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ガンズ・アンド・バッドメディスン 〜異世界の傭兵さんはお薬の力で無双する〜  作者: ユッケ
Attack of The Masquerade

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ミーティング

「なんで止めたんだよぉ。 あんな奴ぶん殴って終わらせちまえば良かったじゃんかよ」

「よしまずは話の整理からだ。今回の依頼が『マスカレード』の幹部を皆殺しにすること、それも3日以内にな」

「無視すんなコラッ!」


 起きてからペニーはこんな調子で不貞腐れていた。一時はソリドを追いかけてでも仕留めに行きそうな喧騒であったがすぐさまザグールが抑えて、事は丸く収まった。

 そんなペニーを気にも溜めずドクターは淡々と話を続ける。


「標的の面倒さもだが、今回は3日と制限付きだ。正直骨が折れる仕事になる」


 わざとらしく顔をしかめるドクターは、次に標的の特徴について話し出した。

 ちょうど俺が聞きたかった内容だ。


「先に話しておくがマスカレードってのは俺達が生まれる前から存在している。言わば俺らの大先輩だ。『居場所が無い者の居場所』と銘打ってワケ在りの連中を引き入れて今や世界を代表する犯罪集団だ。勢力は勿論のこと幹部クラスの連中の実力は未知数、もしかしたら俺達よりも強え奴がいるかもしれない」


 そう言ってドクターはテーブルの上に、数枚の紙を並べる。

 挙ってその紙を覗き込みようにして見ると、そこには四つの仮面(マスク)が手書きで描かれていた。


「マスカレードの幹部は入れ替わりが激しい。やってることが過激すぎるからな。最近だと東の国の内乱で目撃談が上がってた。鉢会う度に顔ぶれが変わるが、ここ数年変わらない面子がこいつらだ」


 ドクターが最初に指差した紙には、黒一色の球体のような仮面があった。


「さっきの話に出てただろ? こいつがフェイスレスだ。マスカレードの創設者にしてリーダー。いつから生きてるか知らねえが、まず正体が分からねえ。現れては消え、現れては消えを繰り返している。正体はモンスターだの亡霊だの遠くで誰かが操作している人形だの、或いはそもそも存在しない人間の逸話が独り歩きしたものだの数えたらキリがないが、どれも確証はない噂話だ。確認出来ているのはクラスがメインサブ共にスパイだということだけだ。お前には少し荷が重いかアシュリー?」


 と、同じスパイのアシュリーをからかうように話を振ると、彼女は困ったように首を振って言葉を返した。


「やー、それはどうでしょうねぇ。偉大な先輩を殺る為なら私何でもしちゃいますからねぇ」


 飄々とした態度を取っているがいつものアシュリーだ。裏付けはないが彼女なら問題ないように思えた。

 次に、ドクターは二枚の紙に描かれた二つの仮面を指差す。豚を模した赤褐色のガスマスクと、黒緑色のフェイススカーフとドミノマスクを重ねて仮面にしたようなものの二つだ。


「こいつらが主力の二人だ。豚の方がファットマン、もう片方がマンティスって呼ばれてる。声や体格から正体についてはおおよその見当はついているが未だに顔を見た奴はいない。マスカレードが絡んでる案件には大抵こいつらのどちらかは姿を見せている。ファットマンは典型的な鈍足高火力型クラッシャー、マンティスは刀を扱う敏捷型アサルターだ。二人共ハーフモンスターって噂だが人間ともう片方が何かは謎だ。何にしろ戦闘能力は折り紙付きだ。はっきり言って一対一では仕留めきれない可能性が高い。獲りにいくなら二人以上で確実に仕留めるようにしてくれ」


 俺が薬をフルに使っても手に余る相手というわけか。

 ドクターの指示なら、それに従うまでだ。


 最後にドクターが指した紙には、ペンでぐしゃぐしゃに書き殴った毛達磨みたいなものが書いてあった。


「そして、こいつがスケアクロウだ。マスカレードの幹部ってのはその個人に固有の名前と仮面が与えられるもんだが、このスケアクロウだけは別だ。今のスケアクロウが死ねば、適当な奴が新しいスケアクロウになる。言わば消耗品だ。マスカレードにおける役割も食糧や日用品の買出しと見張り番ぐらいで戦闘力は皆無と言っていい。なんなら薬のないバッキーよりも弱いだろうな」

「今日一番のグッドニュースだよそれは」


 どこのヤバそうなパーティにも一人は俺みたいな低レベルの奴がいるのだと勝手にシンパシーを感じた。

 それはそれとして、問題はこの四人と他にいる正体不明な三人の幹部を3日で殺さなくてはならないという事だ。

 思うだけではいられず、俺は感じていた疑問をドクターに投げかけた。


「こんな奴らを3日で本当に殺せるのか? 正直な話、かなり厳しそうに思えるぜ?」


 ドクターもそれは分かっている様子で、すぐに答えが返ってきた。


「あぁ、かなり厳しい。だがバッキー、お前がいなかった頃にも同じような面倒な依頼はこなしてきた。大体はソリドからのものだったがな」

「断ったことはないのか?」

「ないな。俺等が自由に活動していられるのもソリドが後ろ盾になってくれてるところが大きい。そうでなきゃ今こうしてこんなところで堂々と商売なんざ出来やしない」

「お互いに利用し合う関係ってことか?」

「そういうことだよ。だから、あいつを正面から殴り飛ばすのは駄目ってことだ。わかったら俺に話の続きをさせてくれ」


 俺は口を噤んで小さく頷くとドクターも「よろしい」と言わんばかりに相槌を打って話に戻った。


「残りの三人の幹部は詳細が掴めていない。そいつ等に関してはこれからどうにかするしかないが、いかんせん時間が足りねえ。最悪の場合にも備えておく」


 やはり期間の短さがネックだ。

 そもそも何故納期3日などという短期間なのか。確かソリドは時間がないとか言っていたが、相当無茶な依頼をしてきているというのは明確なことだ。


「だが、追い込まれてるのはソリド達も一緒だ」


 俺の考えを見透かすようなドクターの一声。


「あいつがやたら口の悪いときは決まっていつも追い詰められてるときだ。あいつの話を聞く限りだとこのスワルダだけグリモワールの更新が終わってないんだとか。そして、あいつの時間がないって言葉から察するに、納期が迫ってるか、とっくに過ぎているのかどっちがだろうな。どちらにしてもソリドは早急にグリモワールの更新をしたいだろうさ」


 それで俺達に依頼を、ってわけか。

 厳しいが仮にも客からの依頼だ。やるしかないだろう。


 依頼の確認に区切りがついたところで今度は今後について話が始まった。

 パンッと乾いた手拍子が一つ鳴り、一同の注目が集まる。そして、手を鳴らしたペニーが話を切り出した。


「よぉし、それじゃあ役割振り分けるぞー。マルクにやらせると自分が楽しようとするからこっからは私が仕切るからな」


 そう言ってペニーは場を取り仕切ると、陽気な調子で続けた。


「3日しかないんだ。ぱぱっとやっちゃってくれよ。まずはアシュリー、お前さんはグリモワールの頁とやらの在処を探しといてくれ。奴さんの狙いがそれならその場所に現れる可能性が高いからな」

「やー、スパイの腕の見せ所ってやつですねぇ。期待に添えるよう頑張らせてもらいますよ」


 へらへらと二つ返事でアシュリーは了解し、続けてペニーは今まで沈黙を貫いているアンリの方に顔を向ける。


「次にアンリ、それとマルク! お前達二人はマスカレードの捜索だ。アンリは街中を、マルクは隣の国まで範囲を広げて連中を洗い出してちょうだい」

「こういう時の為に私の真眼がある。役立ててみせるよ」


 アンリが承諾する一方でドクターはちょっと待てと言わんばかりに首を傾げていた。


「一つ確認していいか? 俺の本職って医者ってことは全員分かってるよな?」

「マルク、お前は医者は医者でも何でも出来る医者だ。これぐらいの事お安い御用ってやつだろ?」


 苦虫を噛み潰したような顔でドクターは渋々と承諾した。


「そんでもって、私は頼れる情報筋を当たってみるとしよう。それと残りのザグールとバッキー」

「おーう」


 さあ、お待ちかね俺の番だ。他と比べて出来る事は少ないがパーティ全体での仕事だ。ベストを尽くそう。


「とりあえず、二人は留守番しといて。スキュラお嬢ちゃんの面倒見といてよ」

「おーう?」


 随分とのんびりとした指示が来て思わず力が抜けてしまった。


「んー、何か不満か?」

「いや、不満ってわけじゃないけど、期限も限られてるってのに留守番ってのは逆にしんどいんだよ。つまり、何かやらせてくれって事だよ」

「なら、私の聞き込みについてくるかい?」

「それでいい! それでいこう!」


 食い気味な俺にペニーは大袈裟に肩を竦める。


「スキュラ嬢ちゃんの世話も大事だぞ? あれぐらいの歳の時に人間ってのは形成されてくんだから。まっ、それもザグールがいればいいか」


 ちらりと横目でザグールを見ると彼は返事の代わりに親指を立てて快諾していた。


「よぉし、じゃあ各自行動に移れ。連絡は冒険者端末を通して、何かあれば逐一報告するよう頼んだよ」


 時間は正午前ってとこか、行動を起こす時間としては全然遅くない。

 真っ先にアシュリーが部屋を飛び出していき、アンリとドクターは二人で打合せに入っていた。


「私らもサクッと済ましちまおうかねぇ?」


 ぽんとペニーから肩を叩かれ、部屋を出るよう促されると、それに従うように扉に足を向ける。


「行き先は?」

「ちょっと離れたところにあるバーに行く。なぁに行って話を聞くだけさ。時間はかからないよ」


 ペニーと共に部屋を出た後は手短に準備を済ませ、外へ出た。

 少し待ってるとペニーが得物の大剣を担いでやってきた。


「それいる?」

「もちろんっ!」


 こうして、依頼一日目がスタートした。

 久し振りの依頼な所為か、少し浮き足立った状態で俺はホームを後にした。

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