に変えることが出来るんだぜ?』

『出さなくていい死人を積み上げるつもりですか?』

『もっと前向きにいこうぜアンリ。奴隷からしたら俺達は救世主だ。利己主義も悪かねぇが偶には慈善活動もしようや』

『それは偽善です』

『結構結構いいじゃないか偽善。それに、もう止められやしないさ』


 結局ドクターは自分の薬品の実験が出来るのならどのように転んでも構わないのだろう。

 アンリはそう思って無理矢理納得し通信を切った。


「切り替えよう。切り替えなきゃ」


 自分にそう言い聞かせてアンリは傍らの風呂敷に包んだ銃を取る。

 同刻、銃声が一発だけ聞こえ、続けて三発銃が発砲された。

 アンリの真眼スキルによって何が起こったのか。彼女にはわかっていた。

 始まったのだ。戦闘が。











 焼却炉の離れの方だ。何か独特な香りがする。決して良くはないが癖になりそうな香りだった。

 屋敷の側面に位置する畑の中央付近にちょうど誰にも目につかない窪みがある。畑仕事をしているとき偶然目についたが深く考えることはなかった。

 今になってわかった。これが屋敷の職員のたまり場になっていたのだと。

 窪みを覗き込むと冒険者らしき格好をした男が複数いた。目で数えて四人、全員が指に煙草を挟んで他愛のない話を繰り広げていた。


「やぁやぁ皆の衆。こんな所でこそこそと葉っぱかい?」


 弾かれたように男達の視線が俺に集まる。緊張した顔をしていたが俺の身なりを見て奴隷と判断すると胸を撫で下ろし、同時に強気な態度で食って掛かってきた。


「脅かしやがって、てめぇ奴隷か?」

「夜間の外出が禁止って聞いてねぇのかよ?」

「殺されてぇのか?あぁん?」


 絵に描いたような悪漢だこと。本当に殺してきそうな剣幕に気押され後退りながら、男の手にある煙草に視線を落とした。


「いいっすねぇ煙草。随分ご無沙汰で口の方が寂しくて。良ければ一本恵んでもらえないですかね?」


 一瞬男達は呆気に取られたが、すぐに俺の言葉がどれだけ馬鹿らしいことか理解し嘲笑を浮かべた。


「おもしれえこと言うじゃねぇか奴隷の分際で」


 一人の男が俺と距離を詰め、腰に提げたホルスターから銃を抜き俺の眉間に照準し撃鉄を起こす。


「三秒以内に失せろ。眉間に穴が空けられたくねぇならな」


 どこか見覚えのある回転式拳銃に思わず眉を顰めた。

 少し古臭い、それこそ西部劇のガンマンが持ってそうな拳銃だ。WSにもあった。名前がたしか…………そうだ。


「これってピースメーカー?こっちの世界にもあるんだな」

「一つ」

「いいね。無骨なデザインがクールだ。良ければいいか?」

「二つ」

「この銃俺にくれよ」

「三つ!」


 男は迷わず引き金を引いた。

 引こうとした。

 男の指は空を切り、何故か銃の照準は男の眉間に向けられていた。

 何故かって?俺が一呼吸の間に奪い取ったからだよ。

 銃に触れ、掠めとる間までの所作を男達の誰もが見抜けなかっただろう。


「な……何で?」


 間抜けな問いには銃弾で返してやった。硝煙の酢酸臭。皮膚を焼く弾丸。頭蓋を貫く弾丸。倒れる男。

 天秤が傾いた瞬間だ。この時を俺は待っていたんだ。


「サプラーイズ! マザファッカー!」


 最高潮という他ないひと時だ。状況の理解が出来てない男達の真に呆気に取られた顔に愉悦すら感じた。


「どうしたよ。違反切符三枚は処刑だろ?その腰に提げた銃は飾りか?」


 俺の言葉で男達は我に帰ったが時既に遅し。

 銃を抜くよりも早く三発、男達の胸を弾丸が貫いた。


「あぁ!!ああぁああ!!畜生がァ!」

「いてェ!!クソッタレがぁ!!!」

「よくも撃ちやがったなてめぇ!!」


 聞くに耐えない悲鳴を撒き散らしながら男達は地面で転げまわる。

 流石元冒険者というだけあって丈夫に出来てる。

 とりあえず着替えだ。ダサい貫頭衣にはうんざりしていた。

 三人は胸を撃ってしまったから血塗れだ。それにまだ泣きわめいてる。

 眉間を撃った男の服が良い。サイズもちょうど良さそうだし、ウエスタンチックで俺の趣味に合う。


「てめぇただで済むと思うなよォ!!!引き摺り回して細切れにしてやるからなァ!!」

「煩い」


 撃鉄を起こし五発目を発砲する。一人が息絶えると他の男も静かになってくれた。

 死体の衣服を剥ぎ取り袖を通すと驚く程にぴったりだ。

 予備の弾丸を取り出し、排莢と装填を済ます。発砲してしまったことだし屋敷の人間も飛び起きてるころだろう。


 さて、ここまで勢いで来たがこれからどうするか。とりあえず地べたに転がる男二人を死体にすることにした。


「おいやめろ。やめてくれ!」

「やだやめない」


 二発立て続けに発砲。物言わぬ死体になった男達の銃を拝借している頃に屋敷に明かりが灯った。

 改めて見ると立派な屋敷だ。故に少々勿体無いと思う。

 今からこの屋敷を赤く染め上げるのだから。

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