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ガンズ・アンド・バッドメディスン 〜異世界の傭兵さんはお薬の力で無双する〜  作者: ユッケ
The Unchain

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準備完了

 アシュとの軽い運動をした後にドクターの部屋に行くとドクターもすっかり回復して俺に奴隷の紋章を刻みつける準備を完了させていた。

 何か薬剤のようなものを注射した後で焼き鏝のようなものを押し付けられて数時間経つと俺の鎖骨付近に奴隷の紋章が浮き上がっていた。

 これなら嫌いな人間もあっという間に純朴な奴隷に変えることが出来るのでは?と思ったがどうにも対象に抵抗の意志があると上手く紋章が浮かばないらしい。ともかく悪用されるようなことはないらしい。そもそも奴隷の存在自体がよろしくないものだろうが。


 部屋に戻ると先に施術を終えて部屋に待機していたスキュラがその瞳を爛々とさせて俺を見ていた。正確には俺の奴隷の紋章をだ。


「ご主人様、お揃いの印です!」


「そんなに嬉しいかよこれ?」


 正直な感想としては気味が悪い。居心地の悪い感覚が身を覆っているようだ。紋章を刻んだ跡は火傷の跡のようにヒリヒリするしこれから標的に買われていき、奴隷となると思うといい気分ではない。

 だが目の前の少女に喜々とした目で見られては複雑というかそこまで悪くないのではという錯覚を覚える。


「一緒に奴隷になるんですよね?ご主人様が!」


「あぁそうだよ。だからご主人様はなしだ。名前で呼べ。ベイブなんて糞ダサい名前じゃないからな」


「わかりましたご主……バッキー様」


「様もいらない。俺とスキュラは今から対等だ。だからバッキーでいいし敬語も使う必要はないんだ」


「わかりました。じゃなくて……わかったよバッキー」


 やはり対等な関係には慣れてないのだろう。慣らしておかないといざという時に怪しまれる恐れがある。スキュラの身にも危険が及ぶのだけは避けたかった。

 先程ドクターが奴隷商に変装して残った奴隷に紋章を刻みに出かけていた。そうなると依頼の決行は早くて明日か。俺もそろそろ覚悟決めないといけない。


「なぁスキュラ。奴隷ってどんなもんなんだ?」


 少しデリカシーに欠けると思ったがつい最近まで奴隷だった彼女に聞いた方が正確だろうし、彼女の出で立ちも多少分かるかもしれない。


「そうですねぇ……じゃなかった。そうだね、私も飼い主を転々としてるからはっきりとは言えないけど、一つ言えるなら最悪だね」


 緊張に唾を飲み込み、スキュラの話を食い入るように聞く。


「そういう趣味の男ではなかったのが救いだったけど何度も鞭で叩かれたの。痕が残らなかったのは良かったけど。ご飯も犬の餌みたいなもので、だからといって吐くとまた()たれるから我慢するんだけど、飼い主が不景気になるともっと酷くてさ。八つ当たりはされるわご飯は抜かれるわで良い所なんて……」


 そこまで言ってスキュラは黙り、俯いてしまった。過去の辛い記憶が蘇ったのかもしれない。彼女の辛さなんて、俺のような今まで恵まれて生きてきた人間に推し量れるわけもない。

 でもこれだけは伝えておきたかった。俯くスキュラの頭に手を置き薄い笑みを浮かべた。


「大丈夫。これが終わればお前は自由だ。誰にも縛られないで生きられるんだ。だからそんな顔すんな」


 自分には似合わない言葉だなと思いながら照れ隠しにわしゃわしゃとスキュラの頭をなでると彼女はムッと頬を膨らませ俺の手をのかした。


「子供扱いしないでください!じゃなくて……しないで!歳だってもうすぐ二桁なんだから」


「なんだ。まだ十歳にもなってなかったのか?全然ガキじゃないかよ」


「だ、か、ら!」


「子供扱いしないでください?」


「そう。バッキーよりも全然ちゃんとしてるんだから」


「風呂でのぼせて助けられるような子が?」


「それはそれ!」


 初めて会った時はその薄幸そうな顔つきと態度からもっと大人びた子だと思っていたが、意外と子供っぽいところあるんだな。

 とにかくスキュラが元気になってくれて良かった。

 一安心で俺は自分の部屋でくつろいでいると俺に休息の時を与えまいとばかりに部屋の戸がノックされた。


「やー、ペアルックですか?とてもお似合いじゃないですか」


 皮肉を飛ばしながら俺の部屋に来たアシュはどこかにいそうな秘書のように丸眼鏡をしてスーツで決めて、髪も頭の後ろでまとめており、どこかにいそうな秘書のようだ。

 俺は少しうんざりした息を吐いてアシュに応対した。


「どうしたアシュ?コスプレのお披露目か?」


「つれないですねぇ?せっかく貴方達を売る交渉を済ませて来たというのに」


「驚いた。随分早いんだな」


 驚いたのは本当のことだ。さっきまでアシュと組み手をしていたというのにもう交渉の段階まで終わらせてきたのは正直早すぎると思ったからだ。


「やー、私も想定外でしたよ。少し売り込みに行ったらそれはもう大喜びで。曰く『此処らの奴隷商は僕に売るのを頑なに拒むから助かるよ』って言ってカタログの奴隷全員買い占めちゃいましたよ。流石世界で四番目に金を持ってるってだけはありますね」


「じゃあ俺達も?」


「えぇ、明日出荷ですね」


 心の準備をある程度済ませといてよかったと心から思う。そうでなければ今になって大いに焦っていただろう。


「それで、まだドクターから詳しい説明は?」


「やー、彼今超が付く程急いで奴隷に紋章打ってるんで私の方から説明しますよ」


 部屋に入ってどっかりと椅子に座ったアシュは俺の部屋をぐるりと見渡す。アンリに穴だらけにされて修理もまだだが人が住むには十分の部屋ではある。


「まぁ盗聴なんてないでしょうし。ささっと要点だけを言ってしまいましょう。よぉく聞いててくださいね」


 俺もスキュラも、アシュの説明をしっかりと頭に叩き込む。万が一の失敗も許されない。

 大まかな説明を受け、アシュが去った後も俺は依頼の手順をよく吟味し、頭に刻み込んだ。


 そして翌日、俺とスキュラは奴隷として売り出されることとなった。

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